紹介頼みの原料商社が、新しい取引先を増やす販路開拓の順番

食品の原材料高が止まりません。値上げの波は2024年以降も収まらず、その要因の9割超を原材料の高騰が占めています。原価を守るために、メーカーは仕入れ先の見直しを迫られている——原料商社にとって、これは既存の取引が細るリスクであり、同時に、これまで縁のなかったメーカーと出会えるチャンスでもあります。
「これまでは紹介で取引が回ってきたが、それだけでは先細りが不安だ」。原料商社の経営者や営業から、こういう相談が増えています。仕入れ先が見直される時代に、紹介という受け身の入口だけで待っているのは心細い。自力で新規と出会う入口が要る、という危機感です。
この記事では、原料商社が新しい取引先を増やすために、どういう順番で販路開拓を進めればいいのかを整理します。飛び込みの数を増やす話ではなく、向こうから引き合いが入る仕組みをどう作るか、という話です。
販路開拓が難しいのは「紹介で回ってきた」から

原料商社の販路開拓が難しく感じられる理由は、はっきりしています。これまで新規獲得を「紹介」という相手起点の入口に頼ってきたため、自分から取引先を見つける筋肉がついていないのです。
紹介は質の高い入口ですが、数と時期を自分でコントロールできません。欲しいときに来るとは限らず、来ないときは何も打つ手がない。この不安定さが、先細りへの怖さの正体です。
| 観点 | 紹介・既存取引に頼る | 自力の導線を持つ |
|---|---|---|
| 新規の入口 | 相手の都合で来る | 常時、検索や発信から入る |
| 数のコントロール | できない | 発信量で調整できる |
| 価格の主導権 | 付き合いで決まりやすい | 課題解決で選ばれ、比較されにくい |
販路開拓とは、紹介をやめることではありません。紹介という不安定な入口に、自力で作れる入口を足していく作業です。原料商社の場合、その入口は大きく「展示会」「Web・検索」「品質の可視化」の3つに整理できます。順に見ていきます。
展示会・商談会は「出て終わり」にしない
オフラインの入口として、多くの商社がまず考えるのが展示会です。食品原料なら国際食品素材/添加物展(ifia JAPAN)が代表格で、2024年には3万人を超える来場者が集まりました。実物やサンプルを見せられる場は、今も貴重です。ただ、出展費用に見合う成果が出るかどうかは、当日ではなく後日の動きで決まります。
よくあるのは、名刺を大量に集めて満足し、その後のフォローが止まってしまうパターンです。集めた名刺は、追いかけて初めて商談になります。
- 名刺は「集める」より「追う」。会期後すぐ、話した内容に触れた連絡を入れる。時間が経つほど相手の記憶は薄れる。
- その場の温度で仕分ける。すぐ検討したい相手と、当面情報だけ欲しい相手を分け、後者には定期的に用途提案や技術情報を送り続ける。
- ブースは「何の課題を解く原料か」で見せる。原料名の羅列より、用途や解ける課題で掲げるほうが足が止まる。
展示会は接点を作る場であって、その場で契約が決まる場ではありません。当日の名刺交換から、後日のフォロー、次の提案までを一つの流れとして設計しておくと、同じ出展費用でも成果が大きく変わります。装置系の展示会(FOOMA JAPAN など)とは来場者の目的が違うので、原料なら素材系の展示会を選ぶことも大事です。
その原料の価値、開発担当に伝わっていますか?
「原料はいいのに、提案が通らない・取引が広がらない」——その原因の整理からお手伝いしています。原料を売る側も経験した私たちが、用途提案や販路の組み立てを一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。
「原料を探しているメーカー」に検索で見つかる
もう一つの入口が、Web・検索です。そして、原料商社にとって伸びしろが一番大きいのはこちらです。
メーカーの開発担当が新しい原料を探すとき、最初にやるのは検索です。一般に、原料名だけでなく「◯◯ 代替 素材」「◯◯ コストダウン 原料」といった、解きたい課題の言葉で調べます。ここで自社が出てこなければ、候補にすら入りません。展示会に来なかった相手、紹介でつながっていない相手が、検索経由で向こうから入ってくる。これがWebの入口の強みです。
入口は自社サイトだけではありません。BtoBの製品データベースも、開発担当がよく使う探し場所です。それぞれ役割が違います。
| 入口 | 役割 | 向いていること |
|---|---|---|
| 自社サイトの用途ページ | 課題の言葉で検索から見つかる | じっくり育つが、育つと自動で問い合わせの入口になる |
| BtoB製品データベース(イプロス・Metoree・Aperza など) | 製品を探す担当者が比較検討する場 | 資料・技術データを置いて発注検討層に届ける |
| 技術資料・アプリケーションデータの配布 | ダウンロードと引き換えに問い合わせにつなぐ | 関心の高い相手を名簿として拾える |
やることは難しくありません。商談で説明している用途を、検索で見つかる記事や製品ページの形にしておく。それに規格書やアプリケーションデータを添えて、ダウンロードや問い合わせにつなげる。うまみ企画では、原料商社が新しい取引先と出会うためのWebの導線づくりをお手伝いしています。展示会や紹介で人が届く範囲の外側を、検索とBtoBデータベースから埋めていく仕事です。
品質・安定供給・トレサビを「伝わる形」にする
3つ目の入口が、品質の可視化です。BtoBの原料選びは、感情ではなく合理で決まります。担当者が見ているのは、品質が安定しているか、供給が途切れないか、産地や履歴をたどれるか。ここが伝わらないと、どれだけ良い原料でも候補から外れます。特に品質保証部門は、規格書やアレルゲン情報、製造管理の裏づけがないと新規サプライヤーの承認を出せません。
逆に言えば、これらを分かる形で示せている会社は多くありません。だからこそ、きちんと伝えるだけで差がつきます。
| 示すもの | 具体的に用意するもの | 相手の不安 |
|---|---|---|
| 品質 | 規格書(配合・添加物・アレルゲン・微生物規格・製造工程)、試験成績書 | 表示違反・異物混入で回収にならないか |
| 安定供給 | 産地・在庫の考え方、複数の調達ルート | 供給が止まって商品が作れなくならないか |
| トレーサビリティ | 原料がどこから来たかをたどれる仕組み | 産地・履歴を説明できないと採用できない |
特に小売のプライベートブランド(PB)採用などでは、FSSC22000のような国際的な食品安全規格の取得を条件に挙げる企業もあります。こうした裏づけを、問い合わせの前にWebやPDFで見えるようにしておくと、担当者は「この会社なら社内を通せそうだ」と感じます。品質の可視化は、守りの書類仕事ではなく、新規を呼び込む攻めの入口です。
その原料の価値、開発担当に伝わっていますか?
「原料はいいのに、提案が通らない・取引が広がらない」——その原因の整理からお手伝いしています。原料を売る側も経験した私たちが、用途提案や販路の組み立てを一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。
発信を始めたら、知らない相手から相談が来た

この手応えは、私たち自身が原料を売る側に立って確かめたことです。
Agritureグループは、国産の乾燥野菜を業務用原料として卸しています。一例が、農業機械大手のクボタとの取り組みです。クボタが自社農園「クボタファーム」で育てたトマトを、私たちの乾燥加工でドライトマトにしました。ここで効いたのは「乾燥加工ができます」という一般的な案内ではなく、「御社の農園の作物を、こういう形で付加価値化できます」という具体的な用途の提示でした。この取り組み自体は縁があって生まれたものですが、『用途を具体的に示す』という発想は、新規開拓にもそのまま効きます。私たち自身、用途や品質管理の考え方をWebで発信するようになってから、これまで接点のなかった相手からも相談をもらえる手応えが出てきました。売る側に立って痛感したのは、良い原料や技術を持っているだけでは新規には届かない、ということです。
その経験をもとに、うまみ企画では原料商社や食品メーカーの販路開拓のお手伝いをしています。紹介頼みの状態に、検索から引き合いが入る導線を足し、展示会で得た接点を商談までつなぐ流れを一緒に設計します。原料商社にとって何が必要かは、原料商社のマーケティングの全体像の記事でも整理しています。
まず、一つの入口から作る
販路開拓というと、展示会もWebも品質書類も一気にやらないといけない気がして、身構えてしまいがちです。ですが、全部を同時に始める必要はありません。
まずは主力の原料を一つ選び、その用途と品質の伝え方をWebに一本置いてみる。あるいは、直近の展示会の名簿を、フォローの流れまで作り直してみる。どちらか一つでいい。一つの入口から引き合いが入る手応えを得てから、次を足す。この順番なら、今の体制のまま始められて、途中で止まりにくくなります。
よくある質問
- 既存取引先との関係があるので、Webで目立つと角が立たないか心配です。
-
既存取引先を飛ばして売り込む話ではありません。新規の相手に自社を見つけてもらう入口を増やすだけです。むしろ、用途や品質の考え方を発信しておくと、既存取引先からも「こういう相談ができる会社だ」と見直されることが多いです。
- 扱う原料が専門的で、検索されるほど知られていません。
-
専門的な原料ほど、名前で指名検索する人は限られます。ただ担当者は「この機能がほしい」「この課題を解きたい」という切り口では必ず調べます。原料名ではなく、果たせる機能や解ける課題を軸に書いておけば、その原料の存在を知らなかった相手の検索にも引っかかります。イプロスやMetoreeのようなBtoB製品データベースに技術資料を置くのも、専門原料と相性が良い方法です。
- 展示会に出るのをやめて、Webに絞ったほうがいいですか。
-
どちらか一方に絞る必要はありません。展示会は実物を見せられる強い接点で、Webは常時入口を開けておく仕組みです。役割が違うので、展示会で会った相手をWebやメールで追い続ける、というように組み合わせるのが効果的です。
- Web発信を始めたいのですが、社内の合意が取れません。
-
いきなり大きく始める必要がないことを共有するのが近道です。主力原料を一つだけ選び、その用途ページを一枚作って様子を見る——この範囲なら合意を得やすい。そこで一件でも引き合いが入れば、社内の見る目は変わります。まず「一品目・一ページ」から提案してみてください。
紹介で回ってきた商売は、それだけ信頼されてきた証拠です。その信頼を、自分から見つけてもらえる入口の形にも広げていく。直近の展示会名簿ひとつのフォロー設計からでも、着手できます。
販路が細ってきた原因が入口の数なのか、価格決定力や取引先の集中なのかを切り分けたい場合は、経営フェーズ診断で自社の状態を確かめてみてください。無料で、その場で結果が出ます。
