メーカーの異業種コラボは、ロゴを並べるだけではもったいない。新しい需要をつくる考え方

メーカーの異業種コラボは、ロゴを並べるだけではもったいない。新しい需要をつくる考え方の要点を整理した図

自社の商品だけを紹介しても、これまでと同じ人にしか届かない。そんなメーカーにとって、別の企業との共同企画は魅力的な選択肢です。ただ、互いのロゴを載せたり、SNSで紹介し合ったりするだけでは、一時的な露出で終わることもあります。

事業につなげるために考えたいのは、「相手と組むことで、顧客ができるようになることは何か」です。食品と調理道具、素材と料理、商品と体験。別々だった価値が一緒になることで、新しい使い方や買う理由が生まれることがあります。

この記事では、うまみ企画の代表が経営するAgritureの公開事例をもとに、食品・消費財メーカーが共同企画を考える視点を整理します。紹介する取り組みの内容と、そこからの考察を分け、非公開の契約や売上効果には立ち入りません。

目次

貝印の料理コンテンツと乾燥野菜が出会うと、何が変わるか

メーカーの異業種コラボは、ロゴを並べるだけではもったいない。新しい需要をつくる考え方で押さえる3つの視点

Agritureが公開する貝印株式会社との事例では、オンライン料理教室「Chefon」で、料理人の橋本幹造氏による乾燥野菜を使った8品の動画とレシピを制作した取り組みが紹介されています。Agritureの貝印株式会社事例

この取り組みを商品単体の宣伝と比べると、違いが見えます。「乾燥野菜があります」と伝えるだけでは、初めての人は何をつくればよいか分からないかもしれません。料理の形で見せると、素材の存在と使い方を一緒に知ることができます。

公開されている料理には、炊き込みご飯、かす汁、野菜味噌などがあります。特殊な素材の説明から入るのではなく、知っている料理に置き換えて見せられる点が重要です。食品メーカーの原料の知識に、料理人の使い方と料理コンテンツの届け方が加わっています。

道具や料理の情報に接していた人にとっても、新しい食材は、料理の楽しみを広げる材料になります。メーカー側の分類では「食品」と「調理用品」で別の業種でも、顧客の生活では一つの料理の場面でつながっています。

ここで参考になるのは、有名な会社の名前を借りることではありません。自社だけでは伝えにくい使い方を、相手の知見や顧客接点と一緒に届ける構造です。

日清ラ王に合わせた乾燥野菜は、「何に使うか」が先にある

Agritureの日清食品株式会社の公開事例では、「日清ラ王」に合わせた乾燥野菜詰め合わせセットを紹介しています。食品ロス削減の日に合わせた取り組みで、ラーメンの味に応じて野菜を選び、オリジナルミックスの製造も行ったと説明しています。Agritureの日清食品株式会社事例

これは異業種ではなく食品同士の例ですが、共同企画の考え方として共通点があります。商品を二つ並べるのではなく、「一緒に使うとどう楽しめるか」が設計されています。

具体的には、醤油味には乾燥九条ネギ、味噌味には乾燥玉ねぎ、ちゃんぽんにはにんじん・キャベツ・玉ねぎのミックスを組み合わせています。どのラーメンにも同じ野菜を付けるのではなく、相手の商品ごとに組み方を変えているのです。

乾燥野菜は、単体では使い方を考える手間があります。しかし、すでに知っているラーメンに合わせる提案なら、利用場面を想像しやすくなります。相手の商品が、自社の商品を理解するための具体的な文脈になるわけです。

また、食品ロスというテーマだけでなく、食べるときの相性も説明されている点が重要です。社会的な意味があっても、顧客が使う理由が弱ければ、その後の利用につながりません。企画の理念と、商品の実用的な楽しさを両方考える必要があります。

この二つの事例から考えると、協業の材料は「商品を提供できます」だけではありません。料理として見せる知見、味ごとに原料を選ぶ知見、必要な形で組み合わせる力も提案になります。価格表には載せにくいこうした強みを、相手の商品や顧客に合わせて使うことが事業開発です。

良い相手は、業種より「同じ顧客の同じ場面」で探す

コラボの相手を探すとき、知名度やフォロワー数だけで候補を選ぶと、顧客にとって一緒になる意味が薄くなることがあります。

代わりに、自社の商品が使われる前後を見てみます。料理の前後なら、食材、調理道具、保存用品、食器。休憩の時間なら、飲み物、菓子、器、空間。旅行なら、滞在、食事、持ち帰る物。顧客の一つの行動には、複数の事業者の商品が関わっています。

たとえば、お茶と器で飲む時間を提案する、洗剤と衣類の手入れの知識を組み合わせる、保存容器と食品の使い切り方を伝える。これらは企画を考えるための仮説ですが、業種が違っても、同じ顧客の困りごとや楽しみに関われます。

逆に、客層が重なっていても、一緒に使う理由がないなら、単なる宣伝交換にとどまるかもしれません。それ自体が悪いわけではありませんが、共同商品や新事業にまで広げるかは別に判断すべきです。

企画を見直すなら、相手の名前を外して説明してみると分かりやすくなります。「有名な会社と組む」を除いても、顧客にとって便利になること、楽しくなることが残るでしょうか。残らないなら、話題をつくる企画として予算を判断するべきで、継続需要を生む事業と同じ期待を置かないほうがよいでしょう。

海外にも同じ問いがあります。KATINATのカフェと季節企画では、飲み物を起点に異なるカテゴリーが同じ顧客へ接しています。ただし、接点を共有することと、継続的な需要をつくることは別に検討します。

共同企画には、段階がある

最初から共同ブランドや新製品をつくる必要はありません。製造や在庫を増やす前に、組み合わせた提案が顧客に伝わるかを確かめる段階を置けます。

表は横にスクロールできます。

段階取り組みの例主に分かること次へ進む前の確認
使い方を一緒に伝えるレシピ、動画、体験会二つの価値が一緒に理解されるか興味だけでなく、使いたい理由があるか
限定的に販売する期間限定セット、共同メニュー、催事実際に買う人と、求められる形価格、運用、供給に無理がないか
継続的な事業にする定番セット、共同商品、継続供給繰り返し選ばれる可能性利益、責任、顧客接点の分担が続くか

前述の事例をこの順番で展開した、と主張するものではありません。自社で企画を考えるときの整理です。重要なのは、試す段階と続ける段階で、投資の重さを変えることです。

反応が良かったからといって、必ず共同商品まで進む必要もありません。使い方のコンテンツだけで双方に価値があるなら、その形で続ける選択肢もあります。

限定販売で反応を見る場合は、ポップアップの目的と終了後の判断も先に整理しておくと、実施したこと自体を成果にせずに済みます。

提案書には、自社の紹介より先に顧客の利点を書く

メーカーの異業種コラボは、ロゴを並べるだけではもったいない。新しい需要をつくる考え方を実務に落とす3つのステップ

相手企業へ提案するとき、「当社はこういう会社です」「コラボしませんか」だけでは、担当者が社内で判断しにくくなります。

先に示したいのは、相手のどの顧客へ、どんな新しい体験や使い方を届けるかです。そのうえで、自社が提供できる製品、技術、情報、制作の役割を説明します。

たとえば、「当社のお茶と御社の器をセットにしたい」より、「初めて急須を買う人が、自宅でお茶を楽しみ始められる提案を一緒につくりたい」のほうが、企画の目的が見えます。器の選び方、茶葉の扱い方、購入先まで、どこに役割があるかを考えやすくなるからです。

相手にとっての負担も、最初から見ておくべきです。制作をするのか、販売場所を用意するのか、在庫を持つのか。相手の顧客へ届くことだけを期待して、作業と責任を相手へ偏らせる企画は続きません。

話題になったことと、事業になったことを分ける

共同企画は、実施したこと自体をニュースにしやすい面があります。しかし、掲載やSNSの反応だけでは、商品が使われたか、次の購入につながったかまでは分かりません。

顧客が組み合わせの意味を理解したか、通常の商品では届かなかった買い手と接点ができたか、次の提案へ使える情報が得られたか。最初の目的に戻って評価します。

継続するなら、利益の分け方だけでなく、製造、販売、問い合わせ、品質対応などを誰が担うかも必要です。また、一方のブランドの集客に依存し続けるのか、双方に顧客との関係が残るのかも、長期的な事業の形に影響します。

コラボは「相手が売ってくれる仕組み」ではありません。顧客への価値を増やすために、異なる強みを組み合わせる仕事です。

自社の商品が、誰かの体験を良くできないか

Agritureの公開事例からは、素材を紹介するだけでなく、料理や既存の商品と結びつけることで、使う理由を具体化する考え方が見えてきます。食品にも日用品にも、自社だけで話していると気づきにくい利用場面があります。

うまみ企画では、自社商品の強みから協業のテーマを考え、顧客への提案、情報発信、販売につながる企画づくりを支援します。相手企業や企画が決まっていなくても、「自社の製品で別の需要をつくれないか」という段階からご相談ください。共同企画・メーカーの事業開発を相談する

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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