Pizza 4P’sに学ぶ海外事業づくり。商品を輸出する以外にも、メーカーの出番はある

海外展開というと、日本でつくった商品を輸出し、現地のスーパーやECで売る形を思い浮かべるかもしれません。しかし、食品メーカーが海外で事業をつくる道は、それだけではありません。
考える手がかりになるのが、ベトナムを拠点とするPizza 4P’sです。同社の2024年サステナビリティ報告書には、レストラン事業に加え、ラムドン省での自社チーズ工場と、ベトナム国内の他の飲食店、ホテル、スーパーへのチーズ・冷凍商品の供給が記されています。4P’s Corporation 2024年報告書
レストラン、製造、外部への供給がつながるこの構造からは、「食べてもらう場面を起点に、必要な商品や供給をつくる」という事業の考え方が見えてきます。日本のメーカーも、完成品の輸出以外に、原料、共同開発、体験の提供を通じて関われる可能性があります。
レストランの価値と、製造の力がつながっている

報告書によると、ラムドン省の工場はベトナムとカンボジアの同社レストランで使うチーズの大部分を製造しています。また、他国の店舗内のチーズ製造にも触れています。ここでは、公開された2024年の事業構造を扱います。2026年の最新の工場数や生産量を示すものではありません。同報告書・事業紹介
メーカーの視点で注目したいのは、素材の特徴が、食べる体験の中で伝わる関係です。チーズの品質は、工場の説明だけでは実感しにくいものです。料理として提供されることで、味や食感、他の食材との組み合わせを感じることができます。
これは「工場を見せること」が目的なのではありません。製造のこだわりが、客にとってうれしい体験に変わるところが重要です。メーカーが自社の技術を海外で提案するときも、その技術でどんな料理や生活が良くなるかまで話せると、商談の中身が変わります。
「何を持っていくか」より、「何を一緒につくるか」
既存商品をそのまま輸出する方法には、商品やブランドを保ちやすい良さがあります。一方で、現地の生活、価格、販売場所と合わないと、品質だけでは選ばれません。
別の考え方は、現地の事業者が届けたい体験を知り、そこに必要な商品を一緒に考えることです。たとえば、カフェが提供したい飲み物に合う素材、レストランが季節のメニューに使える調味料、ホテルが滞在の印象をつくるための食品などです。
これらはメーカーの関わり方を考えるための仮説であり、Pizza 4P’sが募集している案件ではありません。同社との取引が可能だと示すものでもありません。
こうした考え方を採ると、売り先の探し方も変わります。「自社商品を扱ってくれる代理店」だけでなく、「自社の技術や素材を使うと、より良い体験をつくれる事業者」が候補になります。商品の売り込みより前に、相手が何を実現したいのかを理解する必要があります。
海外との関わり方を、四つに分けて考える
メーカーの海外展開は、自社ブランドで直接売るか、売らないかの二択ではありません。
表は横にスクロールできます。
| 関わり方 | 自社が提供するもの | 主に考えるべきこと |
|---|---|---|
| 完成品を販売する | 商品とブランド | 誰に、どこで、どんな理由で選ばれるか |
| 原料・部材を供給する | 相手の商品を支える素材や品質 | 相手の用途に合い、継続して使えるか |
| 共同開発する | 製造技術と商品化の知見 | 現地の顧客理解を持つ相手と、何を分担するか |
| 体験を一緒につくる | 食べ方・使い方・企画 | 自社商品が体験の中で不可欠な役割を持てるか |
たとえば、原料としての供給では、消費者に自社名が広く知られなくても事業になり得ます。一方、自社ブランドを育てたい会社には、それだけでは物足りない場合もあります。海外売上をつくりたいのか、ブランドを広げたいのか、製造技術を生かしたいのか。目指すものによって選択は変わります。
複数の方法を最初から全部行う必要はありません。自社の強みと体制が最も生きる入口を一つ選び、そこで分かったことを次へつなぐほうが、事業として組み立てやすくなります。
海外売上をつくることと、自社ブランドを育てることを分ける
ここが曖昧だと、良い取引が生まれても社内で評価が割れます。原料供給を始めたのに「現地で当社の名前が知られていない」と感じる。逆に、ブランドを紹介する企画を行ったのに「大口注文がない」と判断する。そもそも目指した成果が違うからです。
製造設備や技術を生かすことが主目的なら、相手のメニューや商品に継続して採用されることを軸に考えられます。自社ブランドが主目的なら、顧客がメーカー名を覚え、次もその名前で選べる接点が要ります。前者が後者の近道になるとは限りません。
たとえば調味料メーカーが現地の飲食店と一品をつくるとします。料理への採用を増やしたいなら、別の店でも使いやすい用途の提案が次の仕事です。家庭用商品を広めたいなら、店で気に入った人が自宅用を買える形まで考える必要があります。同じ共同メニューでも、その後の事業は別になります。
まず「海外で何を増やすのか」を社内で揃え、その目的に合う相手を探す。これは、現地パートナーを決めてからでは遅れやすい判断です。買い手の違いは、生活者・旅行者・現地企業のどこから始めるかでも整理しています。
飲食店の事例を、メーカーがそのまま真似する必要はない

Pizza 4P’sの構造が参考になるからといって、食品メーカーが海外でレストランと工場を同時に持つべきだという結論にはなりません。店舗運営、採用、サービス、生産、物流を抱えるには、別々の能力が必要です。
メーカー側は、全体を所有せず、得意な部分で関わることもできます。自社は素材と製造の品質を担い、現地の相手は顧客と売り場を理解する。両者で商品を調整し、顧客の反応を共有する。こうした分担が成立するなら、単独で全部を持つ以外の道が開けます。
ただし、相手任せにしてよいわけではありません。消費者がどんな反応をしたのか、どの使い方が選ばれたのかが戻ってこなければ、メーカー側は改善できません。最初の取引条件と同じくらい、顧客の情報をどう共有するかが重要です。
国内にも、製造側と顧客の使い方をつなぐ事例があります。Agritureと貝印・日清食品の共同企画を見ると、原料の紹介を、具体的な料理や商品の提案へ変える意味が分かります。
相手の名前より、自社が必要とされる理由を見る
海外で有名な企業と会えると、それだけで進出が進んだように感じやすくなります。しかし、相手にとって自社が必要な理由がなければ、名刺交換の先には進みません。
提案を考えるときは、相手の既存商品や顧客体験を見たうえで、「当社のこの技術で、この部分を良くできる」という仮説が必要です。味の違いなのか、地域性なのか、新しい使い方なのか。単に日本産だから、ではなく、相手の事業に追加できる価値を探します。
そして、単発の共同企画と継続供給では、事業の条件が異なります。限定メニューでの反応を確かめる段階なら、学びの大きさを重視できます。継続する段階では、品質だけでなく、供給体制、追加対応の負担、利益が残る価格まで含めて考える必要があります。
華やかなコラボをつくることと、長く続く取引をつくることは別です。その違いを最初から認識しておくと、海外展開の期待を現実的な事業へつなげやすくなります。
メーカーの海外展開を、完成品の販売だけで考えない
Pizza 4P’sの公開事例は、食べる体験を支える製造と、外部への供給が一つの事業の中につながっていることを示しています。そこから学べるのは、メーカーにも、現地の体験をつくる側として参加する余地があるということです。
うまみ企画では、自社商品をそのまま売る方法だけでなく、原料供給、現地向けの商品提案、共同企画などを含めて、ベトナムでの事業の入口を考えます。「海外で売りたいが、完成品の輸出が合うか分からない」という段階からご相談ください。ベトナムでの事業づくりを相談する
