ダクラクの珈琲を、化粧品に|Cocoonが国産原料でコスメ市場に挑んだ道

ダクラクのコーヒー、ベンチェのザボン、カオバンのバラ。ベトナムの地名と農産物が並ぶと、つい飲食店の話かと思います。ところがこれらは、あるベトナム発ブランドの「化粧品」の主原料です。ブランド名は「Cocoon(コクーン)」。国産の農産物をスキンケアに変え、外資が強いコスメ市場で国産ブランドの存在感を一気に押し上げました。
Marouがカカオをチョコに変えたように、Cocoonは各地の農産物を「ブランド消費財」に変えています。同じ「原料を価値化する」でも、出口が食品ではなく化粧品という点が新しい。珈琲や農作物を現地から直接扱ううまみ企画の目線で、その組み立てを分解します。
Cocoonとは——ベトナムの農産物でつくるヴィーガンコスメ

Cocoonは2013年、ホーチミンの Nature Story 社が立ち上げたスキンケア・ヘアケアブランドです。特徴は3つ。ベトナム各地の植物原料を主役にすること、動物由来成分を使わないヴィーガン処方であること、そして動物実験を行わないこと。ブランド名の「繭(Cocoon)」には、蝶になる前のさなぎを育てる家のように、ベトナムの人の肌と髪を育てたい、という意味が込められています。現在は国内およそ2,000店舗(Guardian、Watsons、Hasaki、薬局チェーンなど)とEC、さらにマレーシアやシンガポールなど海外へも広がっています。
産地を、そのまま商品名にする
Cocoonの分かりやすい強みは、原料の「産地」を商品名に冠していることです。看板商品は、ダクラク産コーヒーを使ったボディスクラブ。ほかにも、ベンチェのザボンを使ったヘアケア(ベストセラー)、フンイエンのウコン、カオバンのダマスクローズ、ベンチェのココナッツなど、地域と農産物を紐づけて打ち出しています。ワインのテロワールに近い発想です。
| 産地 | 原料 | 主な用途 |
|---|---|---|
| ダクラク | コーヒー | ボディスクラブ(角質ケア) |
| ベンチェ | ザボン(ブオイ) | ヘアケア(育毛・抜け毛ケア) |
| ベンチェ | ココナッツ | リップ・保湿 |
| フンイエン | ウコン | シミ・トーンケア |
| カオバン | ダマスクローズ | 保湿・エイジングケア |
この見せ方には、二重の効果があります。ひとつは、消費者にとっての分かりやすさ。「どこの、何から作ったか」が名前で伝わるので、成分表を読まなくても物語が届きます。もうひとつは、国産であること自体が信頼と誇りの記号になること。輸入原料の効能を訴えるのではなく、「自分たちの土地の恵み」を売る——ここが、外資ブランドには真似しにくい立ち位置になりました。
「ベトナム初」を、信頼の土台にする
国産原料の物語だけでは、化粧品の信頼は勝ち取れません。Cocoonがもう一枚打ったのが、国際認証というカードでした。2020年にPETAとThe Vegan Societyの認証を取得し、同年11月には、動物実験フリーの「ゴールドスタンダード」とされる Leaping Bunny(Cruelty Free International)の承認を、ベトナムのコスメブランドとして初めて得ています。
ポイント:「一番乗り」は、それ自体が資産になる
「ベトナム初のヴィーガン&Leaping Bunny認証」という肩書きは、後発が同じ認証を取っても奪えません。国産=安かろう悪かろうと見られがちな市場で、国際規格の第三者認証を先に押さえたことが、「国産でも信頼できる」という評価を一社で引き上げました。物語(国産原料)と、証明(国際認証)。この二枚が揃って、ブランドの土台になっています。
外資だらけの市場で、国産で戦う
ベトナムのコスメ市場は、韓国・日本・欧米ブランドが強く、2024年時点でおよそ25億米ドル規模とされます。その中でCocoonは、国産・自然派・手の届く価格という帯に的を絞り、ラッパーのSuboi起用などZ世代向けの発信で存在感を高めました。使用済み電池や空きボトルの回収といった環境・社会の取り組みも、ブランドの姿勢として前面に出しています。
結果は数字に表れました。民間調査(Vietdata)によれば、売上は2020年の約130億ドンから2022年には約1,840億ドン(およそ11億円)へと、2年で十数倍に伸びています。ここ数年はECの伸びも大きく、マレーシアではガーディアンの500店舗で展開するなど、海外への広がりも始まっています。
影の部分——模倣品と「国産」の証明
順調な成長には、影もあります。人気が出たぶん、ECモールでは模倣品・偽造品が出回り、ブランドの信頼と消費者の安全を脅かしています。Cocoonは正規の販売チャネルを明示して対抗していますが、これは国産ヒットブランドの宿命ともいえる課題です。
もう一つ、「国産」の見せ方には慎重さも要ります。Cocoonは主要な植物原料にベトナム各地の農産物を使っていますが、全原料が100%国産だと一次情報で裏づけるのは簡単ではありません。国産ストーリーは強力な武器である一方、どこまでを「国産」と言うかは、景品表示のうえでも丁寧に設計する必要があります。
Cocoonが教える、原料の「別の出口」
Cocoonの一手は、「地域の一次産品を、産地の物語ごとブランド消費財に変える」ことです。ダクラクのコーヒーは、飲み物としてだけでなく、スクラブという別の出口を持てる。自分の扱う原料に、食品以外の出口はないか——この問いは、そのままベトナムの農産物を扱う事業の可能性を広げます。
そしてもう一つが、「証明を先に押さえる」発想です。国産・自然派をうたうほど、第三者の認証や検査という裏づけが効きます。物語だけでなく、証明をどう用意するかをセットで考える。うまみ企画は、珈琲・農作物の現地直結取引(UMAMI ORIGIN)を通じて、「この原料を、どんな出口の、どんな商品に変えられるか」を、産地の目線から一緒に考えています。
よくある質問

Cocoonの強みを一言でいうと何ですか?
ベトナム各地の農産物を産地ごと商品化した「国産の物語」と、ベトナム初のヴィーガン・Leaping Bunny認証という「国際的な証明」を、両輪で組み合わせたことです。国産=安価と見られがちな市場で、信頼できる国産ブランドという新しい立ち位置を作りました。
ベトナムの農産物を、食品以外に活かせますか?
活かせます。Cocoonはコーヒーやココナッツを化粧品に、ザボンをヘアケアに転じました。珈琲・カシューナッツ・ドライフルーツ・ハーブなど、ベトナムの一次産品には食品以外の出口(コスメ、雑貨、ギフト等)を持てるものが数多くあります。原料の特性から出口を逆算するのが第一歩です。
「国産」を打ち出すとき、注意点はありますか?
どこまでを「国産」と言えるかを、原料単位で確認しておくことです。主要原料が国産でも、全成分が国産とは限りません。産地ストーリーは強い武器ですが、表示の根拠を丁寧に整えておかないと、後で信頼を損ないます。認証や検査など、第三者の裏づけをあわせて用意すると安全です。
その商品の価値、お客様に伝わっていますか?
「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。
