ベトナムのSIM・通信は何を選ぶ?番号が銀行にもなる国の使い方

ベトナムのSIM・通信は何を選ぶ?番号が銀行にもなる国の使い方の要点を整理した図

ホーチミンで暮らしていると、ベトナム人が財布から2枚も3枚もSIMを抜き差しする光景に何度も出くわします。DataReportalの「Digital 2025: Vietnam」によれば、モバイル契約は1億2,700万回線で人口比126%。1人で複数の番号を持つのが当たり前という、日本とは前提の違う通信社会がここにあります。しかも料金は世界最安級で、5Gは2024年10月に東南アジアでも早い時期に商用化されました。

この記事では、進出・出張で来る日本のビジネス層と、これから暮らす在住者の両方に向けて、キャリアの選び方からSIMの実名登録、eSIMの落とし穴、モバイルマネー、法人回線・光までを現地目線で整理します。到着後にすぐネットを使いたい人も、駐在で銀行口座やアプリ認証まで踏み込む人も、順に読めば自分の使い方が決まります。決済の全体像はベトナムの支払い方法、移動手段は配車アプリの記事もあわせてどうぞ。

目次

回線数は人口の126%、5Gは2024年に動き出した

ベトナムのSIM・通信は何を選ぶ?番号が銀行にもなる国の使い方で押さえる3つの視点

まず市場の輪郭をつかんでおきます。DataReportalの2025年初頭のデータでは、実際のインターネット利用者は7,980万人(普及率78.8%)。回線数の126%とネット利用率78.8%は別の指標で、前者は「1人が複数SIMを持つ」文化を映した数字です。モバイルの中央値ダウンロード速度は75.72Mbpsで、都市部の体感は日本と大きく変わりません。

  • モバイル契約:1億2,700万回線(人口比126%/DataReportal Digital 2025)
  • ネット利用者:7,980万人(普及率78.8%)
  • モバイル中央値DL速度:75.72Mbps(固定回線は153.99Mbps)
  • 5G商用化:2024年10月15日にViettelが国内初、VNPTが12月、MobiFoneが2025年3月に続いた

5Gについては、目標と現状を分けて見ておくと判断を誤りません。政府がデジタルインフラ戦略で掲げる「人口の99%を5Gでカバー」は2030年の目標です。2025年時点の5G人口カバー実績は約26%にとどまり、まだ都市・主要拠点が中心という段階にあります。ローンチ時にViettelが打ち出した「主要エリア100%カバー」も、面積ではなく工業団地・空港・港湾・病院といった主要拠点を指す表現でした。とはいえ都市部と主要インフラで5Gが使える状況になったのは、進出企業にとって追い風です。

国営3社で9割超、キャラの違いで選ぶ

ベトナムの携帯市場は、Viettel・VNPT系のVinaPhone・MobiFoneという国営3社で市場の9割超を占め、なかでもViettelが最大手です。正確なシェアは集計基準(回線数か収益か)や調査年で幅が出るため、ここでは「国営3社の寡占、Viettelが最大」という定性の理解で十分です。まずは3社の性格を横並びで見てください。

キャリア系列・位置づけ得意なエリア5G商用化
Viettel国防省傘下の軍系国営・最大手山岳・離島・地方まで最広。地方は実質一択との評価2024年10月(国内初)
VinaPhone(VNPT系)国営VNPT傘下・2位グループ都市・主要観光地で安定。政府DX/法人に強い2024年12月
MobiFone独立系の国営・3位都市部の通信速度に定評。地方はViettelに劣る2025年3月
位置づけとエリア評価は2025年時点の各種調査・報道ベース。シェアは出典により幅があるため割合は掲載していません。

Viettel:カバレッジで選ぶなら鉄板

Viettelは国防省傘下の軍系国営企業で、モバイル・固定ともに国内最大です。最大の武器はカバレッジで、サパやハザン、中部高原、離島まで電波が届きます。地方拠点を回る駐在や、工場が郊外にある製造業の進出では、まずViettelを基準に考えると外しません。旅行者向けのプリペイドやeSIMも整っており、上位プランにはデータ無制限も用意されています。

VinaPhone:都市と法人・スマートシティに強い

VinaPhoneは国営VNPTグループのモバイルブランドです。都市部と主要観光地で安定し、政府のDXやスマートシティ、法人向け通信基盤のパートナーとしての存在感があります。ハザンやサパ、中部高原ではViettelより弱いという評価があるため、地方まで移動するなら過信は禁物。逆にハノイ・ホーチミンのオフィス中心の使い方なら十分な選択肢です。

MobiFone:都市の速度重視派に

MobiFoneはかつてVNPT傘下だった独立系の国営通信です。2025年9月の調査では都市部のダウンロード・アップロード体感でトップ評価を得ており、都市の速度を優先するなら候補に入ります。ただし地方カバレッジはViettelに及びません。都市に張り付いて動くビジネス滞在との相性が良いキャリアです。

格安・MVNOは短期・都市限定と割り切る

iTel(VNPT/VinaPhoneの回線網を借りる、2019年開始の国内初かつ最大級のMVNO)、Masan系のWintel、新興のVNSKY、そしてVietnamobileといった格安・小規模事業者もあります。ただしYozzoの集計でMVNO契約は約265万件と、9割超を握る国営3社に対してニッチな存在。基地局密度が低く地方カバレッジに難があるため、短期滞在・都市中心・とにかく安くという条件がそろわない限り、外国人には大手が無難です。

料金は日本の感覚だと「使い放題が数ドル」

ベトナムのモバイルデータは世界最安級です。VnExpressやVietnamNetの報道でも「世界・地域で最も低い水準」と一貫しており、1GBあたり概ね1ドル未満という水準感。旅行者向けでも5GB/日クラスが数ドル、無制限プランでも6ドル前後で買えます。日本から来ると価格の桁が違って感じられるはずです。

  • データ料金の水準:1GBあたり概ね1ドル未満(世界最安級との報道が続く)
  • 旅行者向けプリペイド/eSIM:60,000〜200,000VND(約2〜6.5ドル)のレンジが目安、有効期間15〜30日
  • 空港キオスクの価格は市中より20〜30%高い傾向

ひとつ注意したいのは、「日本の何倍安い」という具体的な倍率です。VNDレートは変動し、1GBあたりの単価も年次で動くため、社内資料や見積りに数字を載せるなら、日本側の最新相場とベトナム側の最新料金を同じ時点でそろえて計算し直してください。ざっくり「桁違いに安い」という体感は変わりませんが、正確な倍率は都度確認するのが安全です。

SIMは実名登録が義務、顔写真まで撮られる

ベトナムではSIMの実名登録が法的義務で、外国人・旅行者も例外ではありません。店頭でパスポートと本人の顔写真を提示し、スタッフが登録します。所要は5〜10分ほど。ここを飛ばした未登録SIMは数日で止まるリスクがあり、安さに釣られると現地で通信が切れて詰みます。

現地メモ:SIMは「正規店」で買う

空港のキオスクや街の正規代理店なら、パスポート提示で登録込みが5分で終わります。街角の露店で名義不明のSIMを安く売る光景もありますが、これは名義不一致でブロックされる典型パターン。到着直後の1枚は、多少高くても正規のカウンターで買うのが結局いちばん安く付きます。

旅行者・在住者の使い方とeSIMの落とし穴

ここが日本人がいちばんつまずくポイントです。短期でネットだけ欲しいなら、渡航前に買う観光eSIMが最速。到着してすぐつながり、空港価格の上乗せも避けられます。ただし観光用のデータ専用eSIMには、ベトナムの電話番号が付かないことが多い。この一点が、後で効いてきます。

なぜ番号が要るのか。ベトナムでは電話番号が銀行口座、電子ウォレット、国民デジタルID(VNeID)、各種アプリのSMS認証の要になっているからです。データだけつながっても、現地銀行アプリのOTPやZaloの登録で番号を求められ、そこで手が止まります。銀行アプリのOTPは、その端末でアクティブな個人番号が必要なケースが多いためです。

  • ネットだけの短期滞在 → 渡航前の観光eSIMが最速・最楽
  • 現地の銀行・ローカルアプリ・モバイルマネーを使う → 番号付きの物理SIM/プランを実名登録する
  • 迷ったら二段構え → 到着直後は事前eSIMで即接続、滞在が延びる/現地サービスを使うなら番号付きSIMを追加

配車アプリのGrabは例外的にゆるく、アカウント作成に自国の番号のまま使える実例があります。海外番号と国際対応カードで乗車から決済まで完結できるので、「ベトナム番号がないとGrabが使えない」という思い込みは不要。詳しい移動事情は配車アプリの記事で触れています。一方でZaloのようなローカルアプリはベトナム番号を求めることが多く、ここは住み分けがあります。ECの受け取りや決済まわりはベトナムのEC事情も参考になります。

番号がお財布になるモバイルマネー

電話番号の重要性を象徴するのがモバイルマネーです。Viettel Money・VNPT Money・MobiFone Moneyは、SIM口座(電話番号)の残高で送金・支払いができるキャリア主導の決済。銀行口座がなくても使えるのが最大の特徴で、店舗の少ない地域の生活インフラになっています。

  • 利用者数:2024年第3四半期時点で960万人超(VietnamNet等)
  • うち約72%(690万人超)が農村・山間・遠隔地の利用者
  • 背景:銀行口座を持つ成人はかつて(2017年)約3割だったが2021年には約56%へ上昇(World Bank Findex)。それでも地方は銀行支店が少なく、番号決済が生活の受け皿として伸びた
  • 制度:SBV(中央銀行)のパイロットは2025年末を期限に走り、恒久法制化が議論された

つまり番号=口座であり、SIMの実名登録と番号がそのまま決済アカウントの本人性に直結します。銀行を飛ばしてキャリア決済が普及したこの構図は、消費者向けサービスを展開する日本企業にとって、決済導線を設計するうえで押さえておきたい前提です。

法人回線と固定光、どの拠点にどのキャリアを引くか

ベトナムのSIM・通信は何を選ぶ?番号が銀行にもなる国の使い方を実務に落とす3つのステップ

拠点を構える段になると、モバイルだけでなく固定光(FTTH)と専用線の選定が必要になります。TelecomLeadの2026年報道では、固定光もViettelが首位で約1,100万加入・シェア約44%、VNPTが約825万・約33%と続き、3位のFPT Telecomは上位3社で唯一の非国営として企業向けに強みを持ちます。シェア値は統計元で差が出うるため、順位感の目安として捉えてください。

選定シーン有力な候補理由
全国・地方拠点/工業団地Viettelカバレッジ最広。郊外・地方の工場でも回線を引きやすい
政府・スマートシティ・大企業DX連携VNPT官公庁DX/スマートシティの通信基盤パートナー
都市部オフィス/法人サポート重視FPT Telecom非国営で企業向けに強い。都市のコスパ比較先
固定光シェアはTelecomLead(2026)報道値。統計元により差が出る前提の目安。

駐在員の個人回線にも注意が要ります。銀行OTPなどを使う駐在員は、個人名義のベトナム番号を実名登録で持つのが実務上ほぼ必須。法人貸与番号だと銀行OTPで弾かれる場面があるためです。IoT/M2Mについては3社ともクラウド・光・決済と並ぶ注力領域で、「通信会社」からデジタルインフラ企業へと軸足を移しています。

現地メモ:駐在の「番号」は着任初日に固める

着任してから銀行口座を開き、給与受け取りやOTP認証を回すまで、すべてが個人のベトナム番号にぶら下がります。番号ポータビリティ(MNP)は制度としてありますが、番号を変えたり失ったりすると、銀行・ウォレット・VNeIDのログインをまとめてやり直す羽目に。だからこそ、着任初日に正規店で個人名義の番号付きSIMを1本、実名登録で確保しておくのが後々ラクです。

その商品の価値、お客様に伝わっていますか?

「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。

まとめ:短期はeSIM、腰を据えるなら正規店で番号付きSIM

ベトナムの通信は、安くて速くて5Gも来ているという明るい話と、番号が銀行・決済・アプリ認証の生命線という現実がセットです。短期のネット利用なら渡航前eSIMで十分。しかし現地の銀行やモバイルマネー、ローカルアプリまで踏み込むなら、正規店で番号付きSIMを実名登録するのが遠回りに見えて最短ルートになります。

法人での進出なら、地方拠点はViettel、官公庁連携はVNPT、都市オフィスはFPTという住み分けを起点に、駐在員の個人番号まで含めて設計しておくと立ち上がりが滑らかです。ベトナム進出の通信・決済まわりで判断に迷ったら、現地在住で伴走する当社の進出支援BRIDGEや、まずは方針を整理する無料診断から相談してください。

また、旅行や出張で現地を実際に使うときの手順は、ベトナム旅行メディアの記事「ベトナムでSIMカードを買って設定する手順」も参考になります。

よくある質問

観光用のeSIMだけで現地の銀行アプリは使えますか?

使えない場面が多いです。観光用のデータ専用eSIMはベトナムの電話番号が付かないことが多く、銀行アプリのSMS-OTP認証で番号を求められて詰まります。現地の銀行やモバイルマネーを使うなら、正規店で番号付きの物理SIM/プランを実名登録してください。ネット接続だけなら観光eSIMで問題ありません。

SIMを買うのに何が必要ですか?

パスポートと本人の顔写真です。ベトナムではSIMの実名登録が義務で、外国人も例外ではありません。空港キオスクや正規代理店なら、スタッフが5〜10分ほどで登録してくれます。街の露店で売られる未登録SIMは数日で止まるリスクがあるため避けてください。

地方や山岳エリアも回るなら、どのキャリアが安心ですか?

Viettelが無難です。サパやハザン、中部高原、離島まで最も広くカバーしており、地方では実質一択との評価もあります。都市部の通信速度を優先するならMobiFoneも選択肢ですが、地方まで移動する予定があるならViettelを基準に選ぶと外しません。

ベトナムのモバイル料金は日本よりどれくらい安いですか?

大幅に安いのは確かで、1GBあたり概ね1ドル未満と世界最安級です。旅行者向けでも5GB/日クラスが数ドル、無制限でも6ドル前後という水準感。ただし「日本の何倍安い」という具体的な倍率は、VNDレートや単価が年次で動くため、実務で使うなら日本側の最新相場と出典年次をそろえて計算し直すことをおすすめします。

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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