開業資金の平均975万円は当てにならない。中央値は600万円

日本政策金融公庫の2025年度新規開業実態調査によると、開業費用の平均値は975万円、中央値は600万円でした。同じ調査の同じ項目で、375万円の開きがあります。
資金計画を平均値で立てると、実際より多く見積もることになります。逆に「みんな1,000万円くらい用意している」と思い込んで開業をあきらめる理由にもなります。どちらも数字の読み方を間違えた結果です。
- 調査の対象/日本公庫国民生活事業が融資した開業1年以内の企業8,517社。回答は2,165社(回収率25.4%)
- 入っていない人/自己資金だけで始めた人、他の金融機関だけを使った人、融資の審査を通らなかった人、すでに廃業した人
- 読み方/「日本の開業者全体」ではなく「公庫から借りて開業した人」の姿
この前提は以下すべての数字にかかります。開業者一般の水準として引き写さないでください。
平均975万円と中央値600万円が離れる理由

この調査は、日本公庫国民生活事業が2024年4月から9月に融資した企業のうち、融資時点で開業後1年以内の8,517社を対象に2025年8月に実施したものです。回収数は2,165社(回収率25.4%)でした。
実際の開業費用の分布
| 開業費用 | 割合 |
|---|---|
| 250万円未満 | 20.1% |
| 250万〜500万円未満 | 21.7% |
| 500万円未満の合計 | 41.8% |
この調査の回答者では、4割超が500万円未満で開業しています。平均値の975万円は一部の高額な開業に引き上げられた数字で、中央値の600万円のほうが回答者の中心に近い値です。平均と中央値のどちらを使うかで、計画の前提が375万円ずれます。
開業費用は長期的に少額化している
- 1991年の平均値は1,440万円、中央値は970万円
- 2025年の平均値は975万円、中央値は600万円
- 「1,000万〜2,000万円未満」「2,000万円以上」の割合は長期的に低下している
34年で平均は465万円、中央値は370万円下がりました。設備を持たずに始められる業態が増えたことと、初期投資を抑えて始める選択が一般的になったことの両方が効いています。
開業資金はどこから調達されているか
費用の総額よりも、その内訳のほうが計画には効きます。
調達先の内訳
- 金融機関等からの借り入れ/平均827万円。平均調達額に占める割合は67.9%
- 自己資金/平均279万円
- この2つで調達額の約9割を占める
調達額の7割近くが借り入れです。ただしこの比率は、回答者が全員「公庫から融資を受けた人」であることの反映でもあります。この数字から、開業一般に必要な自己資金の割合を導くことはできません。自己資金だけで開業した人はそもそもこの調査に入っていないためです。読み取れるのは、融資を使って開業する場合の実際の構成比までです。
開業時に苦労したこと
| 項目 | 開業時 | 現在 |
|---|---|---|
| 資金繰り、資金調達 | 56.9% | 36.2% |
| 顧客・販路の開拓 | 49.9% | 48.8% |
| 財務・税務・法務に関する知識の不足 | 36.4% | — |
資金の悩みは開業時の56.9%から現在36.2%へ下がる一方、顧客・販路の開拓は49.9%から48.8%とほとんど下がりません。開業前に一番心配するのはお金ですが、続けるうえで長く残るのは売り先の問題です。取引先が特定の1社に寄ると価格の決定権を失うため、開拓は数だけでなく構成の問題でもあります(1〜4人の事業所が46.1%)。
開業したあと、実際どうなっているか
同じ調査には、開業から平均15.5か月が経過した時点の状況も載っています。
採算と売上の状況

- 現在の採算が黒字基調/67.0%(赤字基調は33.0%)
- 売上が増加傾向/60.1%
- 予想月商達成率が100%以上/約6割。裏を返せば約4割が想定に届いていない
- 現在の月商が100万円未満/39.5%、100万〜500万円未満/44.2%
回答した企業の3社に2社が黒字基調と答えています。ただしこれは調査に回答した2,165社の自己申告で、回収率は25.4%です。回答しなかった企業やすでに廃業した企業は含まれないため、開業者全体の黒字率や生存率とは別のものです。月商100万円未満が約4割を占めている点とあわせて読む必要があります。
誰が、何人で始めているか
- 開業時の従業者数は「1人」が42.6%で最多。平均2.8人(経営者本人を含む)
- 開業時の平均年齢は43.9歳で調査開始以来もっとも高い。40歳代36.9%、30歳代28.0%
- 開業時の経営形態は個人企業57.0%、法人企業43.0%
それぞれの項目で最も多いのは、従業者1人・40歳代・個人企業です。ただしこれは項目ごとに別々に集計した値で、3つを同時に満たす人が最多とは限りません(クロス集計は公表されていません)。確かなのは、29歳以下が7.0%しかおらず、平均年齢が調査開始以来最高だということです。若いうちに始めなければ遅い、という前提は、この数字とは合いません。なお業種によって必要な初期投資も利益の水準も変わります(食料品製造の経常利益率は5.5%)。
資金計画で確かめる3つ
- 平均ではなく中央値と分布で見る/自分の業態が250万円未満の層なのか1,000万円超の層なのかで、必要額はまったく違う
- 開業費用と運転資金を分ける/設備にいくらかかるかと、売上が立つまで何か月食いつなぐかは別の計算
- 資金繰りが何か月先まで見えるかを先に決める/開業時に苦労したことの1位が資金繰り。着地点ではなく見通しの長さで設計する
開業後、自分の事業がどの段階にいて次に何で詰まるかは、経営フェーズ診断で確認できます。資金繰りの見通しや取引先の集中度も4段階で判定しています。
よくある質問
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まとめ
- 開業費用は平均975万円、中央値600万円。500万円未満で開業した人が41.8%を占める
- 1991年の平均1,440万円・中央値970万円から、34年かけて少額化している
- 調達は金融機関等からの借り入れが平均827万円(調達額の67.9%)、自己資金は平均279万円
- 開業から平均15.5か月時点で黒字基調は67.0%(回答2,165社の自己申告・回収率25.4%)。ただし月商100万円未満が39.5%
- 開業時の従業者数は1人が42.6%、平均年齢は43.9歳で調査開始以来最高
開業したあとの利益率の水準は資本金1,000万円未満の利益率は2.8%、法人全体の赤字の割合は日本の法人の6割は赤字で書いています。
