ベトナムの子ども英語教室を調べてみた。二階建てバスの授業、アプリの宿題、夏休みの農場

ベトナム生活図鑑19。子どもの英語教室。VUS、ILA、Apollo。

ベトナム生活図鑑 第19回|2026年9月29日確認

二階建て観光バスでマイクを持ち、英語で街を紹介する。アオザイ博物館で服の模様を眺め、家へ帰ればスマートフォンのゲームで単語を復習する。ベトナムの子ども向け英語教室を調べると、机とテキストだけでは収まらない授業の姿が出てくる。

VUS、ILA、Apollo。いずれもベトナムで子ども向けプログラムを展開する教育事業者だが、年齢区分や家庭学習、発表の場のつくり方は同じではない。校舎の新設案内、教材、アプリの仕様、2026年のイベントから、実際に用意されているサービスをたどってみたい。

目次

家庭は教育にいくら使っているのか

教室の広告から少し離れ、家計側の数字を見ておきたい。統計当局が2025年5月16日に公表した2024年生活水準調査では、教育・訓練への支出は、教育を受ける人一人につき年平均950万ドン超。2022年より36.3%増えた。全国4万6,995世帯を抽出した調査の結果で、英語教室に通う家庭だけを集めたアンケートではない。2024年生活水準調査の公表結果

この年間額には学費だけでなく、制服、教科書、学用品、補習、通学なども入る。資料の注記は、世帯員の留学費用や下宿、外国語、美容・化粧などの訓練も対象に挙げている。子どもの英会話代だけを取り出した数字ではない。支出の構成では学費等が41.1%、補習が21.4%を占めるが、外国語の訓練は「その他の教育費」の例にも現れるため、補習費を英語教室の市場規模に読み替えることはできない。

また、調査全体は当時の全国63省・市を対象とする一方、支出の推計が代表する範囲は全国、都市・農村、六つの経済社会地域までとされる。ここでの950万ドン超は全国平均であって、ハノイの家庭が毎年英語に使う額ではない。個々の教室の受講料は別の問題になる。たとえばApolloの公式FAQは、料金がレベル、授業時間、プログラムで変わるとして具体額を個別案内にしている。Apolloの受講料FAQ

住宅街にも商業施設にもある英語教室

ILAは2026年9月19日、ハノイの27–29 Nguyễn Lamに新しい教室を開いた。同社が全国82番目と発表した校舎で、ロンビエン周辺の家族に向けて紹介している。開校時の案内には、校舎見学だけでなく、体験授業と一対一の英語レベル判定が並ぶ。保護者が施設を見て、子どもが授業と判定を受けるところから通学の相談が始まる。

この開校案内では、Cambridgeの学習内容に加え、CEFRとPearsonのGSEという習熟度の尺度も紹介している。校舎を増やす話と、学習をどんな物差しで把握するかという説明が、一つの案内に並ぶ。82という数はこの開校時の同社発表であり、英語学校全体の規模ではない。ILA Nguyễn Lamの開校発表

ILAの校舎一覧には、フーミーフン、ビンタン、ホックモン、グランドパークなどの名前が並ぶ。一方で、Vincom Thủ ĐứcやAeon Bình Dươngのように商業施設名を冠した教室もある。ハノイ、カントー、ニャチャン、ダナン、ハイフォンにも拠点が掲載されており、一つの大都市だけを対象とした学校ではない。ILAの校舎一覧

VUSも2026年1月、ホーチミンの269 Quốc Lộ 50、Bình Đôngに教室を開いている。校名は国道50号線の名前を使い、公式の住所案内には「旧8区」という地名も併記する。新しい行政区名と、以前から使われてきた地区名を合わせて所在地を伝えている。VUS Quốc Lộ 50校

3歳の教材と、小学生の教材は別物

ILAの通常コースには、3~6歳のJumpstart、6~11歳のSuper Juniors、11~16歳のSmart Teensがある。Jumpstartは聞く・話す活動を中心に、Doodle Townという教材を使用する。小学生向けではEnglish Worldへ移り、読む・書くを含む四技能を扱う。中高生年代の案内にはNational Geographicの教材が登場する。

年齢で教材名まで変わり、幼児から十代まで同じ絵カードを使い続けるような構成ではない。幼児向けに示される遊び、小学生のプロジェクト、十代向けの世界についての題材と、授業中に扱う内容も分かれている。無料体験の申込画面も、子どものために保護者が氏名・連絡先と希望教室などを入力する形だ。ILAの年齢別プログラム

VUSのSuperKidsは6~11歳向けで、ベトナム人と外国人の教師が担当するプログラムと、外国人教師が担当するプログラムが案内されている。教師の国籍の構成は一律ではない。個人で考える活動、ペアやグループでの活動、ロールプレイや発表などを組み込み、CambridgeのStarters、Movers、Flyersに向かう学習経路を示している。

同ページが掲げる2,700人以上という数字は、教師とアシスタントを合わせた同社の人数だ。外国人教師だけが2,700人いるという意味ではない。教室の授業を紹介する写真や活動報告にも、主担当の教師だけでなく、子どもの活動を補助するアシスタントが登場する。VUS SuperKids

幼い子を預かる運営について、ILAは子どもの保護方針も公開している。対象は教師や校舎の従業員だけでなく、契約先や外部のサービス提供者まで含む。採用時の手続き、職員への方針の共有、子どもが不安を感じたときに声を上げられるようにすることを挙げている。これは同社が掲げる運営方針で、安全性を第三者が認定したという意味ではない。授業やイベントの案内の裏側には、教える人だけでなく、子どもを預かる組織としての説明も置かれている。ILAの子どもの保護方針

家で開くアプリには「単語の吊り橋」がある

VUSのOVI Kidsには、ゲーム、音声・動画、練習問題の三つの入口がある。ゲームの例は、単語を覚える豆の木、会話の中で語を認識する滝、つづりを確認する吊り橋など。画面上の世界を進むことと、教室で習った英語の復習が組み合わされている。

ゲームには一日ごとの回数制限があり、五つのゲームでそれぞれ三回、合計十五回という説明だ。獲得するコインやバッジはアプリ内で使うもので、店の商品や外部の景品への交換券ではない。SuperKidsの生徒向けには無料で、入学前の家庭にも試用機能を設けている。

子ども用とは別にOVI Parentsがあり、保護者と生徒は入学時に登録した電話番号を使ってログインする。入れない場合の問い合わせ先も各校の入学担当だ。教室に渡した連絡先が、家庭学習の入口にもなっている。年齢が上がるとOVI TeensやOVI IELTSという別のアプリ群も用意される。OVI Kidsと保護者向けアプリの案内

ApolloにはMy Apollo Worldがある。公式のプログラム説明では、教室の授業と連動した動画、ゲーム、カラオケなどを家庭学習に使い、自動採点とフィードバックを返す仕組みが紹介されている。紙の宿題だけを持ち帰るのではなく、家でも授業に対応するコンテンツを開く形だ。

同社は教師による授業での評価と、週単位の学習データの分析を組み合わせると説明している。保護者が見る対象も、単に試験の合計点だけではなく、取り組んだレッスンや課題、学習の進行になる。ただし、これはApolloが提供すると説明する仕組みであって、どの子にも同じ学習成果が出るという保証ではない。Apolloの学習プログラム

出席と宿題で、クラスごとに競争する

家庭学習の記録は、イベントにも使われる。ApolloのLeaderboard Championship 2026は、小学生向けのクラス対抗企画だ。案内が掲げる規模は78校、1万5,000人以上。これは同大会の対象・参加規模として示された数字で、ベトナム全体の英語学習人口ではない。

学習記録から作るLeaderboard点の内訳はHome Learningの達成率が50%、ワークブックが30%、出席率が20%。一度のスピーチの出来だけを競う大会とは違い、普段の宿題と通学が順位に関係する。9月7~13日の第1ラウンドでは、平均点の高い上位20校から代表クラスを選ぶ仕組みだった。代表枠は一校一クラスではなく、生徒数200人以下なら一クラス、201~500人なら二クラス、500人超なら三クラスと、校舎の規模で分かれる。

ただし、9月14~27日の決勝ラウンドは、宿題と出席だけで決まらない。評価の60%がLeaderboard点で、残り40%はクラス独自の写真をつくり、投票を呼びかける課題だ。子どもたちの学習記録に加え、クラス全体で写真を用意する活動と、保護者が家族や友人へ応援を頼む仕組みが組み込まれている。

保護者はMy Apollo Worldでクラスのコードを確認し、大会ページから自分の子のクラスを探せる。2026年9月29日の確認時には45クラスの決勝進出を知らせる表示があり、一般投票は9月27日23時59分で終了していた。Apolloの2026年大会

二階建てバスの上でマイクを持つ

VUS Teamが2026年7月10日付で報告したのは、Super Summer 2026のCity Explorerという活動だ。6~11歳のSuperKidsの生徒が二階建て観光バスに乗り、街の建物や通りを見ながら英語を使った。教室の壁の代わりに、バスから見える街が題材になる。

活動には教師とアシスタントが同行し、子どもが名所を紹介したり、やり取りをするゲームに参加したりしている。報告には、車内で話すためにマイクを準備したことも記されている。写真の説明には、英語の暗号を友達と解く場面もある。単なる移動のバスではなく、話す、聞く、問題を解く時間を車内につくった企画だ。

英語教室の遠足というと、海外や外国の文化を学ぶ場所を想像するかもしれない。この回で扱われたのは、子どもが暮らす街にある通りや建築だった。観光サービスの車両に、いつものクラスの教師と生徒が乗るという組み合わせである。VUSの二階建てバス活動報告

アオザイ博物館も英語の教室になる

同じ年の夏、VUSはトゥードゥックのアオザイ博物館への校外活動も実施した。VUS Teamの6月24日付の報告によると、参加したSuperKidsの生徒は約400人。2026年のSuper Summerで最初の遠足として紹介されている。

子どもたちはアオザイの伝統的な模様や歴史を見ながら、英語によるグループ活動に参加した。展示を見る時間だけでなく、教師と話し合い、課題に取り組む時間がある。報告には、自分でアオザイをデザインする活動も掲載されている。

扱うものがベトナムの衣服である点が面白い。英語で説明する対象は、必ずしも海外の祝日や外国の町である必要はない。ここでは身近な文化を眺め、模様や形について友達と話すことが授業になっている。約400人という数字も、学校全体の生徒数ではなく、この博物館への活動の参加規模を表している。VUSのアオザイ博物館への遠足

夏休みは「国内にいながら留学」という売り方

ILA Summer 2026は、2歳半~16歳を対象とする七週間のサマープログラムとして案内された。使われる表現は「du học tại chỗ」。直訳すれば、その場での留学だ。海外へ航空機で渡るコースではなく、ベトナム国内で英語を使いながら学び、日中を過ごすプログラムをこう呼んでいる。ILAのサマーキャンプ説明

幼い子向けのLittle Starsでは、英語だけを独立した科目として教えるのではなく、プロジェクトや体験に組み込む説明になっている。動物や自然を扱うWild World Discovery、科学を扱うSTEM Universe、廃材などを使う工作のEco-Craft Creators、舞台表現のStars on Stageと、活動にもそれぞれ名前がある。通常学期の通学型コースと、夏の日中を過ごすコースは、同じブランドでも家族の予定の中で占める時間が違う。ILAの幼児向け夏プログラム紹介

2026年の専用サイトは年齢を2歳半~8歳、8~11歳、11~16歳の三つに分ける。農場体験の対象は2歳半~11歳で、植え付けや収穫を行う案内だ。11~16歳には、複数の課題をチームで回る別の校外活動が用意されている。すべての年齢で同じ場所へ行き、同じ作業をするわけではない。なお、同社の夏期講習の紹介記事にはLittle Starsを2歳半~6歳とする表記もあり、年齢の境界は公式ページ間で一致していない。ここでは専用サイトの募集区分を示している。

夏のフェスティバルには、多国籍の文化体験、音楽の舞台、募金を伴う企画などが並ぶ。時間割の中心を英語の勉強だけで埋めるのではなく、農場、創作、舞台といった出来事を組み込んだ夏休みを販売している。ILA Summer 2026の専用案内

算数を英語で学ぶコースもある

ILAのメニューには、通常の英語コースと別に、4~10歳向けのSTEAM・IMATHSも載っている。4歳のFoundation A、5歳のFoundation Bから、6歳のGrade 1、10歳のGrade 5までという段階で、各段階の時間数は104時間と案内される。

こちらではCambridgeの教材を使い、オンラインで算数を練習する仕組みも組み込んでいる。英単語の意味を答えるだけでなく、英語を使って数や算数を学ぶという別の入口だ。104時間という数字は各段階の授業時間であり、一回の授業時間や何か月で修了するかを示したものではない。

年齢だけで機械的に割り当てるという説明ではなく、年齢と習熟度に応じて配置するとされている。英会話、試験対策、夏休みのコースに加えて、英語で別の教科を学ぶプログラムまで同じ事業者の窓口に並んでいる。ILAのSTEAM・算数コース

スピーチ大会の決勝は、翌年1月の予定

VUSのVietnam English Championship 2026は、夏のうちに表彰まで終了している。8月26日の公式報告によれば、寄せられた応募作品は約1,000件。テーマはLead with Your Voiceで、技術、環境、人とのつながりなどを取り上げた発表が集まった。

上位100人には、VUSの教師とTEDxSaiGon創設者のHoàng Ngọc Anh氏による指導を実施した。扱うのは発音だけではなく、話の構成、課題への取り組み方、舞台での振る舞いまで。英語の単語を知っていても、人前で順序立てて話すには別の準備がある。その準備自体が、大会のプログラムに含まれていた。表彰ではタブレットやイヤホンなどの賞品も用意された。VUSのVEC 2026開催報告

ILAのSpeak Up 2026は、8~15歳の子どもを対象とし、ベトナム国内だけでなく海外からの参加も案内している。通常コースと似た名前でも、大会の部門は8~11歳のSuper Juniorsと12~15歳のSmart Teens。授業の受講年齢とは少し異なる。

10月6日に確認した公式ページでは、予選の予定期間は2026年8月25日~10月4日と記されていた。英語の発表と特技を組み合わせた作品をオンラインで応募する形式だ。ページに応募ボタンは残っているが、記載された締切は過ぎており、今も応募できるとは判断できない。準決勝は11月21~22日、各部門30人の計60人がホーチミンで、くじで決まるテーマの英語発表と特技を披露する予定。決勝は各部門四人、計八人で2027年1月9日という予定表で、結果の発表ではない。

動画を送る大会には、授業の申込書とは別の条件もある。公式ページは未成年者の保護者を含む規約への同意を掲げ、主催者が参加者の動画、情報、画像を広報・宣伝に無料で利用する権利を記している。対象は受賞者だけに限定されない。家で撮った発表を審査してもらうだけでなく、その映像が大会の広報にも使われ得る応募形態だ。

賞に含まれる夏の留学プログラムについても、航空券とビザ申請費は含まれないと記されている。教室の授業から始まった活動が、家庭での動画制作、ホーチミンの舞台、海外のサマープログラムへとつながる。その入口には、英語だけでなく「自分の得意なことを見せる」という応募条件が置かれている。Speak Up 2026の部門・日程・条件

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

目次