ベトナムの抹茶専門店NAGOCHAに学ぶ、「日本の良いもの」の伝え方

ベトナムの抹茶専門店NAGOCHAに学ぶ、「日本の良いもの」の伝え方の要点を整理した図

「日本製だから品質が良い」「日本の産地にこだわっている」。海外へ商品を紹介するときに使いやすい言葉ですが、それだけでは、相手がなぜ欲しくなるのかまでは伝わりません。

ベトナムの抹茶専門店NAGOCHAは、この先を考えるための興味深いブランドです。公式サイトでは日本の茶産地を紹介し、品種やブレンドごとの商品を示し、店舗で味わう体験と自宅用の抹茶購入をつないでいます。NAGOCHA公式サイト、品種紹介と抹茶の購入案内

そこから読み取れるのは、日本らしさを単なる原産地表示で終わらせず、「知る楽しさ」「選ぶ楽しさ」「日常で楽しむ方法」へ変える可能性です。食品や消費財メーカーが海外で価値を伝えるとき、何を翻訳すべきなのかを考えます。

目次

抹茶を一種類の飲み物として扱わない

ベトナムの抹茶専門店NAGOCHAに学ぶ、「日本の良いもの」の伝え方で押さえる3つの視点

NAGOCHAの公式サイトには、京都のGokou、Asahi、Samidoriなどの品種や、複数のブレンドが掲載されています。また、日本各地の茶産地を紹介し、抹茶の点て方や粉末の購入への入口も用意しています。NAGOCHAの品種・商品案内

Gokouの紹介ページには、色、濃さ、苦味、渋みの項目や、薄茶・濃茶・ラテなどの飲み方が並びます。味を実際に比較した評価ではなく、同社がどう選択肢を見せているかに注目しています。「日本の高級な抹茶」という一つの説明を、好みや飲み方に沿って考えられる情報へ分けているのです。Gokouの公式紹介

この構成では、「抹茶を飲む」という一回の選択の先に、自分の好みを探す余地があります。日本の茶文化に詳しくない人でも、飲んでから違いに関心を持ち、次は別のものを選ぶという楽しみ方が考えられます。

ここで注意したいのは、品種名を増やせば売れるという結論にしないことです。専門性は、買う人の選択を助けるときに価値になります。違いが分からないまま難しい言葉だけ並ぶと、逆に「自分には選べない」と感じさせます。

日本のメーカーが伝えるべきことも、まずは相手が感じる違いです。原料や技術の説明は、その違いを理解するために置く。作り手の専門知識を、買い手が楽しむための案内へ変えることが大切です。

2026年の店舗展開から見える、複数の生活場面

NAGOCHAの公式沿革では、2023年のニャチャンでの出発から、ハノイ、ホーチミン、ホイアンへの展開が紹介されています。2026年にはハノイの商業施設、ホイアン、ホーチミンのSaigon Centreへの出店を記載しています。これは2026年9月28日時点で確認した同社の説明です。NAGOCHAの公式沿革

店舗の増加だけで、ブランド全体の収益性やベトナム全土の抹茶需要を判断することはできません。ただ、同じ専門性を、街や施設の異なる接点へ持ち込んでいる点は、事業を考える材料になります。

観光の途中で出会う一杯と、仕事の合間に飲む一杯では、時間の使い方も、再来店の可能性も変わります。特別な体験を求める人と、気に入った味を日常的に選ぶ人では、入口となる商品も変わるでしょう。

日本企業が海外市場を見るときも、「どの国へ売るか」だけでは粗すぎます。どの街の、どんな場所で、どんな時間に商品と出会う人へ売るか。ここまで考えると、輸出したい商品の容量や形態、提案先の姿が具体的になります。

店で楽しむことと、家で使うことをつなぐ

NAGOCHAは公式サイトで、自宅で抹茶を点てたい人に向けた粉末購入を案内しています。店舗で提供される飲み物と、家庭で使う原料の両方に接点があるわけです。自宅用抹茶の案内

この形を事業の視点で見ると、体験が商品の説明を兼ねる可能性があります。まだ使い方を知らない原料も、味わった経験があれば、自宅で再現したいと思うきっかけになる。反対に、自宅で扱う難しさが分かれば、専門店で飲む体験の価値も理解しやすくなります。

ただし、「店で気に入った人は必ず粉末を買う」とは言えません。自宅で道具を揃えたり、手間をかけたりしたくない人もいます。体験から家庭用商品へのつながりは、売上が自動的に移る仕組みではなく、顧客が選べる楽しみ方を増やすものとして捉えるのが妥当です。

メーカー側も、店舗体験の再現に必要なことを考えられます。商品だけで足りるのか、使い方の案内が必要なのか、別の容量がよいのか。この検討は、単に輸出向けのラベルを作ることとは違う、商品と生活の接点づくりです。

素材を届ける側と、飲む体験をつくる側がつながる

NAGOCHAは公式サイトで、Chakamiを創業時からの主要な抹茶供給元として紹介しています。メニューへの利用に加え、Chakami商品の正規販売も案内しています。公開情報から確認できるのはこの関係で、契約条件や双方の利益まで分かるわけではありません。NAGOCHAによる供給元・商品販売の説明

メーカーにとって面白いのは、素材の供給と、店で飲む体験と、家庭用の販売が別々に切れていないことです。供給側にとっては、原料として使ってもらうことに加えて、商品名や素材の特徴を消費者へ伝える場所にもなり得ます。

この構造を自社へ置き換えるなら、海外に店を持つかどうかより先に、「素材をどんな体験にする相手と組むか」を考えられます。お茶を供給するだけなのか、飲み方の案内まで一緒につくるのか、家で楽しむ商品も用意するのか。関わる範囲によって、必要な仕事と育つ事業が変わります。

完成品輸出以外の関わり方は、Pizza 4P’sの製造と飲食店を結ぶ事業構造とも比較できます。現地の顧客を知る相手と、自社の専門性をどう分担するかという問いです。

翻訳するのは日本語ではなく、「それがうれしい理由」

ベトナムの抹茶専門店NAGOCHAに学ぶ、「日本の良いもの」の伝え方を実務に落とす3つのステップ

海外向けの説明で起こりやすいのは、日本向けの価値観をそのまま持ち出すことです。長い歴史、産地の名前、熟練の技。それらを翻訳しても、相手がその意味を知っているとは限りません。

たとえばお茶なら、産地名だけでなく、どんな飲み方を楽しめるか、どんな好みの人に合いそうかを説明する必要があります。生活用品なら、技術名より、毎日のどんな動作が気持ちよくなるかを見せるほうが伝わる場合があります。

次の三段階で考えると、情報を整理しやすくなります。

  1. 最初の関心をつくる。 味、見た目、使い心地、楽しむ場面など、知識なしでも分かる入口を用意する。
  2. 違いを選べるようにする。 種類ごとの特徴や、初めての人に合う使い方を案内する。
  3. 興味を持った人へ背景を伝える。 産地、原料、つくり手、製法を、実感した価値と結びつける。

日本の文化や品質を薄める必要はありません。説明の順番を、作り手の都合から買い手の体験へ移すのです。

これは、素材を幅広い飲み物へ組み替えるKATINATのメニュー展開と比べると、よりはっきりします。専門性を深めることも、親しみやすい組み合わせをつくることも、海外で価値を伝える方法です。自社の強みをどちらで生かしたいかによって、提案先は変わります。

日本のメーカーは、ブランドを全部持ち込まなくても関われる

海外展開を考えると、自社名を掲げた店舗や完成品の販売を思い浮かべがちです。しかし、現地で体験をつくる事業者へ、原料、技術、商品開発の知見を提供する関わり方もあります。

たとえば食品メーカーが現地のカフェと共同メニューを考える、道具メーカーが使い方の体験を組み込む、素材メーカーが現地の生活に合う製品づくりを支える。これらは検討のための仮説であり、NAGOCHAの募集案件や取引実績を示すものではありません。

自社ブランドで直接売る場合は、商品の世界観を自分たちで守りやすい一方、集客と運営の負担を持ちます。現地企業と組む場合は、相手の接点を活用できますが、表現や商品設計を一緒に調整する必要があります。どちらが優れているかではなく、守りたい価値と自社の体制によって選ぶ話です。

「日本の良いもの」の先に、選ぶ楽しさをつくる

NAGOCHAの取り組みは、日本産という情報を、品種の選択、専門店での体験、自宅での楽しみ方へ展開している点で参考になります。ベトナムで何が売れるかを考える際も、日本の評価をそのまま持ち込むだけでなく、現地でその価値をどう感じてもらうかを見たいところです。

うまみ企画では、ベトナムでの市場理解から、商品の見せ方、現地での試し方、事業者との接点づくりまで支援しています。「自社の商品や技術は、ベトナムでどんな形なら面白いか」という段階からご相談ください。ベトナムでの事業展開を相談する

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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