ベトナムの配車はGrab一強じゃない|首位EV・地場・撤退組を在住目線で

ベトナムの配車はGrab一強じゃない|首位EV・地場・撤退組を在住目線での要点を整理した図

ホーチミンで配車アプリを開くと、数年前とは景色が変わりました。以前はGrab一択だったのに、いまは通りに緑色のタクシーがずらりと並びます。VinFast系のEV配車「Xanh SM(サンエスエム)」です。2014年から長くトップだったGrabは、2024年後半にこのXanh SMに首位を明け渡しました。Gojekは撤退し、Grabは自社ウォレットを畳み、地場のBeがようやく黒字化する。プレイヤーの入れ替わりが激しい市場です。

この記事では、ベトナムの配車サービスを主要3社(Grab・Xanh SM・Be)を軸に整理し、料金・決済・法人利用やラストマイル配送まで、進出企業や出張者の目線で解説します。決済のしくみはベトナムの支払い方法の記事、注文を運ぶフードデリバリーはベトナムのフードデリバリーの記事にまとめました。

目次

「Grab一強」ではなくなった配車市場

ベトナムの配車はGrab一強じゃない|首位EV・地場・撤退組を在住目線でで押さえる3つの視点

ベトナムの配車市場は年約19%(CAGR)で伸びる高成長市場です。市場規模の絶対額は集計の定義で倍近く割れるものの、成長率の高さは各調査で共通します。利用者基盤は2024年で約2,800万人。使い方には日本と違う二つの特徴があります。

バイク配車(xe ôm)と車配車の二層構造

ベトナムはバイク社会で、伝統的な「xe ôm(バイクタクシー)」文化が土台にあります。配車アプリはこれをアプリ化したバイク配車(GrabBike、beBike、Xanh SM Bikeなど)と、車配車(GrabCar、beCar、Xanh SMの車など)の二層で普及しました。

バイク配車は初乗り1万〜1.6万ドン台と安く、日常の短距離移動やフードデリバリーの配達を担います。車配車は空港送迎・雨天・ビジネス移動が中心。出張者がまず使うのは車配車ですが、渋滞のホーチミンでは現地スタッフがバイク配車をさっと呼ぶ場面もよく見かけます。

アプリ1つで配車も出前も決済も

GrabとBeは、配車・フードデリバリー・決済/金融を1つのアプリに束ねるスーパーアプリ戦略をとります。この同じドライバー網が、飲食のデリバリーやEC商品のラストマイル配送も担う点は、食品事業者にとって見逃せません。Beにいたっては、配車アプリの中にデジタル銀行「Cake by VPBank」が組み込まれ、アプリから銀行機能に直接触れる形です。

一方Grabは、自社ウォレットMocaを2024年7月に終了し、決済は外部のMoMoやZaloPay連携へ切り替えました。決済まわりの全体像は支払い方法の記事で詳しく解説しています。

3社はどこが違う?外資・EV・地場を比べる

現在の主役は、外資のGrab、Vingroup系のXanh SM、地場のBeの3社です。まず全体像を表で押さえ、各社の性格は続く本文で見ていきます。

項目GrabXanh SMBe
系列シンガポール(外資)Vingroup系(GSM)ベトナム地場
参入2014年2023年4月2018年12月
車両ドライバー自前(ガソリン/EV混在)全車VinFast製EV(約10万台)ドライバー自前
運転手数(登録)約30万人約9万人約40万人(最多)
特徴ブランド認知・フード/決済連携EV・料金が定額で読める国産・アプリ内にCake銀行
数値は2024〜2025年の各社公表・報道ベース。運転手数は登録ベースで稼働実数とは異なる。

Grab|首位を明け渡したが、売上は過去最高

シンガポール本拠のGrabは2014年にベトナム参入し、長くトップを走ってきました。GrabCar・GrabBike・GrabFood・GrabExpressを揃えたフルスーパーアプリで、外国人利用の定番です。自社ウォレットMocaは2024年7月に11年の歴史を閉じ、いまは銀行カード・ZaloPay・MoMo・現金に対応します。

配車シェアではXanh SMに抜かれたものの、Grabの開示によれば、ベトナム売上は2025年に2.55億USDと3年連続で増加しました(The Investor報道)。グループ全体でも2025年に初の通期黒字(純利益約2億USD)を計上しています。市場が拡大しているため、シェアが下がっても売上は伸びるという局面です。

Xanh SM|全車EVで首位に立ったVingroup系

Xanh SMは、Vingroup会長のファム・ニャット・ヴオン氏が2023年に設立したGSM(Green and Smart Mobility)が運営する、ベトナム初の全車EVタクシーです。2023年4月にハノイ・ホーチミンで運行を開始し、わずか1年半ほどで首位に立ちました。報道では資本金を10億USD超に増強しています。

車両はすべてVinFast製EV(車・バイク合わせて約10万台規模)。最大の武器は、需給で変わらないフラット料金です。空港送迎でGrabがピーク時にほぼ倍額になる場面でも、Xanh SMは定額で金額が読めるため、外国人にも使いやすい。ベトナムで完結した「自前EV×自前配車」の垂直統合モデルで、すでにラオス・インドネシア・フィリピンなど海外へも展開しています。

Be|地場で初の黒字、運転手は最多

Beは2018年に始まったベトナム地場のスーパーアプリです。beCar・beBike・beDelivery・beFlight(航空券)を揃え、2021年にはVPBankと組んでデジタル銀行Cake by VPBankを配車アプリ内に立ち上げました。運転手の登録数は約40万人と3社で最多です。

市場シェアは6%前後と上位2社に水をあけられていますが、2025年11月にベトナム地場の配車として初のEBITDA黒字化を発表しました。補助金を燃やしてシェアを買う競争のなかで、国産勢が採算にたどり着いた点が注目されています。

逆転現象:首位のXanh SMが運転手は最少

シェア首位のXanh SMの運転手が約9万人と3社で最も少なく、シェア3番手のBeが約40万人で最多です。Xanh SMは自社EVを直接運用し、既存タクシー会社への車両リース・提携でも台数を伸ばすため、少ない運転手でも高いシェアを取れる構造になっています。

「Xanh SMが過半」の正しい読み方

この分野は、調査会社・年次・集計基準で数字が大きく割れます。よく引用される「Xanh SM 51.5%」は、Mordor Intelligenceの2025年Q4・四輪(車)配車・GMVベースの数字で、Grab・Beが公式に反論するなど論争もあります。バイク込みや利用回数ベース、別調査だと構図が変わるため、数字は「いつ・誰の調査・何ベースか」をセットで見るのが安全です。

時期Xanh SMGrab
2024 Q4約37%約37%
2025 Q1約40%約36%
2025 Q451.5%42.6%
車配車シェアの推移。調査基準が年次で異なり合計は市場全体と一致しない。2025 Q4はMordor Intelligenceの車・GMVベース。Beは同時期で約6%。

ポイントは、Xanh SMが2024年後半にGrabを初めて逆転し、以後は首位を保っていることです。Grabがベトナムに参入した2014年以来、初めての首位陥落でした。ただしこれは車配車の話。バイク込みで見ればGrabの存在感も大きく、「配車といえばGrab」の感覚が完全に消えたわけではありません。

撤退したGojekと、EVで延命する伝統タクシー

プレイヤーの入れ替わりも、この市場の特徴です。撤退と生き残りの両方に、進出企業が学べる教訓があります。

Gojekはなぜ撤退したのか

インドネシア発のGojek(GoTo傘下)は、2024年9月16日にベトナム事業を停止しました。報道によれば、6年の運営でCEOが4人交代し、累計損失は約2.17億USDにのぼります。補助金依存から抜け出せず、独自のエコシステムを築けなかったことが敗因とされます。撤退時点で、ベトナムはGoToグループの取扱高の1%未満でした。補助金でシェアを買う戦略の限界を示す事例です。

伝統タクシーはライバルのEVで生き残る

Vinasunなどの伝統的なタクシー会社は、配車アプリの台頭で減収減益が続いています。Vinasunの2024年純利益は前年から45%減少しました。そこで各社が選んだのが、皮肉にもライバルXanh SMの親会社が作るVinFast製EVの導入です。Mai Linhは約4,000台のVinFast EVを隊列に加え、G7 Taxiも同様にEVタクシーを投入して対抗しています。業界全体がEVへ傾斜する、独特の構図が生まれています。

出張者はいくら払う?法人はどう経費精算する?

フラット料金 vs サージ料金

ベトナムの配車はGrab一強じゃない|首位EV・地場・撤退組を在住目線でを実務に落とす3つのステップ

料金は変動するため目安ですが、バイク配車は初乗り1万ドン台から、車配車は基本料金2万ドン前後からが相場です。大きな違いは料金の決まり方にあります。Grabは需給でサージ(ピーク時値上げ)がかかり、雨や帰宅ラッシュで跳ね上がります。Xanh SMは料金が定額で、事前に金額が読めます。空港送迎ではこの差が体感で効き、Grabがピーク時にほぼ倍額になる一方、Xanh SMは同じ距離を定額で運びます。

決済と、外国人・出張者の使い方

  • アプリ入手・登録:Grab・Xanh SMともApp Store/Google Playで入手でき、SMS認証で登録。渡航前にダウンロードしておくと安心。
  • 決済:カードを登録すれば現金不要。GrabはZaloPay・MoMo・銀行カード・現金に対応(自社Mocaは2024年7月終了)。Xanh SMはアプリ・現金・カード。
  • 言語・空港送迎:英語表示に対応し、両社とも空港ピックに対応。金額が読めるXanh SM、知名度と英語UIのGrab、という使い分け。

法人利用はGrab for Business

進出企業に役立つのが、Grabの法人向け「Grab for Business」です。ベトナムでも稼働しており、社員が業務利用を仕分けるビジネスプロファイルと、企業側で経費・レポート・請求を管理するポータルの2層で構成されます。乗車のレシートをConcurやExpensifyなどの経費システムに自動連携でき、VATインボイスの取得にも対応。少人数の駐在でも、移動・出前・宅配の経費を最初からデジタルで統制できます。

ドライバー網(GrabExpress・AhaMoveなど)は、食品メーカーのD2Cや小ロット卸のラストマイル配送にも使えます。ShopifyやWooCommerceと直結するため、自前の物流を持たずに都市内の当日配送を組めるのは、少人数で始める進出企業に効くポイントです。こうした現地オペレーションの設計は、当社のベトナム進出支援(BRIDGE)でも伴走しています。

その商品の価値、お客様に伝わっていますか?

「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。

まとめ:主役はEV配車へ、勝負は採算とEV化

ベトナムの配車は、外資Grab・Vingroup系Xanh SM・地場Beの三つ巴です。車配車ではXanh SMがGrabを逆転して首位に立ち、Gojekは撤退、伝統タクシーもEVで延命と、市場は大きく動いています。出張や現地運営では、金額が読めるXanh SMと、フード・決済・法人機能まで揃うGrabを、場面で使い分けるのが実務的です。

配車と表裏一体なのがフードデリバリーです。同じスーパーアプリ勢が、食を運ぶ土俵でも激しく競っています。続きはベトナムのフードデリバリーの記事で、二強の寡占と加盟店手数料の実像を、食品進出の目線で解説します。銀行口座の選び方はベトナムの銀行の記事、食を軸にした進出の相談は無料診断もご利用ください。

また、旅行や出張で現地を実際に使うときの手順は、ベトナム旅行メディアの記事「配車アプリを使う10ステップ」も参考になります。

よくある質問

ベトナムで一番使われている配車アプリはどれですか?

車配車ではVinFast系のXanh SMが2024年後半にGrabを逆転し、2025年Q4は約51%(車・GMVベース、Mordor Intelligence)で首位に立ちました。ただしバイク込みや利用回数で見るとGrabの存在感も大きく、集計基準で順位が変わります。出張の際はGrabとXanh SMの両方を入れておくと安心でしょう。

Xanh SMとGrabはどちらが安いですか?

一概には言えません。Xanh SMは料金が定額で、雨や混雑時でも金額が読めます。Grabは需給で変動し、空港送迎などピーク時は割高になりがちです。金額の予測しやすさという点ではXanh SMに分があります。

外国人や出張者でも配車アプリを使えますか?

問題なく使えます。Grab・Xanh SMともアプリを入手してSMS認証で登録でき、英語表示に対応します。カードを登録すれば現金は不要で、空港ピックにも対応。渡航前にアプリを入れておくと現地でスムーズです。

法人で配車を使い、経費精算はできますか?

Grab for Businessがベトナムで使えます。業務利用の仕分け、利用上限の設定、VATインボイスの取得、ConcurやExpensifyへの自動連携に対応し、少人数の駐在でも経費統制をデジタル化できます。ラストマイル配送はGrabExpressやAhaMoveがEC連携で使えます。

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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