食品・原料のデジタルマーケティング、何から始めるかの地図

「デジタルマーケティングは、消費者向けの商売の話でしょう」。食品原料や素材を扱うメーカー・商社の方から、よくこう言われます。相手は企業で、取引は営業と付き合いで決まる。だからWebは関係ない——。かつてはそうでした。
ですが今は、その相手企業の担当者自身が、まず検索で情報を集めます。原料を探すのも、素材を比較するのも、最初の一歩はWebやBtoBの製品データベースです。ここで見つからない会社は、候補にすら入りません。BtoBの食品・原料でこそ、デジタルマーケティングが効く時代になっています。
この記事では、食品・原料のメーカーや商社がデジタルマーケティングを始めるとき、何から手をつければいいのかの地図を示します。
なぜ食品・原料のBtoBでもデジタルマーケティングなのか

理由はシンプルで、買い手の行動が変わったからです。以前は、展示会で名刺を交換し、営業が訪問し、付き合いの中で取引が決まりました。今もその流れは残っていますが、その手前に「まず自分で調べる」という工程が挟まるようになりました。
開発担当が新しい原料を探すとき、購買担当がコストを見直すとき、彼らはまず検索し、イプロスやMetoree、AperzaといったBtoBの製品データベースで候補を比較します。そこで見つけた数社に問い合わせ、資料を取り寄せる。つまり、営業が接触する前に、候補に入るかどうかがWeb上で決まっているのです。
| 買い手の動き | これまで | 今 |
|---|---|---|
| 最初の一歩 | 展示会・紹介・営業訪問 | 検索・BtoB製品データベース |
| 候補に入る条件 | 接点があったか | 調べたときに出てくるか |
| 営業の役割 | 入口から出口まで | 候補に入った後の商談 |
営業が不要になったわけではありません。営業が力を発揮する前の「候補に入る」段階を、Webが担うようになった。ここを放置すると、良い原料を持っていても土俵に上がれません。
食品BtoBデジタルマーケティングの全体像
デジタルマーケティングと一口に言っても、やることは分かれています。食品・原料のBtoBで効く順に整理すると、次のようになります。
| やること | 役割 | 効き方 |
|---|---|---|
| 検索対策(SEO)・用途記事 | 課題の言葉で探している担当者に見つかる | じっくり育つが、育つと自動で入口になる |
| 製品・用途ページ | 検索やデータベースから来た人を問い合わせに変える受け皿 | 来た人を行動に変える |
| 技術資料・ホワイトペーパー | 規格書・アプリケーションデータ・試作事例をダウンロードさせる | 関心の高い相手を名簿として拾える |
| メール・継続接触 | 検討中の相手を追い続ける | 長い検討期間を埋める |
この4つは、検索で見つけ、ページで関心を確かめ、資料で名簿を拾い、メールで追う、という一つの流れになっています。バラバラにやっても効きません。入口から商談までを一本の線でつなぐことが、全体を機能させる鍵です。特に食品原料では、技術資料やアプリケーションデータのダウンロードが、発注検討層を名簿として拾う定石になっています。
その原料の価値、開発担当に伝わっていますか?
「原料はいいのに、提案が通らない・取引が広がらない」——その原因の整理からお手伝いしています。原料を売る側も経験した私たちが、用途提案や販路の組み立てを一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。
「原料・素材」ならではの勝ち筋
食品原料や素材を扱う会社には、消費者向けの商売にはない強い武器があります。それは「用途の知見」と「技術・品質の裏づけ」です。この2つは、Webと相性がとても良い。
開発担当が検索するのは、原料名だけではありません。「この課題を解ける素材はないか」「この原料で何が作れるか」という、用途や課題の言葉で調べます。営業が普段口頭でやっている用途提案を、そのまま記事やページにしておけば、その言葉で探している相手にちょうど届きます。原料名では知られていなくても、用途で見つけてもらえる。ニッチな原料ほど、これが効きます。
もう一つが、規格書や試験成績書、アプリケーションデータといった技術情報です。BtoBの原料選びは合理で決まり、特に品質保証部門は書類の裏づけがないと承認を出せません。これらの根拠を、問い合わせの前にWebやPDFで見える形にしておくこと自体が、そのまま信頼になり、他社との差になります。消費者向けのような雰囲気づくりは要りません。事実を、探している相手に分かる形で置くだけです。
発信が、そのまま引き合いを連れてくる
Webの発信は、記事や製品ページだけではありません。コンテンツそのものが接点を広げることもあります。
Agritureグループでは、京都産乾燥野菜のD2Cブランド「OYAOYA」を運営し、同時に業務用原料の卸も手がけています。たとえば親会社・貝印のオンライン料理教室「Chefon」と組み、乾燥野菜を使ったレシピ動画を制作したことがあります。狙いは販促でしたが、そこで実感したのは、「この素材でこんな料理・こんな商品が作れる」という用途の見せ方こそが、素材そのものへの関心を引き出すということでした。商品を売る側でも、原料を卸す側でも、この『用途で見せる』ことに手をかけるほど、問い合わせの入口が広がっていく手応えは共通していました。
その経験をもとに、うまみ企画では食品・原料メーカー向けのデジタルマーケティング支援を行っています。検索で見つかる記事やページの制作、用途提案のWeb化、技術資料の整備、問い合わせ導線の設計まで、Webでの集客が得意でない会社のマーケティングを一緒に組み立てる仕事です。専門用語で丸投げにせず、現場の言葉から一緒に作るところを大事にしています。デジタルマーケティングを含め、原料商社に必要な打ち手の全体像は原料商社のマーケティングの全体像の記事で整理しています。
その原料の価値、開発担当に伝わっていますか?
「原料はいいのに、提案が通らない・取引が広がらない」——その原因の整理からお手伝いしています。原料を売る側も経験した私たちが、用途提案や販路の組み立てを一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。
陥りがちな失敗

始めてはみたものの成果につながらない会社には、共通した失敗があります。
- サイトが会社案内で止まっている:沿革と取扱一覧を並べただけで、用途や課題を解く言葉が入っていない。検索エンジンは何のページか判断できず、そもそも検索結果に上がってこない。
- 資料の受け皿がない:技術資料やアプリケーションデータを置いていないため、関心を持った相手が名刺を残す入口がなく、そのまま去っていく。
- 更新が止まっている:数年前に作ったまま放置され、情報が古い。担当者に「動いていない会社」と見られてしまう。
どれも、大がかりなサイトを作れば解決する話ではありません。むしろ、課題を解けると分かるページを一枚足す、規格書やアプリケーションデータのダウンロードを一つ置く、といった小さな修正で改善することがほとんどです。作り込みより、探している相手に届く形になっているかが先です。
まず、一枚のページから始める
デジタルマーケティングと聞くと、サイト全体を作り直す大仕事に思えて、身構えてしまいます。ですが、最初から全部をやる必要はありません。
まずは主力の原料や商品を一つ選び、「それで何が解けるか・何が作れるか」を一枚のページにして、規格書などの資料と問い合わせの導線をつける。それを検索で見つけてもらえる形にする。ここから始めれば、今の体制のまま、小さく試せます。一件でも問い合わせが入れば、次のページ、次の導線へ広げていく。この積み重ねが、営業が動く前に候補に入っている会社をつくります。
よくある質問
- うちの原料は取引先が限られていて、検索で探す人がいるとは思えません。
-
今の取引先が少ないほど、新しい入口を用意する価値は大きくなります。検索するのは、まだ取引のない開発担当です。彼らが使う「作りたい商品」「置き換えたい素材」といった言葉でページを用意しておけば、これまで接点のなかった層に届きます。取引先が限られている現状こそ、Webで裾野を広げる理由になります。
- イプロスなどのBtoBデータベースと、自社サイトはどちらを優先すべきですか。
-
役割が違うので、両方を組み合わせるのが理想です。データベースは製品を探す担当者が集まる場で、認知を広げるのに向きます。自社サイトは、そこで興味を持った相手が詳しく調べにくる受け皿です。まずは自社サイトに用途ページと資料の受け皿を整え、そこへデータベースから流す形にすると、費用が無駄になりません。
- Webに詳しい社員がいなくても始められますか。
-
始められます。中身を決めるのは、原料や商品を一番よく知っている社内の方です。それをWebで探している相手に届く形に整える部分を、私たちのような外部が担う。役割を分ければ、Webに不慣れな会社でも続けられます。
- 何から相談すればいいか分かりません。
-
「Webから問い合わせが来ない」「候補に入れているか不安」という一言で十分です。今のサイトと取引の流れを見せていただければ、どこから手をつけると効くかを一緒に整理します。
良い原料や商品を持っている会社ほど、Webの導線を整えたときの伸びしろは大きく残っています。今あるサイトの1ページに、課題を解けると分かる説明と、資料・問い合わせ導線を1本足す——そこから始めれば十分です。
自社のWebが今どこでつまずいているのか、何から手をつけると効くのかを整理したい場合は、無料診断をご利用ください。代表が直接、現状と次の一手を一緒に確認します。
