ベトナムの食品スーパーを調べてみた。小魚250グラム、今日の献立、3キロ圏内の宅配

ベトナム生活図鑑 第20回|確認日:2026年9月29日。商品価格は確認時のオンライン表示で、店舗・配送先・販売時期によって変わります。
魚売り場に並ぶのは、切り身のサーモンだけではない。丸ごとのティラピア、下処理した雷魚、小さな淡水魚を詰めた250グラムのパック。冷蔵庫に入れる前の魚の姿を想像すると、ベトナムの食品スーパーで何が売られているのかが、少し具体的になる。
食品や日用品を扱うBách Hóa Xanh(バックホアサイン)と、WinMart・WinMart+。各社の売り場をオンラインでたどると、生鮮食品の品ぞろえに加え、夕食の献立、近隣への配送、会員ポイントまで見えてくる。大型店の買い物だけでなく、住宅地で日々使う店の話でもある。
今回は買い物をする人の調査を入口に、チェーンの規模、魚や米の売り方、家庭料理の材料、注文後に届く場所までを追っていく。企業の店舗網と、消費者が実際に店を選ぶ理由を重ねると、食品スーパーが日々の食事に入る場面が見えてくる。
食品選びでは価格、店選びでは近さが重い
PwCが2025年10月に公表した消費者調査のベトナム回答者は517人。食品選びで価格を主要な判断要素とした人は47%、買い足す前に冷蔵庫や戸棚の食材を使い切ることを優先した人は57%だった。同時に、超加工食品や農薬に強い懸念を示す回答は74%ある。安さだけに関心があるのではなく、予算と品質の両方を気にしている。
ただし回答者の66%は大都市居住者で、全国の世帯構成をそのまま再現した統計ではない。同調査では店頭とオンラインの併用も示される。実物を見て買う日と、食品を取り寄せる日を、同じ買い手が使い分ける状況を扱っている。PwCの調査結果・回答者属性
店の選び方には街の違いもある。Q&Meが公開する、ハノイとホーチミンの20〜49歳200人を対象とする調査では、店舗選択の最大の要因は近さで、価格や品ぞろえなどが続いた。スーパーへの来店は全体ではWinMartが先行する一方、ホーチミンではCo.opmartが強い。小型店でも全体のWinMart+に対し、ホーチミンではBách Hóa Xanhが目立つという。公開概要に調査実施日はなく、これは二都市の回答者の利用状況であって、各社の現在の全国売上シェアではない。Q&Meの小売店利用調査
WinCommerceは2025年に売上38兆ドン超。出店先は都市部だけではない
WinMart・WinMart+を展開するWinCommerceについて、親会社Masanが発表した2025年の売上高は38兆9,790億ドン。前年から18.3%増え、年末の店舗数は4,592店、年間の純増は764店だった。2026年1月公表の経営陣による未監査の数値であり、ベトナムの食品小売市場全体の金額ではない。Masanの2025年通期発表
発表では、新店の約8割を農村型の小型店が占めたという。ホーチミンやハノイのマンション街にある店だけを思い浮かべていると、網の広がりを捉えきれない。
2026年6月18日には、北部山間地域のメオヴァックで店舗網全体として5,000店目となるWinMart+の開業を発表している。同年1〜5月に純増した464店のうち、374店が農村部。大都市から離れた地域にも出店が進んでいたことが、個別の地名とともに分かる。5,000店到達の発表
一方、Bách Hóa Xanhの公式サイトは、2026年9月29日の確認時点で店舗案内へのリンクに3,893店と表示していた。こちらはサイト上のネットワーク表示で、同じ決算期の数字ではない。店舗検索でホーチミンが選択された画面には1,098店と出るため、この地域別の数字を全国店舗数と取り違えないようにしたい。Bách Hóa Xanhの店舗検索
「市場から250メートル」が店の場所を教えてくれる
店舗一覧では、番地と通りの名前だけでなく、近所の市場や交差点が目印になる。たとえばGò Xoài通り201番地の店には、Ấp Chiến Lược市場から250メートルという案内がある。Ao Đôi通り29番地の店は、Ao ĐôiとMã Lòの交差点から200メートル。Duong18Bの店には、交差点から100メートルという補足が付く。
地図のピンだけではなく、既に知っている市場や曲がり角から店を探すための情報だ。別の店舗では学校の隣という説明もあり、店舗一覧そのものから、学校、市場、住宅街の通りとスーパーの距離が見える。住所欄には「Địa chỉ cũ(旧住所)」も併記されている。Gò Xoàiの店なら旧住所のBình Hưng Hòa A、Bình Tânという地名まで残り、新しい住所と以前から使っていた呼び方の両方で場所を確かめられる。
同社は店の案内で無料駐車にも触れ、会社紹介から各店のZaloグループへも誘導している。全国共通のウェブサイトやアプリだけで買い物が完結するのではなく、近くの店につながる窓口も用意されている。会社紹介と買い物の窓口
小魚、雷魚、バサの胃袋。魚売り場の単位を読む
Bách Hóa Xanhでは、Cá linh nonという小さな淡水魚を250グラムのパックで販売していた。2026年9月29日、配送先を指定せずに開いた商品ページの表示価格は4万9,000ドン。大きな魚を一匹買う商品とは異なり、小魚を一定量まとめた売り方である。Cá linh non 250gの商品ページ
関連する売り場には、Cá diêu hồngと呼ばれる赤いティラピアの下処理済み商品が650グラム、Cá lócと呼ばれる雷魚の商品が400グラムで並ぶ。魚の種類だけでなく、商品名に付く「làm sạch」が、きれいに処理した状態であることを伝えている。
バサは輪切りの500グラム商品だけでなく、胃袋を詰めた250グラムの商品もあった。切り身、頭、内臓を別々の商品として選べるため、「魚を買う」という一言でも、持ち帰ってからの料理はかなり違ってくる。サーモンにも身とは別に頭の商品があり、売り場は刺身用のきれいな切り身だけで構成されているわけではない。
こうした商品は、容量を見ながら選べる一方、配送先の指定前後で在庫や価格が変わることもある。魚の商品ページには、在庫が変わった場合は配送前に連絡する旨が記載されていた。オンラインの棚に写真があることと、その日の近隣店舗から必ず届くことは同じではない。
「今日何を食べる?」から食材をカートに入れる
同社サイトの入口には「HÔM NAY ĂN GÌ?」、直訳すると「今日は何を食べる?」という献立のコーナーがある。主菜、炒め物・ゆで物、汁物、野菜、果物・デザート、家での食事会といった分け方で、商品カテゴリーとは別の入口になっている。Bách Hóa Xanhのオンライン売り場
登場する料理は、魚醤で味付けして揚げる鶏もも肉、レモングラスと唐辛子で炒めるアヒル肉など。豚肉、鶏肉、魚という素材から探すのではなく、「この料理を作る」ところから必要なものを選べる。
トマトソースで煮る肉団子にも、うずら卵を肉で包んだ料理にも、ひき肉が登場する。肉詰め豆腐をトマトソースで煮る料理まで並ぶため、同じひき肉を買っても、形や合わせる材料を変えた献立が見えてくる。Pepsiを使ったスペアリブも紹介されており、飲料が調理材料に回るレシピもある。
同社の機能紹介では、「Mua nguyên liệu(材料を買う)」を押すと、主な材料と調味料が表示され、必要なものを選んでカートに加えられると説明している。料理の動画や記事も同じ流れで見られる。献立と材料購入機能の案内
これは、調理済みの一皿が届く仕組みでも、必ず全材料が小分けされたミールキットでもない。家に魚醤や油があれば、それを外して肉や野菜だけを買う余地がある。食材の売り場と料理の作り方がつながり、献立に迷う時間と買い物の時間が同じ画面の中に置かれている。
米は3キロ、牛乳は4本組。WinMartの棚を開く
WinMartのオンライン売り場では、VinaseedのST25米が3キログラムの袋で販売されていた。2026年9月29日の表示は7万9,900ドンで、比較対象の通常表示価格は11万9,900ドン。大袋の米だけでなく、家庭で持ち帰る量を3キロ単位で選べる。WinMartのオンライン売り場
調味料では、Meizanの豚肉風味の顆粒調味料が1キログラムで3万9,000ドン、大豆油GREEN ACEは2リットルで8万9,900ドンという割引表示だった。小袋を一つずつ買うだけでなく、調味料や油を容量の大きい単位で買い足す棚もある。これらは住所を入力せずに開いた画面の例で、全国の店頭価格をそろえた表ではない。
加工食品では、BOONG-JOOのチーズ入り豆腐250グラムが6万9,900ドンで、1袋買うと同じ商品が1袋付く表示だった。同ブランドのチーズスティック300グラムにも同じ形式の販促がある。「Đậu hũ(豆腐)」という商品名でも、こちらはチーズを組み合わせた加工品として並んでいる。
牛乳はNutimilk100の低糖タイプ180ミリリットルが4本で1組になり、1組3万7,500ドン。「3組買うと1組付く」という条件なので、3本買うと1本付く話ではなく、4本組を三つ買って、さらに4本組を一つ受け取る。小さな紙パックでも、販促が成立する単位まで読むと、家に届く本数は16本になる。
Thuận Phátのマグロ・アワビを商品名に掲げる魚醤490ミリリットルには、1本6万2,800ドン、1本買えば2本目を2,000ドンで買えるという表示もあった。こちらは2本目が無料ではない。割引率だけを読むより、同じ品物が何個付き、何個分を支払う条件なのかを見る方が、持ち帰る量と代金の両方を想像しやすい。
農場の野菜と、0〜4度で扱う豚肉
WinMartの生鮮売り場を支えるブランドの一つがWinEcoだ。同社は更新日の記載がない自社紹介で12農場、合計3,000ヘクタール超の農場面積を掲げ、野菜、キノコ、果物を扱っている。灌漑の自動化や土壌水分のセンサーなど、畑での管理方法も説明している。WinEcoの農場と商品
この農場数と面積は生産側の自社紹介値だ。WinCommerceの小売店舗数とは集計対象が異なる。農場の名前で食品の出どころを示すWinEcoと、各地域で商品を販売するWinMartの網を分けて見る必要がある。
肉ではMEATDeliが、工場から購入者に届くまで豚肉を0〜4度で管理すると説明している。店に並ぶのは肉の塊だけではなく、部位や調理への近さによって分かれた商品だ。MEATDeliの商品紹介
たとえば「Giò heo cắt khoanh」は豚の脚を輪切りにした商品。肉を買ってから家で骨ごと切るのではなく、既に切られた状態から調理を始められる。別の商品には下味付きの肉団子もあり、商品説明ではコリアンダーの種を使うことが紹介されている。トマトソース煮、ブンチャー用、揚げ焼きと調理例も挙げている。下味付き肉団子の商品説明
この肉団子の販売ページでは、重量と代金は仮の表示で、配送前に担当者が実重量を確認すると案内する。商品名は450グラム、説明欄は360〜380グラムと食い違っているため、ここでは確定の容量を示せない。生鮮品の注文は、画面の数字だけでなく、実際に用意された重量の確認を挟む場合がある。
同ブランドの料理コーナーには、酸味のある葉を使う鶏のスープ、レモングラスで煮る鶏肉、ショウガで炒める鶏肉などが掲載されている。味付け前の部位、下味付き商品、家庭料理のレシピが、それぞれ別の調理の手間を受け持っている。MEATDeliの料理コーナー
60分か、4時間か、翌日か。Bách Hóa Xanhの配送を選ぶ
Bách Hóa Xanhの配送案内には、すぐに受け取る配送、60分枠、4時間枠、24時間以内の節約配送がある。2025年9月22日からの基本料金として、3キロ以内では順に1万5,000、1万5,000、9,000、5,000ドンと記載されている。そこから距離や商品、無料条件が重なる仕組みだ。配送時間と料金の公式案内
3キロを超える部分には1キロ当たり4,000ドンが加わる。即時配送は5キロ未満、40キログラム以下、最大12商品という制限がある。急いで少量を頼む場合と、まとめ買いをゆっくり待つ場合で、使える枠が同じではない。
同じページには、15万ドン以上・20キログラム未満で配送料を下げる特典や、30万ドン以上・3キロ以内で4時間・24時間枠を無料にする特典も載る。ただし特典には年を示さない「10月15日から」という注記があり、確認日現在の全注文に使えるとは断定できない。条件の金額は値引き後の商品代金で、配送料を足して条件額にすることはできない。
さらにビールは1ケース当たり3,000ドン、重量の大きい注文は追加の20キログラムごとに5,000ドンという加算も記載されている。重量加算が始まる基準はこの記載だけでは明確でないため、注文全体の送料をここから一律には計算できない。米や飲料を一度に頼む買い物では、商品代金だけでなく重さが配送料に関わる。
届いた品に問題がある場合の期限も、食品によって異なる。同じ案内では、輸送中の破損、虫や微生物による異常、期限切れなどについて、冷蔵の乳製品や冷凍・冷蔵加工品、アイスクリームは24時間、野菜・果物・生鮮の肉や魚は48時間、米は30日以内の交換を案内している。好みが変わったら何でも交換できる制度ではなく、商品の状態と食品の区分を分けて受付条件を設けている。
WinMartは建物の足元で受け取る案内もある
WinMartの公式配送規定では、30万ドン以上の注文を5キロ以内で無料配送し、30万ドン未満は1キロ当たり5,000ドン。5キロを超える距離には追加料金がかかり、配送対象は7キロ以内としている。近所の店舗から届ける範囲を、距離で区切ったサービスだ。WinMartの配送規定
注文確認後2時間以内という案内があり、注文の確認が18時を過ぎた場合は翌日の正午までに受け取る扱いになっている。基準は商品をカートに入れた時刻ではなく、注文が確認された時刻だ。夜に食材を選んだからといって、必ずその日の夕食前に来るわけではない。
高層住宅や出入りに制限のあるオフィスなどでは、建物の足元まで届けると明記している。高層階の部屋の前まで運ばれる前提ではなく、建物の下で受け取ることを想定した案内だ。米や飲料を頼むときには、そこから室内まで運ぶ場面も残る。
受け取り時には、外側の包装や封印、伝票の商品一覧を確認するよう求めている。中身の封印を開けて検査することとは区別され、確認後は伝票に署名し、控えを手元に残す流れだ。連絡が取れなければ受け取り時刻の再調整も必要になる。建物の入口で電話に応じ、荷物と伝票を見て受け取るところまでが、公式に示された配送の手順である。
ポイントは1ドン単位、贈り物には買い物券
Bách Hóa Xanhが公式サイトから案内している会員制度は、Quà Tặng VIPのアプリと結び付いている。2022年11月に始まった制度の公開案内では、食品・日用消費財や生鮮品について、割引後の購入額の1%をポイント化する仕組みを説明している。会員ポイントの案内
1ポイントは1ドンとして使え、通常は税込み購入額の10%までをポイントで支払える。購入額の全額がそのままポイント払いになる制度ではない。酒、たばこ、母乳代替食品、人用医薬品は付与・利用の対象外として挙げられている。また、法人取引や従業員割引の買い物などにも除外条件があり、会員であればすべての会計が同じ扱いになるわけではない。
Masan側にもWinXの会員基盤があり、2026年4月の株主総会発表では登録会員1,500万人を掲げている。これは登録の規模であって、毎月全員が買い物をしていることを示す数字ではない。Masanの2026年株主総会発表
食料品を贈りたい場合には、商品そのものではなく買い物券という選択肢もある。Bách Hóa Xanhの購入案内では、取引先、顧客、友人、家族などへの贈り物として紹介し、有効期間は12カ月、複数枚を同じ買い物にまとめて使えるとしている。買い物券の公式案内
この券は食品スーパーだけでなく、同じグループの携帯電話販売店Thế Giới Di Động、家電店Điện Máy Xanh、薬局An Khangでも利用できる。販促商品の購入にも使える一方、予約商品や在庫処分品など一部の商品は対象外とされる。渡す側が米や魚を選び切るのではなく、受け取った人が食品、日用品、別の買い物へと使い道を決める。生鮮食品の棚から始まった買い物が、家族や知人へ手渡す一枚の券にもつながっている。
