ベトナムの育児用品店を調べてみた。Con Cưngのカエルのお粥と、1時間配送のおむつ

育児用品店の食品売場に、カエルとグリーンピースのお粥がある。ハトとモリンガ、黒い鶏と緑豆を組み合わせたお粥もある。ベトナムのCon Cưng(コン・クン)の商品を眺めると、哺乳瓶や紙おむつの先に、その土地の食材を使った子どもの食事が見えてくる。
一方、買い方はスマートフォンにかなり近い。おむつを注文する画面には1時間配送の案内があり、送料クーポンを受け取る有料会員もある。チャイルドシートのような長く使う品と、明日にでも買い足す消耗品を、同じ店が扱っている。今回は、このチェーンの企業発表、商品ページ、配送・会員制度から、ベトナムの育児用品店の中身をたどる。
ベトナム生活図鑑 第10回。価格・商品・制度は2026年9月確認の掲載例です。地域、在庫、キャンペーンで変わります。子ども向け商品の紹介は、個々の年齢や健康状態に対する使用・摂取の推奨ではありません。
9,000万ドルが投じられた、母と子の専門店
Con Cưngは2011年に創業した。投資会社Quadria Capitalは2022年1月18日、同社に9,000万米ドルを投資したと発表している。当時の説明では、直営店は600店以上、展開地域は45省・市だった。出産前後の用品だけを売る小さな専門店というより、既に広い店舗網を持つ小売企業への投資である。
同じ発表には、2019年にアプリを導入し、2019年から2021年にかけて店舗網を倍増させたことも記されている。なお、この時期の資料にある「2025年までに2,000店」という数字は将来目標であり、達成した店舗数ではない。過去の成長計画と、実際に確認できる営業規模は別々に読む必要がある。Quadria Capitalの投資発表
2026年9月に確認した公式サイトの店舗検索表示は、1,100店を超える規模だった。ただし、ページごとに表示数が異なり、集計の基準日も示されていないため、ここでは一日の確定店舗数としては扱わない。それでも、2022年の投資資料に載っていた600店超という規模から、店舗網が広がったことは読み取れる。
サイトの入口は、ミルク、おむつ、食品、衣類、母親向け用品、おもちゃ、育児機器に分かれている。ミルクは年齢だけでなく原産地域からも探せ、妊婦向けや大人向けの区分もある。乳児がいる期間だけの店ではなく、出産前から子どもの成長に合わせて買う物が変わっていく売場になっている。Con Cưng公式サイト
会社紹介にはLưu Anh Tiến氏とNguyễn Quốc Minh氏の名前があり、先のQuadriaの発表でも両氏を共同創業者としている。同社は600万世帯超にサービスを届けてきたと説明するが、集計期間は示していない。年間の買い物客数や有料会員数とは別の数字である。自社で開発するブランドと、国内外から仕入れる商品を組み合わせていることも、同社が掲げる特徴だ。会社紹介
Animoのおむつは、ベトナムのブランドで中国製
店内で扱うブランドの一つがAnimoである。同社のおむつ紹介では、ベトナムで開発されたブランドであり、製造は中国・泉州で行っていると説明されている。ベトナム企業のブランド名と製品の製造国は同じとは限らない。商品棚を知るうえでは、ここを分けて見ると具体的になる。
おむつには「tã dán」と「tã quần」がある。前者がテープ型、後者がパンツ型だ。Animoの紹介ページでは、テープ型のXSは5キログラム未満、Sは4〜8キログラム、Mは6〜11キログラム。パンツ型はMからXXLまであり、XLは12〜17キログラムと表示されている。
紹介ページの掲載価格では、テープ型XSの38枚入りが8万ドン、Sの54枚入りが13万9,000ドン。パンツ型XLの50枚入りは20万9,000ドンで紹介している。価格表の更新日は分からず、注文時の確定額ではないが、枚数と型の違いを知る手がかりになる。同じブランドの袋でも、中の枚数は一律ではない。Animoのおむつ紹介
別ブランドのTakatoを見ると、XLの62枚入りがあり、製造国はベトナムと記載されている。この商品の体重表示は12〜22キログラム。AnimoのXLと同じ二文字でも、表示上の対象範囲は一致しない。日本語を連想するブランド名から製造国を決めつけたり、サイズ記号だけで同じ物と考えたりすると、実際の商品とはずれが出る。
Takatoの商品では、袋の枚数、パンツ型かテープ型か、対象体重、製造国が個別に示されている。育児用品店の「おむつ売場」という一つの区分の中に、ベトナムのブランド、中国で製造する商品、ベトナムで製造する商品が重なっているわけだ。TakatoのXL・62枚入り
お粥の具材には、カエル、ハト、黒い鶏
食品の棚で目を引くのは、Cây Thịのお粥である。ベトナム語の商品名を読むと、何を組み合わせた料理なのかがかなり具体的に分かる。「cháo ếch đậu Hà Lan」はカエルとグリーンピース。「cháo bồ câu chùm ngây」はハトとモリンガ。「cháo gà ác đậu xanh」は、黒い皮膚を持つ鶏と緑豆を使ったお粥だ。
魚のお粥にも種類がある。「cá lóc」はライギョ類の魚、「cá chẽm」はバラマンディで、それぞれ緑豆やタロイモとの組み合わせが掲載されている。単に「チキン味」「魚味」とまとめず、食材の名前を前に出している。大人の食事でも使われる食材が、調理済みの子ども向け食品として並ぶ売場である。
これらはCon Cưngが扱うCây Thịの商品例であり、ベトナムのすべての家庭が日常的に食べるという意味ではない。ただ、輸入された離乳食だけを見ていては気づきにくい、現地ブランドの料理の幅がある。Cây Thịの商品一覧
お米のお粥以外には「nui」も登場する。短いパスタを指す言葉で、Cây Thịの「Súp nui thịt bằm bí đỏ」は、ひき肉とかぼちゃを使ったパスタ入りスープ。掲載されていた商品は260グラムで2万7,000ドンだった。袋やカップの中身を「ベビーフード」と一括りにするより、料理名として読む方が食卓を想像しやすい。ひき肉・かぼちゃのパスタスープ
さらに「Súp nui óc heo cà rốt」という商品もある。こちらは豚の脳とにんじんを使うパスタスープで、260グラム、3万2,000ドンの掲載例だ。珍しい料理として切り離すのではなく、同じブランドの調理済み食品として、お粥や別のスープと一緒に売られている点が面白い。食材名を省略せずに読むと、現地の棚の輪郭がはっきりする。豚の脳・にんじんのパスタスープ
子ども向けの魚醤と、食事に加える小さな瓶
調味料にも子ども向けの商品がある。Lê Giaの「Nước mắm cá cơm cho bé」は、カタクチイワシ類の魚を使う子ども向け魚醤として掲載されている。確認時の200ミリリットル商品は7万6,000ドンだった。魚醤が家庭の大きな瓶だけでなく、育児用品店の小さな調味料としても売られている。
同じ商品ページの関連商品には、くるみ油、ごま油、オリーブ油、野菜やきのこの調味料が並ぶ。Thuyền Xưaの65ミリリットルの油や、Anpasoの60グラムの調味料など、小容量の商品が多い。完成した料理を買う棚の隣に、家庭で作る食事に加える物の棚もある、という構成だ。
「子ども向け」という販売上の区分だけで、使用する年齢や量を一律には判断できない。ここで見ているのは栄養上の優劣ではなく、現地で何が商品になっているかである。お粥の具材だけでなく、魚醤、油、ふりかけに相当する食品まで揃うと、育児用品店の食品売場がかなり広いことが分かる。Lê Giaの魚醤と関連商品
おむつと同じ店で、200万ドン台のチャイルドシートを買う
Animoという名前は、おむつ以外にも現れる。例えばチャイルドシートのOneFit Isofix 360、型番CS008・Onyxは、確認時に208万ドンで掲載されていた。通常表示価格325万ドンからの値引きであり、さらに条件付き会員クーポンを適用した金額は別に示されている。ページに金額が複数あっても、誰もが同じ最安値で購入できるわけではない。
この商品には、カバー部分は6か月、フレーム部分は24か月という異なる保証期間が記載されている。使い捨ての消耗品ではなく、部品ごとに保証を受ける道具として売られている。手入れの案内も具体的で、取り外したカバーは水温30度で洗って自然乾燥させ、乾燥機やアイロンは使わないとしている。「洗える」という一言だけでなく、布部分をどう扱うかまで購入前に読める。Animo OneFitの商品ページ
チェーン全体の保証案内では、保証条件はメーカーごとに異なる一方、Con Cưngの店舗でも受付とメーカーへの引き継ぎを行うとしている。自宅近くの小さな店舗が、大型用品の購入窓口だけでなく、購入後の連絡先にもなる仕組みだ。個々の製品の保証範囲と、店が受け付ける役割は区別されている。保証対応の案内
返品・交換については、発送日から15日以内という期間だけでなく、未使用で、タグ、箱、付属品、贈答品などが揃っていることが条件になる。使用した物や保証を有効化した物まで、無条件で戻せる制度ではない。規定にはオンラインの買物券や販促企画の商品を対象外とする記載もあり、安い商品に交換しても差額は返金しないとしている。
店頭購入品は買った店舗、オンライン購入品は電話やメールの窓口へ連絡する。郵送で戻す場合は、窓口へ知らせてから3営業日以内に送るよう案内されている。15日という最初の期限と、連絡後の返送期限は別だ。注文番号や付属品も一緒に戻すため、大きな用品を開封するときの箱や添付物は、交換の手続きにも関わってくる。返品・交換規定
買い足しには、1時間便と当日便
配送案内には「Siêu tốc 1h」、つまり1時間の特急配送がある。ほかに当日配送、2〜3日の速達、2〜5日の通常配送、時間帯指定が用意される。すべての商品が全国一律に1時間で届くという意味ではなく、届け先や商品によって表示される方法が変わる。
当日便は、14時より前の注文なら当日の20時まで、14時以降なら翌日の20時までという区切りだ。日用品を今すぐ補充する注文と、急がないまとめ買いでは、選ぶ便が違う。育児用品を家へ届けるという一つのサービスの中でも、時間の選択肢が細かく分かれている。
店頭で購入した商品を運んでもらう場合には、店から10キロメートル未満などの条件があり、購入金額によって配送料が変わる。オンラインの特急便と、店で買った大きな荷物の配達は同じ料金表ではない。店舗の棚とアプリを併用する仕組みが、配送の区分にも表れている。配送方法と料金条件
アプリの購入案内では、注文後の状態が、受付、商品の引き渡し、配達員の手配、配送中などに分かれて表示される。注文が成立した後は、商品の種類、数量、住所、支払い方法をそのまま編集することはできない。受付・準備段階ならキャンセルして注文し直し、それ以外は窓口に相談する形だ。
注文画面では、使えるクーポンも区分されている。一般の購入案内では一注文で最大3枚だが、同じ種類を3枚重ねるのではなく、送料、商品代金、支払い方法に関する特典を各1枚ずつ使う仕組みだ。支払い方法の特典は用意されている場合に限られる。配送が遅れる場合の通知や到着予定の更新も案内され、値引きの選択から荷物を待つ時間までがアプリにつながっている。アプリの購入案内
月額2万9,000ドンの会員には、送料クーポンがある
Con CưngにはPink Plusという有料会員制度がある。2026年3月5日から実施するプランの案内では、1か月のPink Goが2万9,000ドン、12か月のPink Maxが26万9,000ドン。ただし、規約の期間はそれぞれ30日と360日で、暦の1か月・1年間とは同じではない。店頭で加入した場合も、アプリ側で有効化する手続きが案内されている。
特典の一つは、毎月30枚の特急配送クーポンだ。1枚当たりの送料補助には上限5万ドンがあり、有効化から30日で期限を迎える。使わなかった分を翌月へ繰り越すこともできない。「会員なら無制限に送料無料」ではなく、期限付きの券を受け取る制度である。買い物の割引券にも最低購入額があり、月曜日の10万ドン引き券はアプリでの99万9,000ドン以上の注文が対象だ。期限は有効化から24時間以内、かつ月曜日のうちとされる。
さらに、割引対象から24か月未満向けの母乳代替製品やAbbottのミルクなどを除く条件がある。会費、送料の補助、商品の値引きはそれぞれ別の特典であり、いつもの購入品がどこに当てはまるかで使い方が変わる。ミルクやおむつを繰り返し注文する店ならではの、細かな会員制度である。Pink Plusの会員案内
出店が増えていても、出生率は下がっている
店舗網の拡大とは別に、子どもを迎える家庭の側には変化がある。統計当局が2025年1月6日に公表した2024年中間人口・住宅調査の主要結果によると、全国の合計特殊出生率は女性一人当たり1.91人。前年の1.96人から下がった。2024年の都市部は1.67人、農村部は2.08人で、地域によっても差がある。子ども用品の店が増えていることから、出産そのものも一様に増えているとはいえない。2024年中間人口・住宅調査の主要結果・4ページ
ここでいう出生率は、年間に生まれた人数でも、一家庭が現に育てている子どもの平均人数でもない。調査資料では、観測された年齢別の出生率が続くと仮定して、女性が15〜49歳の間に産む子どもの数を計算する指標と定義される。実際の女性を一生追跡した人数ではない。Con Cưngの店舗数、同社が示す利用世帯数、全国の出生率は、それぞれ別のものを数えている。この統計だけで「子ども一人への支出が増えた」とまでは判断できない。
ヴィンイエンの新店で配られた、おしり拭き
地方の店舗がどんな形で開店するのかも、公式の案内に残っている。2025年7月10〜20日、当時の住所表記でヴィンフック省ヴィンイエン、Ngô Quyền通り118番地の店舗では、開店企画としてウェットティッシュのプレゼントを実施した。
参加者は電話番号を登録し、受け取りの際にもその番号を使う。贈り物は一つの電話番号につき一つ。衣類、服飾小物、おもちゃの購入に使える5万ドンのクーポンにも、24万9,000ドン以上という購入条件が付いていた。これは現在も使える割引の案内ではなく、2025年の新店が近隣の家庭に来店を促した具体例である。
開店時の贈り物が特別な記念品ではなく、日々使うウェットティッシュであるところに、この店の商材が表れる。電話番号で受け取りを管理する店頭企画と、アプリに届く会員クーポン。子どもの用品を買う場所は、近所の店舗と携帯電話の両方に置かれている。ヴィンイエン店の2025年開店企画
