いい商品なのに売れない食品メーカーが、まず見直すべきこと

「いい商品を作っているのに、売れない」。食品メーカーの方から、こういう相談をよく受けます。

試食させてもらうと、確かにおいしい。原料の質も、製法のこだわりも、大手にはないものを持っている。それでも売上が伸びない、あるいはじわじわ下がっている、という会社は少なくありません。

結論から言うと、こうしたケースの多くは商品そのものに問題があるわけではありません。問題は「価値が伝わっていない」こと、そして「売り方が時代に合わなくなっている」ことの2つに集約されます。この記事では、その2点をどう見直せばいいのかを整理します。

目次

売れない原因は、味ではなく「伝わっていない」こと

これまで多くの食品メーカーを見てきましたが、味で大きく負けている会社はほとんどありません。差がついているのは、たいてい「伝え方」の部分です。

職人にとっては当たり前の手間や工夫が、お客様から見ると「他の商品とどう違うのか分からない」状態になっている。これが売れない一番の理由です。説明されなければ、その価値は存在しないのと同じになってしまいます。

下の表は、同じ工夫が「伝わっていない場合」と「言葉にした場合」で、お客様の受け取り方がどう変わるかを並べたものです。

社内では当たり前のこと伝えないと言葉にすると
三日かけて炊いている「普通の商品」に見える手間をかける理由が伝わり、価格で比較されにくくなる
機械を使わず手で選別違いが分からない品質へのこだわりとして安心材料になる
創業からの製法を守っている古いだけに見える歴史と信頼の裏づけとして価値になる

つまり、商品を改良する前に、すでにある価値を言葉にすることのほうが先決です。そして多くの場合、こちらのほうが短期間で結果につながります。

卸や展示会に頼った売り方が、通用しにくくなっている

もう一つの原因が、売り方そのものです。

以前は、いい商品を作っていれば卸や問屋が販路を広げてくれました。展示会に出せば名刺が集まり、後はFAXで注文が入る。メーカーは商品づくりに集中していればよかった時代がありました。

しかし、この流れは少しずつ細くなっています。卸の担当者は減り、展示会の来場者の質も変わりました。最終的に商品を選ぶ消費者や、仕入れを検討する企業の担当者は、まずインターネットで調べます。検索して出てこない会社は、存在しないのと同じように扱われてしまう。

観点卸・展示会に頼る売り方自社で売る力をつける
価格の主導権取引先に握られやすい自社で値づけしやすい
お客様の顔見えにくい反応が直接わかる
新規の入口展示会・紹介が中心検索・SNSから常時入る

ここで起きているのは、販路が一つ消えたという話ではありません。「自分で見つけてもらう力」「自分で伝える力」を持たない会社が、構造的に不利になっているということです。裏を返せば、自社で発信して問い合わせを受けられる仕組みを持てば、卸の価格主導権に振り回されず、お客様の顔が見える商売に近づけます。

その商品の価値、お客様に伝わっていますか?

「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。

伝えるべき価値は、すでに社内にある

「うちには発信できるような特別なものはない」とおっしゃる社長は多いです。ですが、ほぼ例外なく、伝えるべき価値はすでに社内にあります。掘り起こせていないだけです。具体的には、次の3つを整理することから始めます。

  • 歴史:いつから、なぜその商品を続けてきたのか。続けてきた理由には、必ずお客様が知りたくなる背景があります。
  • 製法・手間:他社がやらないこと、コストをかけてでも守っていること。価格で比較されない理由になります。
  • 人:誰が、どんな思いで作っているのか。口に入れる食品だからこそ、作り手の顔は安心感に直結します。

これらは新しく作るものではなく、社内に眠っている事実を言葉にする作業です。立派なコピーは必要ありません。普段の仕事の中にある事実を、お客様に分かる形に翻訳していくイメージで十分です。

AIは「言葉を整える」のに向いている

最近は、こうした発信にAIを使う食品メーカーも増えています。ただし、使い方には注意が必要です。

私自身、商品説明をAIに丸ごと書かせてみたことがあります。出てきた文章はきれいでしたが、読み返すと内容が薄く、その商品らしさがまったく伝わりませんでした。一般論をきれいにまとめただけの文章は、お客様にもすぐ見抜かれます。

そこで分かったのは、AIに「中身を考えさせる」のではなく「中身を整えさせる」のが正しい使い方だということです。

AIに丸投げするAIに言葉を整えさせる
誰が中身を決めるかAI作り手(社長・職人)
出てくる文章一般的で薄い現場の言葉が活きる
お客様の反応見抜かれやすい伝わりやすい

作り手が普段話している言葉、たとえば「この豆は火の入れ方が難しい」といった現場の言葉のほうが、よほど人に伝わります。その言葉をAIに渡して、読みやすく整えてもらう。事実は作り手のもの、整えるのはAI、という役割分担にすれば、内容が薄くならず、作業も速くなります。

AIは、職人の言葉をお客様の言葉に翻訳する道具として使うのが現実的です。ゼロから物語を作らせる道具ではない、と考えておくと失敗しません。

その商品の価値、お客様に伝わっていますか?

「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。

Agritureでの経験から

このやり方は、私たち自身が事業の中で試してきたことでもあります。

Agritureでは「OYAOYA」という京都産の乾燥野菜のブランドを運営しています。自社で企画した商品を、消費者へ直接販売するD2Cの形です。最初から売れていたわけではありません。商品ページの言葉や写真を見直し、SNSで産地や作り手のことを地道に発信し、少しずつ買っていただけるようになりました。自分たちで売る側に回って初めて、伝え方の重要さを痛感しました。

その経験をもとに、うまみ企画では食品メーカー向けのデジタル支援も行っています。SEOを意識した記事の作成、商品ページやLPの制作、SNS運用など、ウェブでの集客が得意でない食品メーカーのマーケティングを一緒に組み立てる仕事です。

支援していて感じるのは、やはり多くの会社が「商品力はあるのに伝える手段がない」状態だということです。逆に言えば、伝える部分さえ整えれば、伸びしろは大きい。味を作り直すよりも、ずっと現実的な打ち手だと考えています。

まず1商品から、小さく試す

真面目な会社ほど「やるなら全商品をきちんと」と考えがちですが、それが一歩目を重くしています。最初から全部を作り直す必要はありません。

一番自信のある1商品を選び、その価値を言葉にして、商品ページとSNSに出してみる。お客様の反応を見て、手応えがあれば次の商品へ広げる。この順番なら、新しく人を雇わなくても、今の人数で始められます。小さく試して、1つでも「これは良かった」という反応を得る。その積み重ねが、自社で売る力につながっていきます。

よくある質問

派手な宣伝はしたくないのですが、それでも大丈夫ですか。

派手にする必要はありません。事実を正しく、分かりやすく伝えることが基本です。食品では、盛らずに伝えるほうが信頼されます。

パソコンやネットが得意な社員がいません。

最初は作り手が商品について「話す」ところから始めます。文章を書くのが苦手でも問題ありません。整える工程を仕組み化すれば、ITに不慣れな会社でも続けられます。

AIを使うと、誇大表現や表示の間違いが心配です。

食品表示や効能に関わる表現は、必ず人の目で最終確認します。AIはあくまで言葉を整える役割で、事実かどうかの判断は人が担う。この線を守れば安全に使えます。

何から相談すればいいか分かりません。

「いい商品なのに売れない」という一言で十分です。商品を見せていただければ、どこから手をつけるべきかを一緒に整理します。

いい商品を作る力は、すでに持っている会社がほとんどです。あとは、その価値をお客様に伝える手段を整えるだけです。まずは1商品から、できるところを一緒に見直していきましょう。

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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