企業の所得が過去最高だった年に、食料品製造業だけ7.0%減っていた

令和6年度、日本の法人の所得金額は102兆609億円でした。5年連続の増加で、過去最高です。前年度から10兆2,914億円、率にして11.2%増えています。
同じ年、食料品製造業の所得金額は18,388億円。前年度から1,383億円、7.0%減っています。全体が過去最高を更新するなかで、減った側にいました。
先に、この数字が何を指しているか

読み違えると意味が変わるので、前提を先に置きます。
「所得金額」は税務上の数字であって、儲けの実感ではない
- 会社標本調査の所得金額は、法人税の確定申告の事績をもとに集計したもの。会計上の利益とは一致しない
- これは業種の合計額であり、1社あたりの収益性ではない。その業種の法人数が変われば合計額も動く
- したがって「7.0%減った」は業種全体の申告所得の話で、個々の会社が7.0%苦しくなったという意味ではない
そのうえで、全体が過去最高を更新した年に特定の業種だけが減っているという事実は、業種の置かれた状況を示す材料にはなります。
減少率で見ると、食料品製造業は全業種で2番目
令和6年度に所得金額が減った業種と、増えた業種を並べます。
増減率の上位と下位
| 業種 | 令和5年度 | 令和6年度 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 料理飲食旅館業 | 9,681億円 | 15,934億円 | +64.6% |
| 出版印刷業 | 5,526億円 | 7,892億円 | +42.8% |
| 金融保険業 | 110,842億円 | 148,546億円 | +34.0% |
| 農林水産業 | 3,061億円 | 3,074億円 | +0.4% |
| 機械工業 | 155,408億円 | 144,574億円 | ▲7.0% |
| 食料品製造業 | 19,771億円 | 18,388億円 | ▲7.0% |
| その他の製造業 | 36,574億円 | 33,627億円 | ▲8.1% |
原典の記述では、減少率が最も高いのは「その他の製造業」、次いで「食料品製造業」、その次が「機械工業」です。減少額で見ると機械工業(▲10,834億円)、その他の製造業(▲2,948億円)に次いで3番目にあたります。
この表から読み取れないこと
- 業種どうしの取引関係/この分類は取引の流れで並んでいない。食料品製造業の製品が国内の飲食店に流れるとは限らず、輸出も輸入もある。「川上から川下へ利益が移った」とは言えない
- 「料理飲食旅館業」=外食ではない/この区分には旅館業が含まれる。+64.6%のどこまでが飲食で、どこまでが宿泊かは、この表からは分からない
- 「農林水産業」=農業ではない/林業・漁業を含む
- 1社あたりの状況/合計額なので、法人数の増減の影響を分離できない
食品に関わる業種を並べて「作る側だけが取り残された」と読みたくなりますが、この統計だけではそこまで言えません。言えるのは、全体が過去最高だった年に、食料品製造業の申告所得は減っていたという一点です。
なぜ減ったのか(ここからは検証していない仮説)
統計は理由を示しません。以下は食品の現場で見聞きしてきた範囲での見立てで、この記事に挙げた統計では検証していません。そのつもりで読んでください。
価格改定に時間がかかる取引がある
- 小売や卸に納める製品は、価格改定が取引先との交渉になり、反映まで時間がかかることがある
- その時間差のあいだ、上がった原価は自社が負担する
- ただし食品製造にもD2C・業務用原料・OEM・直販があり、すべてが棚価格の交渉をしているわけではない
参考までに、中小企業庁の2025年9月の調査では、受注側中小企業全体の価格転嫁率は53.5%でした。ただしこれは業種を限定しない全体の値で、食料品製造業と料理飲食旅館業を比較したものではありません。詳しくは価格転嫁率53.5%に書いています。
原価に手を入れる余地は、思われているより広い

- 原料相場そのものは動かせないが、調達条件・規格・包装・在庫と廃棄・製品構成・物流・エネルギー・外注工程はいずれも対象になる
- 「原材料が高いから打つ手がない」と早く結論を出すと、これらを検討しないまま終わる
- 利益率が低い会社ほど、同じ削減額でも利益への影響は大きく出る
自社の利益率の水準は食料品製造の経常利益率は5.5%、規模による違いは資本金1,000万円未満の利益率は2.8%で確認できます。
価格以外に動かせるもの
当社代表の小島は、乾燥野菜の事業で「価格ではなく取引の条件のほうを変える」やり方を実際に試してきました。値上げ交渉が難しい局面で取れる選択肢の一例です。
- 他社の乾燥野菜を扱う会社と話すと、1回あたりの仕入れ量がとても多い。この「ロットの壁」に気づいて、小ロットやオリジナルの相談に企画から応える形へ軸足を移した
- Amazonの運用を支援したある会社では、市場に大袋ばかりが並ぶなか小袋にしただけで、そのカテゴリの全体ランキング上位に入った
- どちらも単価を上げる交渉はしていない。ロットや容量を変えた結果として、実質的な単価が動いた
これは価格交渉や原価分析の代わりになるものではありません。そちらを進めたうえで、別の打ち手も並行して持っておく、という位置づけです。考え方は食品メーカーの新規事業は、「少しずらす戦略」で変わるに書いています。
自社について確かめられること
- 直近3年の利益率の推移/単年では判断できない。業種全体が落ちた年を基準にすると評価を誤る
- 販売先ごとの粗利率/全体平均ではなく取引先別に出す。1社の低粗利が全体を押し下げていることがある
- 最後に価格を上げた日と、その間の原価の動き/改定日だけでは判断できない。仕入価格の低下、容量や商品構成の変更、仕入先の変更などで吸収できている場合もある
自社の利益率が同じ資本金規模の平均に対してどこにいるかは経営フェーズ診断で確認できます。なお診断で使う資本金規模別の平均は全産業を階級で分けた値で、食品業界の平均ではありません。取引先の集中度と価格の決定力も同時に判定します。
よくある質問
その商品の価値、お客様に伝わっていますか?
「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。
まとめ
- 令和6年度の法人の所得金額は102兆609億円で過去最高(前年度比+11.2%)
- その年、食料品製造業の所得金額は18,388億円で7.0%減。減少率は全業種で2番目
- ただしこれは税務上の所得の業種合計で、1社あたりの収益性でも会計上の利益でもない
- 業種分類は取引の流れで並んでいないため、業種間の利益移転は読み取れない。「料理飲食旅館業」には旅館業が含まれる
- 減った理由は統計からは分からない。価格改定の時間差は仮説であって、この統計では検証していない
赤字が多数派である前提は日本の法人の6割は赤字で書いています。
