KATINATから見るベトナムの消費体験。カフェが飲み物の先に売っているもの

KATINATから見るベトナムの消費体験。カフェが飲み物の先に売っているものの要点を整理した図

抹茶ラテだけでなく、抹茶と豆腐を組み合わせた飲み物、ランブータンのミルクティー。KATINATが2026年のテト企画で対象に挙げた商品には、こうした名前が並んでいます。日本で知っている素材が、ベトナムではどんな飲み方になっているのか。カフェのメニューには、メーカーが海外の可能性を考える手がかりがあります。

その例がKATINATです。2026年のテト、ベトナムの旧正月に合わせた同社の公式企画では、対象ドリンクの購入と抽選を組み合わせ、Samsung Galaxyの製品や両ブランドのグッズなどを景品に挙げています。賞品の引き渡し期限は2026年3〜4月で、現在開催中の案内ではなく、終了した施策の事例です。KATINATの2026年テト企画

飲料メーカーだけの話ではありません。生活者が訪れる場所に、別の商品やブランドがどう参加できるか。KATINATの公開施策から、食品・消費財メーカーがベトナムで接点をつくる可能性を考えます。

目次

抹茶を、そのままの飲み方で持ち込むとは限らない

KATINATから見るベトナムの消費体験。カフェが飲み物の先に売っているもので押さえる3つの視点

前述の公式案内にあるのは、Iki Matcha Latte、Iki Matcha Tàu Hủ、Trà Sữa Chôm Chômなどです。Tàu Hủは豆腐、Chôm Chômはランブータンを指します。ここでは終了した企画の対象商品を見ており、現在の全店メニューや売れ筋順位を示すものではありません。

注目したいのは、抹茶という素材に、複数の楽しみ方が用意されていることです。日本の飲み方をそのまま再現する方向もあれば、ラテやデザートに近い飲み物の一部になる方向もある。海外展開では、「日本で評価されている完成形を売るか」「素材の良さを残して、現地の相手と別の完成形をつくるか」という選択が生まれます。

たとえば素材メーカーなら、「当社の原料は上質です」という説明の先に、どんな飲み物に合わせると特徴が出るか、どの使い方なら他の素材に埋もれないかを考えられます。完成品メーカーでも、現地の組み合わせを知ることで、輸出する商品と現地向けに企画する商品の役割を分けやすくなります。

一方、NAGOCHAの抹茶の見せ方は品種や茶産地の選択を前に出しています。同じ抹茶でも、専門性を深く楽しむ入口と、飲み物の組み合わせを楽しむ入口がある。ベトナムを「甘い飲み物が好きな市場」の一言で済ませないほうが、提案の幅は広がります。

テトという季節を、飲み物を買うきっかけにする

KATINATの企画は、旧正月の幸運を願う習慣を背景に、対象となる大きいサイズのドリンク購入者へ抽選券を渡す内容でした。公式案内では、飲み物、抽選の楽しさ、季節のグッズが一つの企画として示されています。公式の企画説明

ここから読み取れるのは、日常の商品に、特定の時期に選ぶ理由を重ねる方法です。コーヒーやお茶を飲むという需要が変わらなくても、テトの気分を楽しむ接点をつくることはできます。

一方、値引きや景品だけを真似しても、同じ意味にはなりません。季節の企画が商品やブランドの雰囲気と離れすぎると、景品だけに興味のある人を集めて終わる可能性があります。メーカーが考えたいのは、「その時期に、自社の商品が生活の中でどう使われるか」です。

食品なら集まりや贈答、日用品なら新しい生活の準備など、季節との接点はあります。ただし、日本の行事の当てはめではなく、現地で何が行われ、何を楽しんでいるかを見る必要があります。テトを日本の正月と同じものとして企画するのは避けたいところです。

カフェは、異なるカテゴリーが出会う場所になる

飲み物とスマートフォンは、商品分類では離れています。しかし、今回の企画では同じ顧客接点の中に置かれています。カフェに来る人は飲料の消費者であると同時に、通信機器や身の回りの物を選ぶ生活者でもあるためです。

この点は、海外進出を考えるメーカーにとって重要です。自社の商品を置く場所は、同じ商品カテゴリーの棚だけとは限りません。人が過ごす場所、贈り物を選ぶ場面、趣味を楽しむ場面から、提案先を考えることもできます。

たとえば、菓子メーカーならコーヒーと一緒に楽しむ組み合わせ、生活雑貨メーカーなら持ち歩く時間や家での休憩に関わる企画が考えられます。これらは可能性を考えるための仮説です。KATINATが日本企業の提案を募っている、あるいは当社が提携を仲介できると示すものではありません。

大切なのは、有名な相手と組むことではなく、自社だけではつくりにくい利用場面を、相手と一緒につくれるかどうかです。

日本国内の食品・道具の事例に置き換えると、メーカーの異業種コラボの考え方に通じます。相手の知名度より、一緒になることで顧客に何が増えるかが出発点です。

店内だけでなく、持ち帰りや配達にも接点を広げる

KATINATは2024年4月、会員・注文用アプリの開始を公式に発表しています。その案内には、事前注文して受け取る方法、配達、店内利用が記されています。これは開始時点の発表内容であり、現行の細かな特典や条件を案内するものではありません。KATINATのアプリ開始告知

事業の観点では、一つの商品を複数の過ごし方に合わせて届けている点が参考になります。店内でゆっくり飲む、移動の途中で受け取る、別の場所で飲む。同じブランドへの関心でも、利用の都合は違います。

日本のメーカーへそのまま「アプリをつくりましょう」と勧める話ではありません。まず問いたいのは、気に入った人が次に欲しくなったとき、どこで買えるのかということです。

ポップアップで知った商品を後から探せない。旅行中に買った物の名前が分からない。店頭で見た品を調べても販売先が見つからない。こうした途切れがあるなら、新しい集客より購入経路をつなぐほうが先です。

自社商品を「体験のどの部分」に置くか

KATINATから見るベトナムの消費体験。カフェが飲み物の先に売っているものを実務に落とす3つのステップ

ベトナムで現地企業と組むなら、企画書に商品写真を並べる前に、自社が担う役割を決めたいところです。役割は大きく三つに分けて考えられます。

体験そのものを良くする商品。 飲み物と合わせる菓子、メニューに使う原料、使い心地を支える道具などです。商品の相性や品質が提案の中心になります。

その場の記憶を持ち帰る商品。 グッズやギフトなどです。単に会社名を印刷するだけでなく、その場所や企画を好きになった人が持ち帰りたくなる理由が必要です。

次の利用へつなぐ商品。 自宅用の商品、別の場面で使えるセット、次の体験を案内する内容などです。一度の接点を、その後の買い物につなげる役割があります。

自社が得意なのは、どの役割でしょうか。食品でも雑貨でも、この位置が明確になると、相手へ話す内容が「商品を仕入れてください」から「この体験を一緒につくれます」に変わります。

人気ブランドを見れば、需要が分かったことにはならない

KATINATの企画は、現地で実際に行われたブランド活動として参考になります。ただし、公式の告知からは、売上への効果や利益、参加者の継続購入までは分かりません。ベトナムの消費者全体が同じ価値観だと判断することもできません。

メーカーが次に確認したいのは、企画の華やかさではなく、自社の商売との接点です。相手の顧客は自社商品をどんな場面で使うか。その人が現在選んでいるものは何か。一度の限定企画で終わらず、継続的に提供できる形はあるか。

グッズの制作や共同メニューには、開発、在庫、接客、配送などの負担もあります。売上を分ける話だけでなく、誰が何を担うかが決まらなければ、魅力的な企画でも続きません。小さな企画で相性を確認してから、広げる方法が考えられます。

ベトナムの市場調査を、売り場の外へ広げる

価格や競合商品を調べるだけでなく、ブランドがどんな季節を楽しみ、どんな相手と組み、顧客とどう会い続けているかを見る。KATINATの事例は、そうした市場の見方を教えてくれます。

ベトナムにはどんな商品が足りないか、だけで考える必要はありません。すでにある魅力的な体験に、自社の製品や技術が何を加えられるか。そこにもメーカーの出番があります。

うまみ企画では、現地ブランドや売り場の理解をもとに、日本の食品・消費財メーカーが試せる商品提案や接点づくりを考えます。ベトナムでのマーケティング・事業展開を相談する

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この記事を書いた人

小島 怜のアバター 小島 怜 うまみ企画 CEO

株式会社Agriture CEO/乾燥野菜やドライフルーツを中心とした受託加工・OEM事業。京都府内の農家と連携し、規格外野菜の活用や6次産業化支援を通じて、「持続可能な食の流通」を追求している。製造現場での豊富な実体験を活かし、商品企画から試作、小ロット対応、パッケージ設計、販路開拓支援まで、OEMを検討するすべての事業者に伴走するサポートを提供。

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