ベトナムのECはShopeeとTikTok Shopの二強|動画で売る時代へ

ベトナムのECはShopeeとTikTok Shopの二強|動画で売る時代への要点を整理した図

ベトナムでネット通販といえば、少し前まではShopeeとLazadaの二強でした。ところがいまや主役の一角はTikTok Shopです。動画を見ていたら気になった商品を、その場で買う。ベトナムでは「SNSがそのまま売り場」になっていて、この感覚は日本より数年進んでいます。

この記事では、ベトナムのEC(ネット通販)を主要モールの勢力図、ライブコマース、決済・配送、そして日本企業が出店するときの実務まで、在住者の目線で整理します。決済のしくみはベトナムの支払い方法の記事、宅配はベトナムの宅配・物流の記事で解説しています。

目次

ECはShopeeとTikTok Shopの「複占」

ベトナムのECはShopeeとTikTok Shopの二強|動画で売る時代へで押さえる3つの視点

ベトナムのECは、外資2社に絞られました。分析会社Metricによれば、主要4モール(Shopee・TikTok Shop・Lazada・Tiki)の2025年の流通総額(GMV)は約165億USD(約429兆ドン)で、前年から約35%成長しています。そのうちShopeeとTikTok Shopの2社で約97%を占める複占状態です。この165億USDは主要4モールのGMVで、他チャネルを含むEC市場全体は約320億USD規模とされます。

主要4モールの勢力図

モール系列シェア(2025)状況
ShopeeSea(シンガポール)約53〜56%首位。品揃え・物流・メガセール
TikTok ShopByteDance(中国)約41〜44%急伸。2年でLazadaを抜き2位
LazadaAlibaba系約3%(Lazada+Tiki)LazadaとTikiを合わせて前年の約6%から約3%へ後退
Tiki地場ほぼ消失2025年GMVは前年比−82%
Metric(2025)ベース。シェアは調査主体・期間で数ポイント幅がある。地場のSendoは2025年に撤退。

地場勢の退場も鮮やかです。老舗のSendo(FPT系)は累計で約1.3億USDを投じたのちモール事業から撤退し、Tikiも存在感を失いました。資本力と物流、そして動画による集客で外資2強に押し切られた形です。

TikTok Shopが2年でLazadaを抜いた

今回いちばんの変化がTikTok Shopの急伸です。2023年のシェアは約24%でしたが、わずか2年でLazadaを抜いて2位に浮上しました。GMVは集計により幅はあるものの前年比7割前後伸びました。武器は短尺動画とライブ配信、そしてKOC(一般寄りの小規模インフルエンサー)によるレビュー動画。若年層の「発見して買う」行動をつかんだのが決定打でした。

なぜ「動画を見て買う」のか

ベトナムのECを理解する鍵は、ライブコマースにあります。商品を検索して買うより、配信を見て衝動的に買う比率が日本より格段に高いのです。

TGM Researchなどの調査では、ベトナム消費者の6割超がライブ配信ショッピングに参加し、ライブ配信の購入転換率は通常のECの最大10倍にのぼるとされます。ライブで動くのは化粧品・アパレル・日用品が中心で、その場の実演と即時発行のクーポンが購買の引き金になります。食品も試食の見せ方や産地の物語と相性がよく、配信映えする商材です。TikTok Shopではアフィリエイトのコンテンツ制作者が2025年に前年比140%増と、「みんなが売り子」の状態が広がりました。9月9日・11月11日・12月12日のゾロ目メガセールでは、送料無料とクーポンの原資を各社が投じ、短期間に売上が跳ね上がります。

現地メモ:SNSがそのまま販路

ホーチミンの知人でも、夜にスマホでライブ配信を眺めながら日用品や化粧品を買う人は珍しくありません。日本の「検索して比較して買う」より、ベトナムは「見ていたら欲しくなって買う」。TikTok Shopの躍進は、この行動様式の上に立っています。

決済と配送 ― CODとQRが同居する

意外なのが、これだけキャッシュレスが進んでも、EC取引の相当部分がいまだCOD(代金引換)である点です。以前はEC決済の過半がCODだったとされますが、QRコードやウォレットへの移行が進み、いまは3〜4割程度とされます(調査により幅があります)。「届いた商品の中身と真贋を確認してから払う」文化が背景にあります。偽物・模倣品への警戒が、CODを支えているのです。

その一方で、非現金・モバイル決済ではQR(VietQR)が最大の手段になっています。CODとキャッシュレスが同居しているのがベトナムECの実態です。配送はShopeeの自社SPX、Giao Hàng Nhanh、Viettel Postなどが担い、全国(2025年央の再編前は63省)をカバーする配送網とCOD回収の巧拙が競争条件になっています。物流の全体像は宅配・物流の記事で解説しています。

日本企業が出店するときの実務

日本の食品や日用品を売るなら、越境で直送するより、ShopeeやTikTok Shopに現地出店(または現地代理店経由)で並べるのが実務的な主流です。中間層の拡大を追い風に「日本品質」への信頼は武器になりますが、コスト構造と規制の変化は押さえておく必要があります。

出し方は3通りに整理できます。まず現地法人を持たずにモールへ現地出店する形は、小さく試すには身軽ですが、決済の受け皿や税務の負担は代行業者頼みになりがちです。次に現地代理店へ販売を委ねる形なら、言語・物流・カスタマー対応を任せられる代わりに利幅を分け合います。腰を据えて量を売るなら、現地法人を設けて自社で在庫と価格を握るのが本筋で、初期の固定費は重いものの、手数料や税の設計まで自分で握れます。売上規模と社内リソースを見比べ、この順で段階を上げていくのが現実的です。

  • 手数料は上昇局面:Shopeeのプラットフォーム手数料は2025年4月に4%から10%へ引き上げられ、TikTok Shopも2026年に料率改定が入る(最新料率を要確認)。出店時は最新の料率で採算を組む。
  • モールが税を源泉徴収:2025年7月から主要モールが出店者のVAT・個人所得税を源泉徴収・代理納付する仕組みに移行した。
  • 越境の旨味は縮小:2025年2月から40USD以下の少額輸入もVAT課税に。「安いから越境直送」の節税メリットは薄れた。
  • 偽物・低価格競争がリスク:中国発の超低価格品との競争、模倣品の横行、健康・機能性食品の偽造問題もある。食品は正規・安全・トレーサビリティで差別化する。
モール手数料改定
Shopee4%→10%2025年4月
TikTok Shop改定予定2026年(最新料率を要確認)
プラットフォーム手数料の改定。料率は改定が頻繁なため、出店時に最新値を確認する。

どのモールに、どんな価格と見せ方で出すか。手数料・税・物流を織り込んだEC専用の設計は、実店舗やデリバリーとはまた別の勘所が要ります。食品を軸にした販路づくりは、当社のベトナム進出支援(BRIDGE)で伴走しています。

その商品の価値、お客様に伝わっていますか?

「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。

まとめ:ECは「動画で売る」時代へ

ベトナムのECはShopeeとTikTok Shopの二強|動画で売る時代へを実務に落とす3つのステップ

ベトナムのECはShopeeとTikTok Shopの複占に集約され、地場勢はほぼ退場しました。躍進の主役はライブ配信と短尺動画で、「SNSがそのまま販路」という日本の一歩先の光景が広がっています。日本企業が出店するなら、上昇する手数料と源泉徴収、越境課税、そして偽物リスクを織り込んだうえで、動画による見せ方まで設計するのが出発点です。

ECの土台には決済と物流があります。注文から支払いまでのキャッシュレス動線はベトナムの支払い方法の記事、飲食のデリバリー事情はベトナムのフードデリバリーの記事で解説しています。進出の販路・決済・出店をまとめて相談したい場合は、無料診断もご利用ください。

よくある質問

ベトナムのネット通販は何が主流ですか?

モールではShopeeが首位で、急伸したTikTok Shopが2位。この2社でGMVの約97%を占めます(2025年、Metric)。決済はCOD(代引き)とQR(VietQR)が併存し、ライブ配信で買う「動画型」の購買が日本より強いのが特徴です。

TikTok Shopはなぜそんなに伸びたのですか?

短尺動画とライブ配信、そしてKOCによるレビュー動画で「発見して買う」行動をつかんだためです。シェアは2023年の約24%から2年でLazadaを抜き、2025年は約41〜44%まで伸びました。

日本の商品はどうやって売ればいいですか?

越境直送より、ShopeeやTikTok Shopへの現地出店や現地代理店経由が実務的です。2025年に40USD以下の輸入もVAT課税となり、越境直送の価格メリットは縮小しました。手数料の上昇や偽物競争を踏まえ、正規・安全を訴求する見せ方が有効です。

出店の手数料はどのくらいですか?

改定が頻繁なため時点の確認が必要です。Shopeeのプラットフォーム手数料は2025年4月に4%から10%へ上がり、TikTok Shopも2026年に料率改定が入ります(最新料率を要確認)。加えて2025年7月からモールが出店者の税を源泉徴収します。最新の料率で採算を組んでください。

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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