卸に頼る食品メーカーが、販路を自分で広げる3つの道

卸に頼る食品メーカーが、販路を自分で広げる3つの道の要点を整理した図

「卸に頼ってきたが、そこからの数字が伸びない。自分たちで販路を広げたい」。食品メーカーの経営者や営業の方から、こういう相談をよく受けます。

良い商品を作っていれば、あとは卸や問屋が売り先を広げてくれる。長くそういう時代がありました。ですが、その流れは細くなっています。この記事では、食品メーカーが卸だのみから抜け出し、自分の手で販路を広げるための道筋を、具体的に整理します。

販路拡大というと「営業を増やす」「展示会に出る」といった話になりがちですが、順番が大事です。まず今の販路がなぜ細るのかを押さえ、そのうえで広げ方を選ぶ。この順で見ていきます。

目次

卸だのみの販路が、細くなっている理由

卸に頼る食品メーカーが、販路を自分で広げる3つの道で押さえる3つの視点

卸や問屋を通した販路は、今も重要です。ただ、そこに頼りきると弱くなる理由があります。卸を通すと、最終的にどんなお客様が買っているのかが見えにくく、価格の主導権も取引先に握られやすい。棚に置いてもらえるかどうかも、相手の判断次第です。

観点卸・問屋だのみ自分でも販路を持つ
お客様の顔見えにくい反応が直接わかる
価格の主導権取引先に握られやすい自社で値づけしやすい
新規の入口相手の判断に依存検索・紹介・提案から自分で作れる

ここで大事なのは、卸をやめる必要はない、ということです。卸という太い管に、自分でコントロールできる細い管を何本か足していく。それが販路拡大の考え方です。

販路を広げる、3つの道

自分で広げられる販路は、大きく3つに分かれます。どれも今の商品のまま始められます。

  • 直販(D2C)を持つ:自社サイトやECで、消費者や事業者に直接売る。お客様の顔が見え、価格も自社で決められる。反応を次の商品づくりに回せるのも強み。
  • 新しいチャネルを開く:これまで売ってこなかった場所に、同じ商品を届ける。売り先の”種類”を増やす動き。後述するオフィス向けなどが好例。
  • 既存取引を深掘りする:今の取引先に、別の商品や別の用途を提案する。新規開拓より確度が高く、すぐ効く。

3つを同時にやる必要はありません。自社の商品と体力に合うものを一つ選び、そこを深くやるのが結局は近道です。

直販は、自社ECとモール、どちらから始めるか

3つの道のうち、多くのメーカーが最初に検討するのが直販(D2C)です。ここで最初に迷うのが、自社のECサイトを作るか、Amazonや楽天などのモールに出すか、です。どちらが正解ということはなく、目的によって向き不向きがあります。

観点自社ECモール(Amazon・楽天など)
集客自分で呼び込む必要があるもともと人が集まっている
手数料決済手数料が中心(カート利用の月額がかかる場合も)販売手数料・広告費がかかる
お客様の情報自社に貯まり、次に活かせるモールによる(Amazonは残りにくく、楽天は店舗が受け取れる)
ブランドの伝え方自由に作り込めるフォーマットに縛られる

おおまかには、まず売れるかを試したいならモール、お客様と長く関係を作りブランドを育てたいなら自社EC、という選び分けになります。多いのは、モールで反応を確かめてから自社ECに軸足を移す、あるいは両方を役割で使い分ける形です。いずれにせよ、最初から完璧な品揃えは不要で、売れ筋の一商品から始めれば、今の人数でも回せます。

その商品の価値、お客様に伝わっていますか?

「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。

「売り先を増やす」前に、「売れる形」を整える

販路を広げようとして最初につまずくのが、この順番です。売り先だけ増やしても、その商品が「なぜ選ばれるのか」が伝わる形になっていないと、置いてもらっても動きません。

多くの食品メーカーは、味や品質では負けていません。差がつくのは、その価値が言葉になっているかどうかです。「三日かけて炊いている」「機械を使わず手で選別している」といった、社内では当たり前のことが、お客様には伝わっていない。まずこれを言葉にするだけで、同じ商品でも動き方が変わります。売り先を増やすのは、その後です。

新しいチャネルは、既存商品の”横展開”で見つかる

卸に頼る食品メーカーが、販路を自分で広げる3つの道を実務に落とす3つのステップ

3つの道のうち、意外と見落とされがちなのが「新しいチャネルを開く」です。まったく新しい商品を開発しなくても、今ある商品を別の売り場に持っていくだけで、販路は広がります。

私たち自身の例で言うと、Agritureグループでは、京都産の乾燥野菜を消費者向けに販売してきましたが、同じ乾燥野菜を「オフィスに常備する福利厚生サービス」というまったく別のチャネルに横展開しました。カップ麺やスープに加えるだけで野菜が摂れる、という形にしただけで、買い手は消費者から「企業の人事・総務」に変わり、商談の相手も価格帯も一変しました。

この横展開が成立したのは、一つの商品が複数の課題を同時に解けたからです。多忙で野菜不足のビジネスパーソンには手軽な栄養補給を、企業には従業員の健康経営を、そして規格外野菜を適正価格で買い取ることで農家には収入の安定を届けられる。新商品を一から開発したわけではありません。今ある乾燥野菜を「誰のどんな課題を解くか」でとらえ直しただけで、福利厚生という競合の少ない市場に入口が開きました。これは商品のとらえ直しの話であって、開いた入口を検索で見つけてもらい続ける設計は、また別の仕事になります。

横展開のヒントは「うちの商品は、他にどんな場面で役に立つか」という問いにあります。家庭用なら業務用へ、消費者向けなら企業向けへ、間食なら健康補給へ。使う場面を一つずらすだけで、届く相手が変わります。

その商品の価値、お客様に伝わっていますか?

「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。

広げた販路を、検索で見つけてもらう

直販でも、新チャネルでも、今は買い手がまず検索で調べます。消費者も、企業の担当者も、気になった商品や会社をその場でスマホで確認する。ここで出てこなければ、せっかく作った販路の入口が閉じたままになります。

やることは難しくありません。商品の価値と、どんな場面で役立つかを、検索で見つかる形にWebやSNSに置いておく。訪問や卸で人が届く範囲の外側を、Webが広げてくれます。チャネルを開くところまでは自社でできても、その入口を検索で見つけてもらい、問い合わせを取りこぼさない形にして回し続けるとなると、片手間では続きません。ここが自力の限界になりやすい部分です。うまみ企画では、こうした食品メーカーの販路づくり・デジタルマーケティングのお手伝いをしています。卸だのみから、自分で売り先を選べる状態へ、一緒に組み立てる仕事です。

まず、一つのチャネルを深くやる

販路拡大でいちばん多い失敗は、あれもこれもと手を広げて、どれも中途半端になることです。

まずは3つの道から一つを選ぶ。一番自信のある商品を、一つのチャネルで、価値が伝わる形にして出してみる。反応を見て、手応えがあればそこを深め、次のチャネルへ広げる。この順番なら、今の人数のまま始められて、途中で息切れしません。太い卸の管はそのままに、自分で回せる管を一本、確実に通すところからです。

よくある質問

卸との関係があるので、直販を始めると角が立ちませんか。

卸で扱う商品と、直販や新チャネル向けの商品・容量を分ければ、正面からぶつからずに始められます。実際、業務用は卸、少量・ギフトは直販、といった住み分けをしているメーカーは多いです。既存取引を大事にしながら、細い管を足すという考え方で進めるのが安全です。

新しいチャネルと言われても、うちの商品にそんな用途はない気がします。

「役に立つ場面」を一つずらすところから考えてみてください。家庭用を業務用に、おやつを健康補給に、といった具合です。まったく新しい商品を作る必要はなく、今ある商品の使う場面を変えるだけで、届く相手が変わることは珍しくありません。

直販やECは、少人数だと運営が大変ではありませんか。

最初から品揃えを広げようとすると大変になります。売れ筋の一商品に絞り、まず注文を受ける仕組みだけ作るなら、今の人数でも回せます。手応えが出てから広げるのが現実的です。

どのチャネルが自社に合うか分かりません。

商品の単価、日持ち、ロット、そして今の体制によって、向く販路は変わります。商品と現状を見せていただければ、3つの道のどれから始めるべきかを一緒に整理します。

卸だのみの販路は、それだけ商品が信頼されてきた証拠です。あとは、そこに自分で回せる管を足して、売り先を選べる状態にしていく。一番自信のある商品を、一つのチャネルで出してみるところから始めましょう。

販路が細ってきた原因が売り方なのか、そもそもの商品力や価格設定なのかを見極めたいときは、経営フェーズ診断が手がかりになります。取引先の集中度や価格決定力といった弱点が、14問に答えるだけで見えてきます。

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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