食品・消費財メーカーのマーケティング、何から始める?SNS・検索・ポップアップの選び方

商品には自信がある。既存の取引先もある。それでも、これからの売上をつくる方法が見えない。そんなとき、SNS、広告、展示会、ECと選択肢を並べられても、判断は難しいものです。
食品や日用品のメーカーに必要なのは、最初からマーケティングの専門部署をつくることではありません。まず「誰に、どんな場面で買ってほしいのか」を決め、その人が商品を知り、試し、買い続けられる道筋をつくることです。SNSも検索もポップアップも、その一部を担う手段です。
この記事では、施策の操作方法ではなく、経営者や事業責任者が自社に合う売り方を選ぶための考え方を整理します。結論からいえば、着手する順番は「売りたい商品を決める→新しい買い手を描く→購入を妨げている理由を見つける→手段を選ぶ」です。
「知られていない」と「買う理由がない」は別の問題

売上が伸びない原因を、すぐに知名度のせいにしないことが大切です。
たとえば、こだわりの調味料を買った人が使い切れないなら、広告で購入者を増やしても継続購入は伸びにくいでしょう。必要なのは「この料理に使うと便利」という用途の提案かもしれません。反対に、試食した人はよく買うのに店頭で立ち止まってもらえないなら、味そのものより、見つけてもらう場所や説明が課題です。
日用品も同じです。見た目の良い収納用品はSNSで伝わる部分がありますが、寸法や収納できる物が分からなければ、欲しいと思っても買えません。「もっと発信する」より、購入前の不安に答えるほうが先の場合があります。
社内でまず共有したいのは、アクセス数ではなく、最近買ってくれた人の購入理由と、買わなかった人の迷いです。営業、店頭、問い合わせ、返品理由に材料があります。大規模な調査をしなくても、「誰が何に困っているか」の仮説はここからつくれます。
五つの方法は、違う仕事をしている
一つの施策で、発見から継続購入まですべてを解決しようとすると無理が出ます。代表的な方法を、担う役割で整理すると選びやすくなります。
表は横にスクロールできます。
| 方法 | 得意な役割 | 向いている状況 | それだけでは解決しにくいこと |
|---|---|---|---|
| SNS・動画 | 知らなかった商品や使い方との出会い | 見た目、使う場面、つくり手の考えが選ぶ理由になる | 購入場所がない、供給が不安定、買う必要性が弱い |
| 検索に応える記事・Webサイト | すでにある疑問や比較への回答 | 用途、違い、取引方法などを調べてから買う商品 | まだ誰も知らず、探す言葉もない新しい使い方 |
| ポップアップ・試食体験 | 味、香り、触感、使い心地を実感してもらう | 写真や文章だけでは価値が伝わりにくい | 会期後の買い場や再購入の理由がない |
| 展示会・商談・卸先への提案 | 法人の買い手や販売パートナーをつくる | 業務用、店舗導入、まとめ買いが事業に合う | 来場者と商品の用途が合わない、取引条件が定まらない |
| 共同企画・コラボレーション | 相手の顧客に、新しい利用場面を提案する | 自社商品だけでは体験が完結しない、相性の良い相手がいる | 双方のロゴを並べるだけで、顧客の利点がない |
ここでいう検索に応える情報整備にはSEOも含みます。ただし、経営者が先に決めるべきことは検索順位ではありません。「どんな買い手の、どんな疑問に答える会社であるか」です。技術的な設定は、その後に担当者や支援先へ任せられます。
広告は、この道筋の入口に人を呼ぶ選択肢です。商品説明や購入先が整っていて、届けたい相手が見えているときに検討しやすくなります。買った後の満足や採算が未確認のまま、広告費だけ増やすのは慎重に考えたいところです。
消費者に売るのか、法人に採用してもらうのか
食品メーカーだからといって、最初からInstagramと自社ECが中心になるとは限りません。消費者向け販売と法人向け販売では、相手が決めたいことが違います。
消費者は、今日の食卓、贈り物、週末の楽しみなど、自分の生活に商品を置いて考えます。写真、試食、使い方、購入のしやすさが一連につながる必要があります。
一方、飲食店や小売店、他のメーカーが買い手なら、その商品を採用することで何が良くなるかが問われます。料理の付加価値なのか、作業負担の軽減なのか、売り場の差別化なのか。商品への好意だけではなく、相手の事業の中で使える提案が必要です。
同じお茶でも、「自宅で一息つくお茶」と「宿泊施設が客室に置くお茶」では、必要な説明も営業先も異なります。前者は飲む時間の魅力、後者は宿の体験との相性や提供のしやすさまで含めて考える。この違いを決めずに媒体だけ選んでも、伝える内容が定まりません。
Agritureの事業を見ると、商品名だけでは売り方を決められない
うまみ企画の代表が経営するAgritureは、乾燥野菜などの製造を基盤に、業務用原料、受託加工、企業向けノベルティ、職場向けの「オフィス八百屋」などを展開しています。これは各事業の売上効果を示す比較ではなく、公開されている提供形態の例です。Agritureの事業紹介
これを一括りに「乾燥野菜をSNSで宣伝する」と考えると、買い手の違いを見失います。原料を探す開発担当者には、用途や加工対応が分かる情報と相談窓口が必要です。職場への導入を考える人には、従業員がどう利用し、誰が管理するかが伝わる必要があります。ノベルティを選ぶ企業には、自社の企画とどう結びつくかが重要です。
つまり、マーケティングの出発点は、商品の認知を一律に増やすことではありません。自社がすでに持っている製品や技術を、どの顧客の目的に役立てるかを選ぶことです。その選択によって、Webの情報整備が先なのか、共同企画の提案が先なのかが変わります。
買い手を変えると何が事業として変わるのかは、既存商品から考えるメーカーの新規事業で詳しく扱っています。
卸と直販を、どちらか一方に決めなくてよい
既存の卸先があるメーカーが、消費者への発信を始めるからといって、全員を自社ECへ連れてくる必要はありません。「この商品が欲しい」と思う人を増やし、買える取扱店を案内することも、メーカーのマーケティングです。
直販を持つ良さは、買った人の疑問や使い方を直接知りやすいことです。一方で、少額の注文ごとに梱包、配送、問い合わせ対応を担います。店頭では手に取りやすい食品でも、単品に送料が加わると買いにくくなる場合があります。小売価格で売れるから必ず利益が増える、とは言い切れません。
たとえば、日常の買い足しは取扱店、詰め合わせやギフトは直販、使い方を知ってもらう場はポップアップ、と役割を分ける仮説があります。既存の売り先と同じ商品を安く売る競争にせず、どの場面を自社で担うかを決める考え方です。
メーカーが最初に持ちたいのは、すべての販売機能ではなく、顧客を理解して売り方を改善する力です。自社ECの開設より、取扱店で何が評価され、何が伝わっていないかを知ることが先になる会社もあります。
会社の状況によって、最初の組み合わせを変える
店頭では売れるが、店の外では知られていない

この場合は、いきなり別の商品をつくるより、既存の購入理由を発信に使う余地があります。SNSや動画で利用場面を見せ、購入できる店舗やECへつなぐ。商品名で検索したときにも、使い方や買い場が分かるようにする。店頭で評価されている理由を、店の外へ持ち出す組み合わせです。
ただし、送料を加えると買いにくくなる低単価商品なら、自社ECだけを出口にしないほうがよい場合があります。近隣の取扱店を増やすことや、セット商品として届けることも検討対象です。
新しい商品で、誰が欲しがるのか確信がない
まず、使ってほしい相手が集まる場所で試すほうが、発信量を増やすより学びがあります。ポップアップ、既存店での短期間の取り扱い、共同イベントなどが候補です。
そこで見たいのは「おいしい」という感想だけではありません。何と比較されるか、どんな場面なら買うか、価格を見て迷うのか、量が合わないのか。得られた反応を、商品と説明の両方に戻します。これは後のSNSや営業資料の中身をつくる活動でもあります。
具体的に出店を考えるなら、ポップアップを売上・顧客理解・販路づくりに使い分ける方法を参考にしてください。目的によって会場の選び方も変わります。
技術はあるが、いつもの取引先以外に知られていない
法人向けの用途提案、Webでの事例紹介、相手を絞った商談を組み合わせます。「何がつくれるか」から一歩進んで、「その技術で相手のどんな企画が実現できるか」を見せることが重要です。
たとえば加工技術の紹介だけでなく、宿泊施設のウェルカムギフト、他社ブランドの季節商品といった提案にする。これは仮説の例ですが、相手が自社の事業に引き寄せて判断できる形になります。
自社の技術と相手の顧客接点を組み合わせる例は、Agritureの事例から考える共同企画で紹介しています。
担当者がいない会社こそ、実行より先に決める範囲を絞る
経営者が毎日のSNS投稿まで抱える必要はありません。一方で、「誰に売りたいか」「どの利益を残したいか」「製造現場が無理なく対応できるか」は、外部へ丸ごと任せにくい判断です。
社内は事業の優先順位と商品・顧客の情報を出す。外部の支援先は、その情報から売り方を設計し、制作、発信、商談準備、検証まで実行する。この役割分担なら、専門担当者がいない会社でも始める余地があります。
予算と時間が限られるなら、最初の期間に解く問題を一つに絞ります。購入理由が不明なら顧客理解へ。理由は分かるが接点が少ないなら販路と発信へ。買いたい人がいるのに注文できないなら、購入や取引の受け皿へ。三つを同時に外注すると、何が改善したのかも見えにくくなります。
支援先を選ぶときも、「SNSを月に何本投稿するか」だけでなく、「その活動でどんな買い手を増やすのか」「反応が弱かったら商品・価格・販路のどこまで見直すのか」を聞いてみてください。施策の納品と事業の前進は、同じではありません。
次の売上を、どの買い手からつくるか
メーカーのマーケティングは、すべての媒体へ出る競争ではありません。自社の商品が役立つ場面を選び、その価値が伝わる接点と、買える場所をつなぐ仕事です。
うまみ企画では、食品メーカーの事業運営とメディア運営を背景に、売り方の設計から実行まで支援しています。「SEOを頼みたい」と決めている必要はありません。商品、現在の売り先、これから伸ばしたい方向を教えていただければ、どの可能性から取り組むかを一緒に考えます。メーカーのマーケティング・事業づくりについて相談する
