ベトナムで誰に売る?現地の生活者と旅行者では、海外展開の入口が変わる

「ベトナムで販売したい」と考えると、まずベトナム人の好みを調べようとするかもしれません。しかし、その前に分けて考えたいことがあります。買ってほしい相手は、そこで暮らす人なのか、旅行で訪れる人なのか。それとも、商品を仕入れて使う現地の企業なのか。
同じ国、同じ街でも、買う場面が変わると、必要な商品、売り場、情報の届け方は変わります。海外展開の入口を「国」で止めず、「買い手と使う場面」まで具体化すると、自社に合う可能性が見えやすくなります。
この記事では、うまみ企画が運営する旅行情報サイトvietnam-giftの読者像も材料に、三つの市場の違いを考えます。旅行者向けのデータを、ベトナムの生活者全体の需要と取り違えないことが前提です。
生活者の買い物と、旅先の買い物は違う

生活者は、継続して利用する場所、価格、使い勝手の中で商品を選びます。旅行者は、限られた滞在時間の中で、その土地でしか得にくい経験や、持ち帰る物を選びます。
もちろん、全員が同じ行動をするわけではありません。ただ、事業の仮説をつくるときには、この違いを出発点にする意味があります。
表は横にスクロールできます。
| 買い手 | 代表的な購入場面 | 商品・提案で考えること | 情報を届ける接点 |
|---|---|---|---|
| 現地で暮らす人 | 日常使い、家族のため、贈り物 | 続けて買う理由、手に入れやすさ、生活との相性 | 現地の売り場、メディア、SNS、利用者の紹介 |
| 旅行者 | 旅先の体験、自分用の記念、土産 | 持ち帰りやすさ、土地とのつながり、短時間で選べる説明 | 渡航前の情報、ホテル、観光動線、現地店舗 |
| 現地の事業者 | メニュー、客室、物販、商品開発 | 顧客体験との相性、供給と運用、事業上の利点 | 商談、業界の接点、用途提案、事例 |
この三者を「海外のお客さま」と一括りにすると、商品の説明がぼやけます。まず誰を主要な買い手にするかを選ぶことが必要です。
日本語の旅行情報と、現地生活者向けの情報は分けて考える
vietnam-giftは、日本人向けのベトナム旅行情報サイトです。公開している媒体資料では、日本からのアクセスがユーザー数の72%を占めています。これは媒体資料に記載したGA4の90日間の集計値であり、ベトナムを訪れる旅行者全体の比率ではありません。vietnam-giftの媒体資料
同資料では、土産、カフェ、限定グッズなどが読まれるテーマとして挙げられています。ユーザーの所在地だけで、渡航予定や購入意向まで分かるわけではありません。ただ、日本語で旅先の店や商品を紹介し、日本にいる読者にも届ける接点として考えられます。
旅行者向けの商品や体験なら、現地で見つけてもらうだけが入口ではありません。渡航前に興味を持ち、滞在予定の中に入れてもらう方法があります。その場合、商品説明だけでなく、どこで買えるか、どの旅程に組み込めるか、持ち帰りやすいかといった情報が役立ちます。
ただし、これを見て「日本語の記事を出せば、ベトナムの人にも売れる」とは言えません。現地生活者へ届けるなら、その人たちが利用する情報と売り場を別に設計する必要があります。
日本の商品を、日本人旅行者に売る意味はあるか
ここは慎重に考えたい点です。日本で買える物を、ベトナムへ来た日本人がわざわざ買う理由は、必ずしも強くありません。旅行者市場を、簡単な海外展開の近道として勧めることはできません。
可能性があるとすれば、現地の素材やブランドと組み合わせた限定企画、旅行中に使う体験、ホテルや飲食店が提供するサービスなど、その場所で出会う意味がある場合です。
たとえば、日本の製造技術とベトナムの素材を組み合わせた商品を、現地ブランドとの共同企画として考える。日本の道具を使う料理体験を、旅先の食文化と結びつける。これは事業検討のための仮説であり、実施済みの事例ではありません。
逆に、家庭での継続利用が価値の中心で、旅行者が持ち帰りにくく、現地ならではの意味も薄いなら、旅行者向けに寄せないほうがよいでしょう。現地生活者や法人を主要な買い手にする選択肢があります。
旅行者でも、「自分用」と「人に渡す物」では選び方が変わる
旅行者向けを選んだとしても、そこで検討は終わりません。自分の記念に買う物と、職場や家族へ渡す物では、必要な形が異なります。
自分用なら、旅行中に気に入った味や、その土地で出会った作り手の背景が理由になるかもしれません。複数人へ配るなら、分けやすさや持ち運び、説明の分かりやすさが重要になります。贈る相手が決まっているなら、その人の好みに合うと伝えられることが大切です。
同じ食品を扱う場合でも、内容量、組み合わせ、説明、購入場所の設計は変わります。「旅行者向けのおしゃれなパッケージを作る」だけで終わらせず、誰が誰のために選ぶのかまで描く必要があります。
また、旅先での好意的な反応は、日常での継続需要を証明するものではありません。イベントや旅行では買っても、生活の中では別のものを選ぶことがあります。この違いは、販売後の評価でも分けて扱うべきです。
旅の記憶と商品の背景を結びつける例としては、Marouのチョコレートとギフトの展開が参考になります。ただし、観光土産と現地の法人ギフトでも、贈る人の目的は分けて考えます。
買う人と使う人が違う、法人という入口

食品・日用品メーカーには、ホテル、飲食店、スパ、小売店などの事業者へ提案する道もあります。この場合、直接の買い手は企業で、その先で商品を使うのが生活者や旅行者です。
たとえば、客室に置く食品なら、宿泊客が喜ぶことに加えて、ホテルが補充・保管しやすいことも必要になります。店の物販なら、商品に魅力があるだけでなく、その店の顧客と価格帯に合うかも問われます。
提案では、メーカーのこだわりを話すだけでなく、相手の顧客に何を届けるかを一緒に考えたいところです。相手にとっては「日本の製品を仕入れる」ことではなく、「自社の体験や売り場を良くする」ことが目的だからです。
ただし、法人向けなら簡単という意味ではありません。継続供給、相手の運用、採算の検討は必要です。輸入や販売に必要な条件も、商品と商流が具体化した段階で確認します。ここでは規制を主題にするのではなく、どの顧客に価値を届ける事業なのかを先に定めます。
同じお茶でも、最初に試す場所が変わる
日本のお茶メーカーがベトナムで事業を考える、という仮説で比べてみます。現地家庭向けなら、普段の飲み物の中でいつ選ばれるかが問題です。味だけでなく、家で淹れる手間や再購入できる場所まで含めて考えます。
ホテル向けなら、客室やラウンジでどんな滞在体験をつくるかが先にあります。客が喜ぶかと、現場で無理なく提供できるかを一緒に確かめる必要があります。メーカーにとっての相手は宿泊客だけではなく、導入を決める側と毎日提供する側でもあります。
日本人旅行者へのギフトなら、「ベトナム旅行で日本のお茶を買う理由は何か」が最初の壁です。現地の菓子との共同セットなど、その土地との関係をつくれないなら、無理に土産市場へ寄せる必要はありません。
この三つを一度に狙うと、家庭用・業務用・贈答用の提案を同時に準備することになります。最初は、自社の強みが伝わり、顧客の反応を確かめられる一つの場面に絞る。海外展開を小さく始めるとは、単に出荷量を減らすのではなく、最初に答えを出したい問いを狭めることです。
自社名で売るか、現地の事業者へ素材を供給するかという選択は、Pizza 4P’sから考えるメーカーの海外事業で掘り下げています。
最初の市場を決めるための三つの問い
一つ目は、いまの商品の良さが、どの買い手に最も説明しやすいかです。日常の便利さなら生活者、旅の記憶なら旅行者、相手の商品やサービスを良くする技術なら法人、というように仮説を置けます。
二つ目は、その人が買える接点をつくれるかです。関心がありそうでも、販売場所や協業相手との接点がなければ、試すまでに時間がかかります。自社や支援先が持つ接点も判断材料です。
三つ目は、得られた反応を次の販売につなげられるかです。一回の売上で終えるのか、継続利用へ広げるのか、別の売り先への提案に使うのか。最初に学びたいことを決めると、試し方が変わります。
うまみ企画では、ベトナムの現地情報と自社メディアの運営を生かし、商品に合う顧客と接点を整理します。旅行者向けが合わない商品まで、日本語メディアへ誘導することはしません。生活者、旅行者、現地企業のどこから始めるかを、一緒に考えます。ベトナムでの売り先・事業展開を相談する
