食料品製造の経常利益率は5.5%。製造業平均との差はどこで消えるか

財務省の法人企業統計で、令和6年度の食料品製造業の売上高経常利益率は5.5%でした。同じ年の製造業全体は8.6%です。3.1ポイントの差は、売上10億円の会社なら経常利益で3,100万円に相当します。
食品は利益率が低い、という話は業界にいれば何度も聞きます。ただ「低い」で止めてしまうと、自社の数字が業界並みなのか、業界のなかでも下なのかが判断できません。ここでは公表されている一次データだけを使って、差がどこで生まれているかを分解します。
食料品製造業の利益率は、製造業のどこに位置するか

法人企業統計は資本金1,000万円未満の会社まで含む調査です。上場企業の決算だけを集めた数字ではないため、中小の食品メーカーにとっても自社と地続きの水準として読めます。
製造業11区分のなかでの位置
| 業種 | 売上高経常利益率 |
|---|---|
| 業務用機械 | 15.3% |
| 化学 | 12.3% |
| 電気機械 | 11.4% |
| 生産用機械 | 11.2% |
| はん用機械 | 11.1% |
| 輸送用機械 | 10.2% |
| 製造業(全体) | 8.6% |
| 情報通信機械 | 8.6% |
| 食料品 | 5.5% |
| 金属製品 | 5.5% |
| 鉄鋼 | 5.0% |
| 石油・石炭 | 1.3% |
食料品は11区分のうち8番目、金属製品と同率で下から4番目です。機械系との差が目を引きますが、比較の相手として近いのは金属製品のほうで、どちらも「加工の手間はかかるが、製品単価に上限がある」構造を持っています。
この5年で利益率はどう動いたか
| 年度 | 食料品 | 製造業全体 | 差 |
|---|---|---|---|
| 令和2年度 | 3.6% | 6.0% | 2.4pt |
| 令和3年度 | 4.6% | 8.3% | 3.7pt |
| 令和4年度 | 3.7% | 7.9% | 4.2pt |
| 令和5年度 | 4.7% | 8.6% | 3.9pt |
| 令和6年度 | 5.5% | 8.6% | 3.1pt |
食料品は令和4年度に3.7%まで落ちたあと、2年かけて5.5%まで戻しています。原材料高が最も重くのしかかった年を底に、価格改定が遅れて効いてきた形です。製造業全体との差も4.2ptから3.1ptまで縮みました。
令和4年度から令和6年度で1.8ポイント戻していますが、それが販売数量によるものか単価によるものかは、この統計だけでは判別できません。製造業全体が令和5年度から横ばいであることを踏まえると、食料品に固有の要因が働いたとまでは言えます。
3.1ポイントの差は、どの工程で消えているか
経常利益率の差が出る場所は、粗利の時点・販管費の時点・営業外収支の3つです。食料品は令和6年度の営業利益率が3.6%、経常利益率が5.5%で、営業外で1.9ポイント積み増しています。製造業全体は5.4%→8.6%で3.2ポイントなので、営業外での上乗せ幅にも差があります。以下では、そのうち本業側で起きていることを見ます。
販売先の数が少なく、価格の決定権が外にある
- 量販・卸への依存度が高いほど、価格改定は交渉ごとになり自社では決められない
- 改定を通すのに数か月かかるため、原材料の上昇と反映のあいだに時間差が生まれる
- その時間差のあいだは、上がった原価をそのまま自社が負担することになる
機械系の業種は受注ごとに見積もりを出し直せます。食品は棚に並ぶ価格が決まっているぶん、価格の改定に時間がかかります。ただし令和3年度から4年度にかけて経常利益率が下がったのは食料品だけではなく、石油・石炭(6.3%→0.9%)、情報通信機械(10.2%→8.1%)、金属製品(6.3%→4.9%)、化学(12.8%→11.6%)も低下しています。食品特有の事情だけで説明できる動きではありません。
原材料が原価の大半を占め、工夫できる幅が狭い
- 原料の相場そのものは、自社の努力では動かせない
- 削れるのは歩留まり・副産物の活用・配合の見直しに限られる
- 原材料比率が高い製品ほど、改善の効果は利益率の小数点以下に留まる
加工の工程を効率化しても、原料そのものの値段は動かせません。歩留まりの改善や副産物の活用で削れる幅はありますが、原材料比率が高い製品ほど、改善の効果は利益率の小数点以下に留まりがちです。
この構造から抜けるには、原価を下げるより、同じ原料で単価の高い売り先に出すほうが効きます。販路の組み替えについては食品メーカーの新規事業は、「少しずらす戦略」で変わるで、既存の設備を使ったまま売り先を変える考え方を書いています。
販管費に占める物流と営業の比重が高い
- 冷蔵・冷凍は輸送単価そのものが常温品より高い
- 賞味期限があるため、在庫を持って輸送を平準化しにくい
- 小売への提案・展示会の商談など、売るための人件費が別にかかる
冷蔵・冷凍が必要な製品は、輸送そのものにコストがかかります。さらに小売への提案や展示会での商談など、売るための人手も必要です。粗利が出ていても、ここで削られて経常段階では薄くなります。
展示会にかけた費用が商談に結びついているかは、名刺の枚数ではなくその後の導線で決まります。この点は海外の展示会で、私が名刺より大事にしていることで詳しく書きました。
業種の平均より、会社の規模のほうが利益率を分ける

業種平均だけを見ていると「うちは5.5%に届いていない」で終わってしまいます。ただし同じ調査には、業種とは別に資本金の規模で切った数字があり、こちらのほうが開きは大きく出ます。以下は食料品に限った数字ではなく、全産業を資本金階級で分けた値です。食品業種を規模別に分けた公表値は確認できなかったため、業種の数字と規模の数字は別のものとして読んでください。
資本金階級別の売上高経常利益率
- 資本金1,000万円未満/経常利益率2.8%(営業1.5%)
- 資本金1,000万円〜1億円/4.1%(営業3.1%)
- 資本金10億円以上/11.1%(営業7.8%)
- いずれも全産業を資本金階級で分けた値で、食料品製造業に限定した数字ではない。階級別の詳細は資本金1,000万円未満の利益率は2.8%にまとめている
1,000万円未満と10億円以上では、経常利益率が2.8%と11.1%で約4倍の開きがあります。規模が小さいほど利益率が低いのは、経営の巧拙より先に、固定費を分散できるだけの売上量がないことが効いています。
- 5.5%/全ての資本金階級を含む「食料品製造業」の値
- 2.8%/全ての業種を含む「資本金1,000万円未満」の値
- 食料品かつ資本金1,000万円未満/この交差する値は公表されていない
5.5%は全ての資本金階級を含む食料品の値、2.8%は全ての業種を含む資本金1,000万円未満の値です。「食料品かつ資本金1,000万円未満」の利益率は、どちらの表からも分かりません。この交差する値は公表されておらず、2つを足したり間を取ったりして推定することもできません。
できるのは、性質の違う2つの参照点として別々に置くことだけです。業種平均は「この業種が構造的に届きうる水準」、規模別平均は「この規模で標準的な水準」として、自社をそれぞれに当ててみる。ここから自社の適正値を割り出せるわけではありません。
自社の位置を数字で確かめる
- 売上高/直近1年の実績
- 経常利益/同じ期間。赤字ならマイナスのまま
- 資本金/1,000万円未満か、1,000万円〜1億円か、1億円以上か
売上と経常利益、資本金の3つが分かれば、業種平均と規模別平均のどちらに対しても自社の位置が出せます。平均との差を金額に直すと、売上を増やさずに動きうる幅がそのまま見えます。
7問の質問と任意の数値入力で、この比較をまとめて出せるようにしたのが経営フェーズ診断です。入力した金額はブラウザの中だけで計算し、送信していません。
利益率を上げる前に確かめる3つ
- 直近3年の利益率の推移/単年で判断しない。令和4年度は業界全体が落ちた年なので、その年だけを基準にすると自社の評価を誤る
- 販売先ごとの粗利率/全体の平均ではなく取引先別に出す。1社の低粗利が全体を押し下げていることがある
- 価格改定から反映までの日数/原材料が上がってから店頭価格に届くまでの実日数を測る。ここが短い会社ほど利益率のブレが小さい
いずれも決算書と受注データがあれば社内で出せます。外に相談するのは、この3つを出したあとで構いません。
よくある質問
その商品の価値、お客様に伝わっていますか?
「いい商品なのに売れない」——その原因の整理からお手伝いしています。食品の現場を知る私たちが、御社の売り方を一緒に見直します。まずは現状を聞かせてください。
まとめ
- 令和6年度の食料品製造業の売上高経常利益率は5.5%。製造業全体の8.6%とは3.1ポイントの差
- 令和4年度の3.7%を底に2年で1.8ポイント戻している。ただし数量によるものか単価によるものかは、この統計では判別できない
- 差が生まれるのは価格決定権・原材料比率・物流と営業の3か所
- 資本金1,000万円未満の法人は全産業で経常利益率2.8%。ただし「食料品かつ資本金1,000万円未満」の値は公表されておらず、5.5%と2.8%から推定はできない
自社が業種平均と規模別平均のどちらに対してどの位置にいるかは、経営フェーズ診断で確認できます。売れる仕組みそのものを見直す段階であれば、いい商品なのに売れない食品メーカーが、まず見直すべきこともあわせてどうぞ。
