ベトナムの薬局を調べてみた。Pharmacityの雨合羽、Long Châuの家族用接種記録

ベトナム生活図鑑08。Nhà thuốc ベトナムの薬局。Long Châu、Pharmacity、An Khang。

ベトナム生活図鑑|第8回。情報確認:2026年9月29日。企業の公式販売ページ、利用規約、採用情報をもとにしています。薬の選択・服用や接種の判断を案内する記事ではありません。

薬を少量買うために店頭へ行く。家族の接種予定をアプリで確かめる。日用品を買い足す。ベトナムの薬局チェーンには、こうした異なる用事が集まっています。Pharmacityの自社ブランド売り場には、歯ブラシやボディーソープと並んで雨合羽まであります。ただし、通販の品ぞろえだけでは薬局の役割は分かりません。処方箋や販売単位によって、実店舗に残る仕事もあるからです。

一方、店頭とオンラインの違いを見ると、薬局ならではの細かい線引きがあります。Pharmacityは、ネットで販売する非処方箋薬について、箱やボトル単位に限ると案内しています。1錠、1シート、小袋単位で購入する場合は実店舗へ。同じブランドでも、家で注文する買い物と、薬剤師のいるカウンターで買う行動は完全に同じではありません。

Long Châuには薬局のほかに予防接種センターがあり、アプリには家族の接種記録をまとめる機能があります。An Khangでは、ベトナムの化粧品ブランドCocoonの空き容器を回収する期間限定企画も実施されました。薬を売る棚だけでなく、日用品、家庭用機器、予約、会員番号までたどると、それぞれの店が担っている仕事が見えてきます。

目次

「1箱」と「1シート」は、買う場所が違う

Pharmacityの配送規定は、処方箋薬と非処方箋薬を分けて説明しています。同社は処方箋薬を、有効な処方箋を確認したうえで実店舗で販売し、オンラインでは販売しないとしています。非処方箋薬はウェブ、アプリ、注文用の電話窓口から受け付けます。ここで紹介しているのは同社の販売方針であり、ベトナムのあらゆる薬局の運用を一括して説明するものではありません。

オンラインの販売単位は、hộpが箱、lọやchaiが容器・ボトル。これに対してviênは錠、vỉはシート、góiは小袋を指します。配送中の品質を保つため、ネット注文では少量に分けて販売せず、小分けで購入したい場合は店頭を利用するという案内です。値段を見るときも、表示額が1箱なのか1シートなのかで受け取り方が変わります。Pharmacityの配送・販売規定

一方、同社の会員規約のアプリ説明には、登録済みの処方箋から追加注文する機能も記載されています。対象となる薬や受取経路まではこの記述だけで確定できず、配送規定の説明を全機能へ広げることはできません。商品情報の掲載、注文の受付、実際の受け渡しは分けて読む必要があります。会員規約7.4のアプリ機能説明

自社ブランドの雨合羽と、6,000ドンの綿棒

Pharmacityは2015年に自社ブランド商品を発売したと説明しています。現在のブランド紹介では、健康関連商品だけでなく、パーソナルケア、美容、日常の便利な商品を含む数百の品番を扱うとしています。店舗名が付いた商品が、サプリメントの棚にだけあるわけではありません。

確認時の一覧には、雨合羽が1万4,000ドン、子ども用のプラスチック軸綿棒55本入りが6,000ドン、子ども用歯ブラシが1万8,000ドンと掲載されていました。紙軸綿棒は200本入りで3万2,500ドン。容量や入り数が異なる複数の商品が、同じPharmacityブランドで並びます。ここでの価格は確認時のウェブ表示で、全店舗で固定された価格ではありません。

薬の箱、歯ブラシ、雨合羽が同じブランド名を持つ。この取り合わせから、同社が「薬を相談する場所」と「身の回りの品を補充する場所」の両方を売り場に置いていることがわかります。季節や用途を問わず何でも売るという話ではなく、公式の商品一覧に実際に存在する範囲で、その広がりを確かめられます。Pharmacityの自社ブランド売り場

Long Châuは2026年3月に約2,500薬局と公表

時点をそろえた規模は、親会社FPT Retailの2025年年次報告書で確認できます。同年末のLong Châuは薬局2,417店と予防接種センター223拠点。合計2,640拠点を「薬局2,640店」と数えるのは誤りです。薬局は前年末から474店、接種センターは97拠点増えました。

Long Châuの年間売上高は34兆5,010億ドンで、前年より36.26%増加しています。これは薬局と接種事業を含むLong Châuの数値であり、医薬品だけの売上でも、ベトナム薬局市場全体の規模でもありません。同報告書は、新店が都市中心部以外や農村部へ広がり、地域に合わせて価格帯や商品構成を調整していると説明します。アプリの拡充と、地方に実店舗を増やす動きが同時に進んでいます。FPT Retail 2025年年次報告書・冊子52〜53ページ

Long Châuが2026年3月20日付で掲載した記事では、全国34の省・中央直轄市に、約2,500の薬局を持つとしています。末尾にはSức khỏe & Đời sống紙のNguyễn Thắngによる記事を基にした旨が記載されています。主題は同社の値上げ抑制とアプリ注文の配送支援。店舗数はこの記事が伝える当時の企業の規模であり、接種センター数やベトナム全体の薬局数ではありません。

記事には、取扱商品の出所を確認する手段として、店頭、レシートのQRコード、ウェブサイト、アプリが挙げられています。会計後のレシートが支払額を残すだけでなく、商品情報を調べる入口にもなるということです。薬局の規模を店の数だけで眺めると抜け落ちますが、買った後に確認できる情報も店舗サービスの一部です。

発表では、製造業者や流通業者と在庫を確保する取り組みと、買い占めへの対応も説明されています。値段の掲示、在庫の確保、商品の出所を調べる機能が、一つの案内の中に並んでいます。なお、このとき発表された値上げ抑制は、すべての商品について将来も値段が変わらないという永久保証ではありません。Long Châuの2026年3月発表

Pharmacityの店舗紹介と、An Khangを持つ小売グループ

Pharmacityの会社紹介は、国内のDược Hậu GiangやNam Hàに加え、Abbott、GSK、Sanofiなどの取扱ブランドを挙げています。医薬品だけでなく、健康食品、美容品、医療機器を扱うという説明です。店頭、公式サイト、アプリに加えて、外部の配達・通販サービスとの連携にも触れています。Pharmacityの会社紹介

この紹介ページには約1,000薬局、約5,000人の薬剤師という規模が記載されています。ただし、対象地域の表記に「40省・市」が残り、数値の基準日も明示されていません。2026年の最新店舗数としてLong Châuと順位を付ける使い方はしません。ウェブページが今も閲覧できることと、その中の数字が今の数字であることは違います。

An Khangを傘下に持つのは、小売グループのMWGです。携帯電話販売のThế Giới Di Động、家電のĐiện Máy Xanh、食品のBách Hóa Xanhなどを展開する企業として知られています。同社の沿革では、2018年にAn Khangへの少数持分投資を行い、2021年に連結対象へ加えたと説明しています。薬局の看板は違っても、その背後では他の生活分野も扱う企業が運営に携わっています。MWGの公式沿革

薬局の「ミルク売り場」は、赤ちゃん向けだけではない

An Khangのサイトには、sữa bột người lớnという大人向け粉ミルクの分類があります。その中に掲載されるのが、NestléのPeptamenです。確認したページの販売単位は400グラム缶、表示価格は56万9,000ドン。商品情報にはブランド、製造者、製造国、包装単位が分かれて表示されています。缶入りの商品だからといって、すべてが乳児用ミルクではありません。

Peptamenは同ページで医療用栄養食品として説明され、患者への使用は医療従事者の監督下で行うよう記載されています。一般の飲料と同じ用途として紹介することはできません。病気への効果をここで判断するのではなく、薬局にこうした専門的な食品の売り場もあるという例です。商品ページではスイス製と表示され、缶の大きさも明記されています。家族のために代理で購入する場合にも、ブランド名だけでなく容量や製品名を照合するための情報が並んでいます。An KhangのPeptamen商品ページ

Long Châuのアプリには「家族の買い物」の機能もある

Long Châuのアプリ紹介には、薬剤師との相談、商品注文、ポイント、配送の案内が並びます。商品や注文の情報をチャットの中で共有する機能も紹介されており、商品名を最初から文字で説明し直す以外の方法が用意されています。問い合わせ、商品確認、注文が別々の窓口へ完全に分かれているわけではありません。

現在の紹介ページには「Mẹ & Bé」、母親と子どもに関する機能もあります。歯が生えた時期を記録する、身長と体重を記録する、成長段階ごとの項目を確認する、といった内容です。これは購入履歴の保存とは異なる使い方です。薬局アプリの中に、家庭で子どもの成長を残す入口まで置かれています。

配送の説明は、市街地とそれ以外で分かれています。ページには市街地で1時間以内、それ以外では距離や交通状況に応じて3〜5営業日という案内があります。全国どこでも1時間と受け取ってはいけません。対象住所と注文時の条件によって、同じアプリでも受取までの時間は変わります。Long Châuアプリの公式紹介

会員番号は電話番号。レジとアプリをつなぐP-Xu

Pharmacityの会員制度は、2026年7月1日更新の規約で確認できます。対象は18歳以上の最終消費者で、卸売や転売目的の大量購入は対象外。会員登録そのものは無料で、1つの電話番号に1つの会員番号を対応させる仕組みです。紙のカードを持つことだけが会員の証明ではありません。

店頭会計では電話番号を伝えるか、アプリのバーコードを提示します。オンラインでは会員アカウントにログインして購入します。ポイントはP-Xu Đồngと呼ばれ、使用時の換算は1ポイント=1ドン。電話番号を介して、店での買い物とネット注文を同じ会員記録に結び付けています。

ポイントを貯める条件と使う条件は別です。Payooや電話カードのほか、一部企業の商品は付与対象外。支払いへの使用はPayooと電話カードが対象外で、割引後の商品合計額の最大50%まで、5,000ポイント単位です。通常の買い物で得たポイントは付与日から365日で失効し、特別企画でもらった分は企画別の期限になります。現金への交換はできません。

店頭でポイントを使う際は、電話番号と希望の使用額を伝えるだけでなく、アプリまたはSMSで受け取る認証コードやQRコードを用いて確認する手順が記されています。電話番号は会員を見つける手がかりですが、残高の使用には別の確認が入るということです。Pharmacity会員制度の規約

血圧計を買った後は、メーカーの窓口につながる

家庭用機器の売り場を見ると、薬局の仕事が薬の箱だけではないことがさらにわかります。Pharmacityは、メーカー別に機器の保証窓口、連絡方法、保証期間をまとめたページを公開しています。そこにはOmron、Microlife、Accu-Chekなどの製品が並んでいます。販売後の問い合わせ先も、すべてが薬局の同じカウンターで完結するわけではありません。

たとえば一覧のOmron HEM-7124とHEM-7143T1では、本体と腕に巻くカフで保証期間が異なります。本体5年、カフ2年という案内があり、修理・保証の依頼は先にOmronのカスタマーサービスへ連絡してから保証窓口で受け付ける手順です。すべてのOmron製品が同じ条件という意味ではなく、一覧に載る型番の条件です。

同じ一覧では、OGCAREの血糖測定器は本体の保証と付属品を分け、試験紙と採血用の針には保証なしと記載しています。売り場では同じ機器と一緒に使う物でも、不具合時の扱いは同一ではありません。ここでは特定機器の性能や測定結果の診断を勧めているのではなく、薬局が用意している購入後の窓口を見ています。Pharmacityのメーカー別保証案内

接種記録は、子ども一人につきアプリ一つではない

Long Châuは、薬局とは別に予防接種センターを運営しています。公式の案内で使われるtiêm chủngは予防接種、trung tâmはセンターという意味です。ブランドが共通でも、薬を購入する店舗と、予約して接種を受ける施設は区別する必要があります。薬局の店舗数を、そのまま接種可能な施設数として数えることはできません。

同社の2024年11月19日付の紹介記事によると、電子接種記録では一つのアカウントに本人と家族の情報を登録できます。過去の接種履歴を確認し、今後の予定を見る、予約を入れる、オンラインで相談する、といった機能があります。家族それぞれの予定を一つの入口から確認する設計なので、子どもごとに全く別のアプリを使う仕組みではありません。

公式記事には紙の記録をなくす、持参を忘れる、といった場面への対応として、この機能が説明されています。ただしアプリの画面だけで接種の要否を判断できるという意味ではありません。ここで注目したいのは、購入用のアプリが「次にいつ施設へ行くか」を覚えておく場所にもなっていることです。Long Châuの電子接種記録の案内

接種センターの仕事を、採用情報から見る

サービスの宣伝だけでなく、働く人向けの募集要項にも具体的な情報があります。Long Châuの接種担当看護師の募集では、器具の準備に加え、ワクチン保管庫の温度と湿度を毎日確認する業務が記されています。来院者と接する時間の前に、保管環境を確認する仕事があるということです。

来院者への対応では、本人確認、医師の指示の確認、乳児の計測、ワクチン名・ロット番号・使用期限の確認を案内することが挙げられています。その後も記録の作成・保管、家族への説明、定期報告、研修が職務に含まれます。ここでは採用条件から業務の範囲を紹介しており、読者が自分で接種を行う手順を示しているわけではありません。

この募集はフルタイム勤務が対象です。学歴はCao đẳng以上の看護課程修了を求め、実務資格を必須、接種安全の証明書を持つ人を優先すると記載しています。販売員と同じ募集ではなく、専門職としての学歴・資格と、施設内で担う仕事が並ぶ採用要項です。全員が現在この条件で採用されていると実査したわけではありません。Long Châuの接種担当看護師募集

An Khangに、Cocoonの空き容器を持っていく

薬局と化粧品の接点を示す例が、An KhangとCocoonの空き容器回収です。MWGの2025年5月16日付の案内では、期間は同年5月8日から8月8日まで、回収場所は指定されたAn Khangの10拠点でした。現在も常時実施されている企画ではなく、当時の案内に記された活動として取り上げます。

利用者がCocoonの使用済み容器を持参し、スタッフが数えて回収箱へ入れる。5個につきキャンバスバッグ1個、10個なら2個という交換方法でした。対象拠点にはホーチミン市内のほか、ドンタップ省やダクラク省の薬局も含まれていました。薬や化粧品を買う日とは別に、使い終わった容器を渡しに行く用事が生まれたわけです。

回収条件には、洗浄済みであることのほか、ふたがない容器、へこんだ容器、切り開いたチューブや詰め替え袋、ラベルが薄くなった容器も受け入れると記されていました。きれいな空きボトルだけを展示する企画ではなく、使い切った後に家庭へ残る容器の状態まで想定していたことがわかります。MWGによるAn KhangとCocoonの回収企画

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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